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本編
【第10話】本当の望み⑥
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「まあまあ、芙弓がそう言うなら止めておこう。さて、そろそろ本題といこうかな」
「本題?——ぎゃ!!」
言葉の意味を考え、きょとん顔で立っていると、急に腕を引っ張られて私の身体がベットの上へと倒れこんでしまった。ふわふわの羽毛布団がお風呂でふやけた肌にとても気持ちいいのだが、今はそれどころじゃない。
「急に引っ張るなぁ!」
上半身を起こし、ロイさんに向かい文句を口にする。だが私は、その口を即座に閉じて黙り、への字口で眉間にシワをよせた。目の前に居るロイさんの表情が暗い室内の照明効果もあってか、あまりにも淫靡過ぎたからだ。
白いワイシャツのボタンはほとんど止めておらず、はだけて見える胸元はとても筋肉質で、細身の雰囲気からは想像出来ぬラインに嫌でもゾクッとしてしまう。
彼の父親がアメリカ人なせいか肌は透き通るように白く、母親譲りのキメの細かい肌質には、軽い嫉妬心まで感じた。エーゲ海の様な青い瞳でじっとこちらを見詰めながら、言葉を失っている私を徐々に自分の方へ引っ張っていく。
少しづつ近くなっていく、二人の距離。
この部屋のメイン照明がついていたらきっと私の顔は林檎程に赤くなっていて、ロイさんが指を差して笑うレベルになっているだろう。
「え…… あの…… 」
このままいくと、ロイさんの胸の中に閉じ込められてしまう。そう思った私は、彼から視線を慌てて逸らし、短い声を発した。
「何?」
ロイさんの低い声が、耳の近くで響く。生では聴き慣れない声に身体が震えた。
「本題って?」
この雰囲気のせいか、小さな声しか出てこない。ロイさんが二十年ぶりにこんな場所にまでわざわざ私に会いに来たのは人形師である私に彼の妹・雪乃の人形を造らせる為のはずだ。その為に彼はここに居ると、私の傍を離れないと言っていたのはたった数時間前の事なので、人形造り以外の事には多少疎い私でも流石にそれは理解しているし忘れてもいない。
だがそれと、今のこの状況がどういう繋がりがあってこうなっているってんだ!?
この状況になって改めて“本題”という言葉を使うって事は、本当の目的は違うって事なの?
「芙弓は、何だと思う?」
そう言うと同時に彼はグイッと強く私の肩を抱き、完全にロイさんの胸の中に自分の身体が収まってしまった。
「うぎゃあああああっ!」
恥ずかしさに震えながら無意識にあがる、品のない悲鳴。
それなのに彼は私の事を笑い飛ばす事無く、濡れる髪をそっと撫でてきた。
「ふふ…… 可愛いね。あんまり抵抗していないのは、湯上りだからかな?」
ロイさんの甘く囁く声が脳裏に響く。
「ひがっ!」
違うと言おうとして舌を咬んだ。それも、思いっ切り。
「ち、違う!私はただ本題ってやつを知りたいだけで——」
「うん、分かってるよ。大丈夫」
ロイさんの優しい声が耳の奥で甘く溶ける。私の濡れる髪を少し掴み、彼が軽く口付けてきた。
「僕はね——」
私の体を急に胸から引き剥がし、彼が私をベットへドンッと勢いよく放り投げたかと思うと、私の太股の上に跨り、両腕を大きな白い手で押さえてきた。
額をそっと重ね、二人間に落ちる沈黙が、私の心音を加速させる。
こ、この大人な雰囲気はいったい何!?
気恥ずかしさに叫びたくても叫べず、抵抗したくても身体が動かない。そんな私の姿を見て、フッとロイさんが微笑む。優しい笑顔に頬が緩みそうになった。
だが数十秒後に彼の口から放たれたのは、とても冷たい言葉だった。
「芙弓に嫌われに来たんだよ。それも、心底…… ね」
「なにを、言って…… 」
状況と不釣合いの言葉に、私は頭が真っ白になってしまった。
「本題?——ぎゃ!!」
言葉の意味を考え、きょとん顔で立っていると、急に腕を引っ張られて私の身体がベットの上へと倒れこんでしまった。ふわふわの羽毛布団がお風呂でふやけた肌にとても気持ちいいのだが、今はそれどころじゃない。
「急に引っ張るなぁ!」
上半身を起こし、ロイさんに向かい文句を口にする。だが私は、その口を即座に閉じて黙り、への字口で眉間にシワをよせた。目の前に居るロイさんの表情が暗い室内の照明効果もあってか、あまりにも淫靡過ぎたからだ。
白いワイシャツのボタンはほとんど止めておらず、はだけて見える胸元はとても筋肉質で、細身の雰囲気からは想像出来ぬラインに嫌でもゾクッとしてしまう。
彼の父親がアメリカ人なせいか肌は透き通るように白く、母親譲りのキメの細かい肌質には、軽い嫉妬心まで感じた。エーゲ海の様な青い瞳でじっとこちらを見詰めながら、言葉を失っている私を徐々に自分の方へ引っ張っていく。
少しづつ近くなっていく、二人の距離。
この部屋のメイン照明がついていたらきっと私の顔は林檎程に赤くなっていて、ロイさんが指を差して笑うレベルになっているだろう。
「え…… あの…… 」
このままいくと、ロイさんの胸の中に閉じ込められてしまう。そう思った私は、彼から視線を慌てて逸らし、短い声を発した。
「何?」
ロイさんの低い声が、耳の近くで響く。生では聴き慣れない声に身体が震えた。
「本題って?」
この雰囲気のせいか、小さな声しか出てこない。ロイさんが二十年ぶりにこんな場所にまでわざわざ私に会いに来たのは人形師である私に彼の妹・雪乃の人形を造らせる為のはずだ。その為に彼はここに居ると、私の傍を離れないと言っていたのはたった数時間前の事なので、人形造り以外の事には多少疎い私でも流石にそれは理解しているし忘れてもいない。
だがそれと、今のこの状況がどういう繋がりがあってこうなっているってんだ!?
この状況になって改めて“本題”という言葉を使うって事は、本当の目的は違うって事なの?
「芙弓は、何だと思う?」
そう言うと同時に彼はグイッと強く私の肩を抱き、完全にロイさんの胸の中に自分の身体が収まってしまった。
「うぎゃあああああっ!」
恥ずかしさに震えながら無意識にあがる、品のない悲鳴。
それなのに彼は私の事を笑い飛ばす事無く、濡れる髪をそっと撫でてきた。
「ふふ…… 可愛いね。あんまり抵抗していないのは、湯上りだからかな?」
ロイさんの甘く囁く声が脳裏に響く。
「ひがっ!」
違うと言おうとして舌を咬んだ。それも、思いっ切り。
「ち、違う!私はただ本題ってやつを知りたいだけで——」
「うん、分かってるよ。大丈夫」
ロイさんの優しい声が耳の奥で甘く溶ける。私の濡れる髪を少し掴み、彼が軽く口付けてきた。
「僕はね——」
私の体を急に胸から引き剥がし、彼が私をベットへドンッと勢いよく放り投げたかと思うと、私の太股の上に跨り、両腕を大きな白い手で押さえてきた。
額をそっと重ね、二人間に落ちる沈黙が、私の心音を加速させる。
こ、この大人な雰囲気はいったい何!?
気恥ずかしさに叫びたくても叫べず、抵抗したくても身体が動かない。そんな私の姿を見て、フッとロイさんが微笑む。優しい笑顔に頬が緩みそうになった。
だが数十秒後に彼の口から放たれたのは、とても冷たい言葉だった。
「芙弓に嫌われに来たんだよ。それも、心底…… ね」
「なにを、言って…… 」
状況と不釣合いの言葉に、私は頭が真っ白になってしまった。
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