花の終わりはいつですか?

江上蒼羽

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side:透也―16

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「ふぎゃあぁぁぁ!ふぎゃぁぁ!」


けたたましい息子の泣き声で目が覚めた。

枕元に投げたままの携帯を手探りで見付けて時刻を確認する。


「………2時半…」


ここ最近は夜泣きなんてしてなかったから、夜中に起こされるのは久し振り。

眠さと怠さで重たい体を何とか起こして隣室へと向かう。

そっとドアを開けると、友梨が暗がりの中で大和を抱きながら体を揺らしていた。


「久々だね。代わろうか?」


小声で友梨に話し掛けると、彼女は「大丈夫」とだけ言う。


「でも眠いでしょ?少しだけでも……」


今の時代、子育ては夫婦二人でするものだと認知されている。

だから微力ながらも俺も協力したいし、息子にも積極的に関わりたいのに


「入ってこないで!」


いつの間にか、寝室を分けるだけでなく、寝室への立ち入りをも拒まれるようになった。


「あ………ごめん、つい……」

 
1歩だけ出した状態の足をすぐさま引っ込めた。

友梨の大声に驚いたのか、大和が更に大きな声で泣く。


「………私なら大丈夫だから」


こちらを一切見ずに言う友梨の背中から、早く立ち去って欲しいとの思いが滲み出ている。

それに悲しくなりながらも「分かった」と答えた。


「もし辛かったらいつでも代わるから」

 
俺の言葉に友梨は何も反応してくれなかった。   






「それはきっとガルガル期というやつじゃないですか?」


背中合わせで一緒に作業をしていた相手が、落ち着いた口調でそう言った。


「ガルガル期……?」


疑問系で返したものの、その単語には覚えがあった。

確か、育児書か何かで見た事がある。


「ホルモンの関係だか何だかで常にイライラピリピリしてる時期があるんですよ。私も経験者です」


笑いを含ませながら「懐かしい」と呟く彼女は、作業している手を止めずに続ける。


「一時的に主人が生理的に受け付けなくなりましたよ。臭いとか声とか。ムカムカムカ~って何かが込み上げてくるというか」

「へぇ……」

「あ、でも主人よりも義母に対しての方が酷かったかな。子供に触られたくなくて、でも角が立つから言えなくて……当時は辛かったな…」


笑いを含ませながら明るく言う彼女の背中は、入社当時よりも華奢になったような気がする。

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