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side:妙香―16
しおりを挟む仕事を終えて何気なく携帯を手に取ると、知世から画像付きでメッセージが入っていた。
知世
【予定日より少し早いですが、無事生まれました】
生まれたばかりの可愛らしい新生児の画像に頬が緩む。
「生まれたんだ…」
すぐさま【おめでとう、大仕事お疲れ様でした】と送信し、スタンプもつけた。
我が家の生意気盛りの子供達も数年前はこうだったな……なんて思いながら帰路についた。
子供達の帰宅後は嵐が来たかのように賑やかになる。
「これボクのだぞ!!」
「わぁぁぁん!!おにいちゃんがたたいたー!!」
部屋はみるみる内に散らかされ、兄妹喧嘩が勃発。
「こらこらやめなさい二人共」
家事の片手間に仲裁に入る。
そうすると中々家事が進まない。
怒って癇癪を起こす息子を宥め、泣き喚く娘をあやす。
毎日繰り返えされる苦行。
我が子は天使のように可愛いけれど、ちょっとしたきっかけで悪魔へと豹変するから恐ろしい。
「奏太は宿題済ませちゃいなさい。美空はお兄ちゃんの邪魔しないの」
「ママおやつーおやつ食べたーい」
「お兄ちゃんの宿題が終わったらね。美空が邪魔するとお兄ちゃん終わらないから静かに絵本見るかお絵描きしててくれる?」
自分で望んで母親になったくせに、時々子供達を疎ましく感じる時がある。
子育てがこんなに大変だなんて思いもしなかった。
子供の成長や発達に悩んで、人格形成と情操教育に気を使うし責任が伴う。
大変なのは一時だけで過ぎてしまえば寂しいものだと母親からは教えられたけれど、本当に大変な現在を乗り越えられる気がしない。
「ただい―――……まぁた部屋散らかってる。空き巣に入られたみたいにすごいな」
「………おかえりなさい」
帰宅早々嫌味を言う旦那がもっと協力的だったら良いのに。
「今日は早いんだね」
「あぁ、午後から外回りだったから直帰してきた」
「そっか……お疲れ様」
旦那は脱ぎ捨てた上着と靴下を床に放った。
「というか、この部屋散らかり過ぎじゃない?疲れて帰ってきてこの惨状見たら更に疲れる」
だったら自分が片付けたら?という言葉を飲み込んで「ごめんなさい、すぐに片付ける」と旦那の放った上着と靴下を拾う。
「汗かいたなー風呂入りたいから用意して」
「分かった。その前にお弁当箱出してくれる?」
旦那は足元にある鞄を顎で指す。
「鞄の中に入ってる」
「…………そう」
この人にとって私は一体何なんだろう……といつも思う。
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