花の終わりはいつですか?

江上蒼羽

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side:透也―7

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捲し立てるように言った台詞を聞いて、水川さんは困ったような顔をした。

それから「………そうなんですね…」と、悲しげに呟いた。


「悪い事は言わないから、早く逃げた方がいいと思いますよ。この世の中、働き口なんていくらでもあるんだから」

「…………」


水川さんは少し俯き、考え込む素振りを見せてからすぐに顔を上げる。


「お気遣いありがとうございます」


微笑みながら礼を述べた彼女は、「だけど…」と続ける。


「折角採用して貰えたので、常務の恩に報いる為に頑張るつもりです」


彼女の優等生な返答にちょっとした不快感を覚えた。

この会社じゃ、身内以外の人間は良いようにこき使われるだけだ。

それを彼女はこれから知っていく事になる。


「それに、皆さんの役に立っているかは分かりませんが、働けていい気晴らしになってます」

「………気晴らしねぇ…」

「はい…………家に居ても悶々とするだけだから…」


堂々と言っていた割りに、最後の部分はやけに声が小さかった。


「ん、まぁ………頑張って下さい」


心にもない労いの言葉を描け、事務所を出た。




何の気晴らしかは知らないけど、軽い気持ちで彼女は働いてる訳だ。

一家を背負う男の責任の重さや覚悟なんてもの、きっと彼女とは無縁なのだろう。

死にもの狂いで働いてるこっちにしては、気晴らしに働いてるなんて腹が立つフレーズだ。



「……ま、主婦はお気楽でいいわな」


これが正直な感想。



トラックに乗り込み、エンジンをかけた。

憂さを晴らすように数回アクセルを踏んで空ぶかしさせてから、車を発進させる。

専務達の現場までは片道10分ちょい。


「アットホームな職場って………笑えるわ」


独り言を言いながらも、そんな会社に飼われている状態の自分を情けなく思えて、気分が落ち込む。

周りに何もない、田んぼだらけの農道をアクセスほぼ全開で突っ切った。

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