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side:透也―18
しおりを挟むそんなたわいもない話から、さっきの流れに至った。
「それで、そのガルガル期というやつはいつ頃収まるんすか?」
水川さんは少し間を置いてから答える。
「個人差がありますから何とも……私は子供が生後半年過ぎた頃に落ち着きました。育児のリズムを掴めたてきたからなのかもしれませんが」
「個人差か………まぁ、そうですよね」
個人差と言われたら、もう何も言えない。
水川さんが半年で落ち着いたものが友梨も同じように落ち着く訳がない。
それ以前に、友梨は産後から半年はとっくに過ぎている。
いつまで続くか分からない生殺しのこの状態は、精神をどんどんすり減らしていっている。
思春期男子みたいに、ただ“したい”だけじゃない。
誰でもいい訳じゃなくて、友梨だからしたいのに、どうして分かってくれないのか。
「………まぁ、難しい問題ですよね。相手があってのものだから………時間が解決してくれるってものでもないでしょうし」
「……………ですよね」
徐々にコンクリの床が見えてきた。
分別されずにただ荷物が投げ置きされていた倉庫が多少マシになってきた。
二人がかりでここまでやれれば上等だろう。
水川さんが「疲れましたね」と力なく笑って言った。
彼女の首筋には汗の粒が光っている。
喉がゴクッと音を立てた。
汗で濡れた肌が妙に艶かしい。
「あ、あのっ、浅倉さん?!」
戸惑ったような声が聞こえる。
「何を……?」
気が付けば、衝動的に水川さんを抱き締めていた。
「すみません………つい…」
とか言いつつ、柔らかくて温かい感触が心地好くて離れる気など到底なかった。
「こんな所、万一誰かに見られたらあらぬ誤解を………いやいや、その前に私汗かいてて……」
慌てた様子の水川さんだけど、言葉とは裏腹に抵抗する素振りを見せない。
「ベタベタするし、匂いだって………」
「………俺も汗かいてます」
彼女の言う通り、シャンプーなのか香水なのか分からない匂いと混ざって汗の匂いがする。
まともな状態なら不快に感じる他人の汗の匂いが興奮材料となっているあたり、今は頭のネジが何本もふっ飛んでいるんだろう。
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