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side:妙香―9
しおりを挟む急な予定が入ってしまった。
といっても、当日ではなく前日に知らされたのがまだ救い。
子供達の預け先の確保、夫への根回し、自分自身の身支度……全てをクリアするにはギリギリ猶予はあった。
「…………親睦会?何でそんなのに参加するの?」
新聞片手にコーヒーを飲みながら、面白くなさそうに言う辺り、夫としては腑に落ちないのだと思う。
「常務がどうしてもと仰って……ごめんなさい、子供達は実家の母にお願いしてあるし、夜ご飯の支度はして行くから、帰ったら温めて食べて」
夫は「はぁ~…」とわざとらしい溜め息を吐いた。
「いいけど別に。けど、女が夜に家を空けるのはちょっと頂けないよなぁ…」
「…………乾杯だけしたらすぐに帰ってくるから」
夫の嫌味を聞き流しながら、シンクに溜まった食器を片付けた。
仕事が終わり、一旦帰宅して家事をこなす。
夫に嫌味を言う隙を与えないよう、いつも以上に念入りに掃除をし、彼の分の食事の用意もした。
夫の口から「俺の飯は気にしないでいいよ」という言葉が出て来る日は多分一生来ないと思う。
それから自分の身支度を整えた。
「今日のママ、いつもよりキレイだね」
「いいにおいするぅ~」
「そう?ふふ、ありがと」
子供達からお褒めの言葉を頂戴し、気分が上がる。
親睦会という会を楽しみにしていた訳ではないけど、久し振りの夜の外出が嬉しくて、知らず知らずの内に鼻歌を歌ってしまっている。
「それじゃあ……お母さん、子供達の事をよろしくお願いします。何かあったら携帯の方に連絡して」
「はいはい、たまには羽を伸ばして来なさい」
孫達と一緒に過ごせるのが嬉しいのか、満面の笑みを披露する母に子供達を託して、飲み会の会場へと向かった。
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