花の終わりはいつですか?

江上蒼羽

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side:妙香―19

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知世の目の奥が光ったような気がした。


「どういう事?」


まるで取り調べを受けているかのような気分だ。


「浅倉さんて方がいて……私よりも歳下かな。まだ小さい子供がいる人なんだけど、ウチと同じ状況で……」

「ウチと同じって?」

「あの、その……つまり……」


どう言葉にしたら良いか暫し悩んでからモゴモゴと口にする。


「奥さん側からの………セックスレスで……お互いにしんどいですねって話してて……」


私が全てを言う前に「まさか!」と知世が口を挟む。


「しちゃったの?!」


鼻息荒く詰め寄ってくる知世に苦笑しながら「いやまさか」と首を振る。


「それだと完全な浮気になっちゃうし。心のって言ったじゃん」

「だ、だよね」


知世がホッとしたように笑う。


「その後ちょっとおふざけで手を握ってみたんだけど、年甲斐もなくドキドキしちゃって」

「うんうん」

「それからちょっと彼の事を意識してしまってる……」


言葉尻に「馬鹿みたいだよね」と付け加えて笑ってみせると、知世は意外にも「いいんじゃない?」と言う。


「いくつになってもトキメキは大切だよ。ドキドキと胸が高鳴る感じ……久しく感じてないなぁ」


恋い焦がれるように、どこか遠くを見ながら知世が言った後、すぐに私の方へと向き直る。


「た・だ・し!どっぷりとのめり込むのはダメだよ。心の浮気に留めておいてよ?」

「分かってるって。彼とどうにかなりたいとか思ってないから」

「絶対一線は越えちゃダメだからね。一線は!」


一線の部分を強調する彼女の真剣過ぎる表情にたじろぎつつ「ないから!」と否定する。


「こんなオバサンと一線越えたくないでしょ。もっと若い子に行くよ浅倉さんは。彼にも選ぶ権利あるだろうし」

「100%ないとは言い切れないでしょ?」 

「断言出来る!100%ないよ!第一お互い家庭があるもの」


浅倉さんは枯渇していた私の心を潤してくれた。

求めていた温もりを感じさせてくれた。

それがほんの一時でも私は満たされた気持ちになって、女としてまだ花咲いていたいと思えた。

だからといって彼とどうこうなりたい等とは思っていない。

ただトキメキを感じさせて貰いたいだけ。  

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