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【オトコの娘が私を好きだと言う】
キミの香りに包まれて
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とある日曜日。
お互いが休みだった為、今日は青鬼の部屋に集まり、二人でお家デートを楽しんでいる。
いや——正確に言うならば、楽しんでいるのは手土産に買ってきてもらったケーキを頬張っている青鬼だけで、椿原の方はといえば、彼女のベットうつ伏せで転がり、不貞腐れていた。
「うぅ…… 海の見える丘とか、綺麗なホテルの最上階のバーとか、もういっそ公園とかでもいいから、ちゃんとまともなプロポーズしたかったぁ…… 」
前回のカフェでの一件からもう一ヶ月が経過している。——が、その間ずっと同じ内容で椿原は凹み続けており、寛容性の高い方である青鬼も、流石にちょっと『ウザイとはこういう事か』と思い始めていた。
だが、気持ちはわかる。
自分もアレがプロポーズであると思いたくないくらいグダグダしたものだったし、一生に一度だといいなという大イベントが、なんとなくそう汲み取らざるおえないようなものでいいはずが無い。
何より将来、もし子どもが生まれた時に、いつか『どんなプロポーズをされたの?』何て訊かれたらどう答えていいかわからないレベルで、アレは確かに無いよな、と青鬼も正直思っている。でもだからって、一ヶ月間落ちこまれ続けては、どうしたって迷惑でしかなかった。
「そんな事よりだな、今日は別件での報告があるんだが聞く気はあるか?」
『そんな事』という単語が見事に椿原へ突き刺さり、急所へ攻撃がクリティカルヒットした時並みにショックを受けた。
「ボクの悩みは一刀両断⁉︎」
椿原が涙目になり、伏せっていた顔をあげて少し拗ねた表情をする。そんな彼の様子に気が付いた青鬼は口元に軽く笑みを作りながら頭をぽんぽんと優しく撫でると、すぐにその手も離して「それでな」と話の続きをし始めた。
(何かテキトーに誤魔化された気がするのは、ボクの被害妄想⁈)
それでも、椿原がちょっと嬉しい気持ちになってしまった。好きな人に触れてもらえたのだから無理もないだろう。
「前に即売会とやらで、私の作った香水を売るのはどうだろうかと提案してくれた事があっただろう?」
「あぁ、うん。あったね」
カップルの定番である映画館デート(観たのはアニメ)の後に、同一作品の関連イベントに参加というオタク感丸出しのデートコースを提案してしまった事を思い出し、椿原が少し悔いた顔をしながら、青鬼から視線を逸らす。あの時はもう『好きなゲームの映画化とか、もう行くしかないでしょぉ』で頭がいっぱいだったうえに、青鬼と思い出を共有出来たら幸せかもと誘ったが——一般人に押し付けるデートコースじゃ無かったよね…… と、こちらも少し後悔していた。
そんな彼に気付かぬまま、青鬼が鞄の中から書類の束を出し、それらをベットで寝転ぶ椿原に渡す。
(何だろう?分厚いし、何かの企画書っぽいけど)
「あの日一緒に観た映画の原作になったゲームとコラボ企画をやってみたいと実家に話したらな、採用されたんだ。アニメやゲームのキャラクター商品で香水の販売は既にあったが、ウチとの企画だったからな、相手方からも即決をもらえたらしいぞ」
椿原が驚き、ベットの上で「…… え」とこぼしながら起き上がって、正座をして座った。
「人気投票などもやって、上位に入った者の香水を作る。テーマは『キミの香りに包まれたい』になったそうだ」
そう話しながら、青鬼が椿原の持ったままになっている企画書のページを捲り、進行状況の詳細を説明し出す。
なのに、今彼は別の事で頭がいっぱいで、情報がほとんど耳に入ってきていなかった。
(…… マジか。嘘!わぁぁぁぁ——)
あんな仲間同士とのその場のノリで思い付いた程度の話を真面目に受け止めて、実行出来る方法を模索してくれていたなどと夢にも思わなかった為、完全に寝耳に水だった。
(あ、コレは都合の良い夢かな?だって、あのゲームとのコラボに明が、ボクの彼女が関わるとか無いでしょ。しかも自分から提案してとか、益々もって無いでしょ!実家まで動かすとか!)
「圭が考えてくれた企画をあのまま流すのも忍びなくてな。だが、今からでもやめた方がいいか?」
あまりに反応が無い為、青鬼が心配になってくる——が、勢いよく「是非やって下さいっ!」と返してもらえ、やっと彼女は安堵の息をつくことが出来た。
「それでな、出来れば圭に手伝って欲しいんだが、どうだろうか?」
「ボ、ボクが?え、でも…… ボク、調香の事何も知らないよ?」
「あぁ、わかってる。だがな、私はキャラクターの香りが全く想像出来ない。向うから資料は貰うが、それを読んだからといって似合う香りが浮かぶ気がしないんだ。ならば、実際にゲームをしている圭が思い付くイメージを私に教えて欲しかったんだが…… ダメか?」
「え、えぇ、えぇぇ…… っ」
(好きなゲームの企画に、自分が関われる⁉︎マジかぁぁぁ)
興奮が止まらず、頬を染めながら、椿原は口元を震わせている。好きな人に告白でもされた時の乙女のような空気感を漂わせている為、青鬼が少し困った顔になった。
「…… 何人ですか」
滾る気持ちを落ち着けようとしているのか、問いかける椿原の声が淡々としている。
「七人の予定だったな」
「明にコスプレしてもらった人も、その中にいる?」
「いたな。人気なのか?」
「うん。ボクも一番好き。前より好きなった、明似合い過ぎ。ヤバイ。あの日あの後ホテルに連行。抱き倒したくらい、もうっ」
「おいおい、語彙力が落ちてるぞ」と言い、青鬼が椿原の隣に寄り添う。ベットの上で二人、脚を伸ばして壁に寄りかかると、背の低い椿原が彼女の肩にコツンと頭をのせた。
「そうだね、でも嬉しくって幸せ過ぎてもうヤバイ」
何気ない事すらも拾い上げて実現化してくれる事があまりに嬉しく、感情が彼の中で暴れ狂っている。
「勝手な事をしているか?とも考えたんだが、かなり好きなゲームみたいだったからな。何か私でもしてやれることがないかと思ってな…… 。ほら、相手の好きなことは、共有したいものだろう?」
普段、『どうやら私は酔って椿原を襲ってしまったみたいだ』という引目を持っているせいで、積極的には動かず、彼の望みに合わせるばかりな青鬼が、珍しく自分から行動したというだけでも嬉しいのに、見事にオタク心を突く内容だとかもう——
(明ったらイケメン過ぎる。ソレを出来る環境下にいる人とボクはお付き合い出来てるとか、漫画かよ!もう恋愛ゲームだよ!あぁぁぁぁ、もうっ!)
「好き!結婚して下さい!」
嬉しさと愛情が溢れ出てしまい、つい言ってしまったこの言葉が、結局二人のプロポーズの瞬間となってしまった。
【終わり】
お互いが休みだった為、今日は青鬼の部屋に集まり、二人でお家デートを楽しんでいる。
いや——正確に言うならば、楽しんでいるのは手土産に買ってきてもらったケーキを頬張っている青鬼だけで、椿原の方はといえば、彼女のベットうつ伏せで転がり、不貞腐れていた。
「うぅ…… 海の見える丘とか、綺麗なホテルの最上階のバーとか、もういっそ公園とかでもいいから、ちゃんとまともなプロポーズしたかったぁ…… 」
前回のカフェでの一件からもう一ヶ月が経過している。——が、その間ずっと同じ内容で椿原は凹み続けており、寛容性の高い方である青鬼も、流石にちょっと『ウザイとはこういう事か』と思い始めていた。
だが、気持ちはわかる。
自分もアレがプロポーズであると思いたくないくらいグダグダしたものだったし、一生に一度だといいなという大イベントが、なんとなくそう汲み取らざるおえないようなものでいいはずが無い。
何より将来、もし子どもが生まれた時に、いつか『どんなプロポーズをされたの?』何て訊かれたらどう答えていいかわからないレベルで、アレは確かに無いよな、と青鬼も正直思っている。でもだからって、一ヶ月間落ちこまれ続けては、どうしたって迷惑でしかなかった。
「そんな事よりだな、今日は別件での報告があるんだが聞く気はあるか?」
『そんな事』という単語が見事に椿原へ突き刺さり、急所へ攻撃がクリティカルヒットした時並みにショックを受けた。
「ボクの悩みは一刀両断⁉︎」
椿原が涙目になり、伏せっていた顔をあげて少し拗ねた表情をする。そんな彼の様子に気が付いた青鬼は口元に軽く笑みを作りながら頭をぽんぽんと優しく撫でると、すぐにその手も離して「それでな」と話の続きをし始めた。
(何かテキトーに誤魔化された気がするのは、ボクの被害妄想⁈)
それでも、椿原がちょっと嬉しい気持ちになってしまった。好きな人に触れてもらえたのだから無理もないだろう。
「前に即売会とやらで、私の作った香水を売るのはどうだろうかと提案してくれた事があっただろう?」
「あぁ、うん。あったね」
カップルの定番である映画館デート(観たのはアニメ)の後に、同一作品の関連イベントに参加というオタク感丸出しのデートコースを提案してしまった事を思い出し、椿原が少し悔いた顔をしながら、青鬼から視線を逸らす。あの時はもう『好きなゲームの映画化とか、もう行くしかないでしょぉ』で頭がいっぱいだったうえに、青鬼と思い出を共有出来たら幸せかもと誘ったが——一般人に押し付けるデートコースじゃ無かったよね…… と、こちらも少し後悔していた。
そんな彼に気付かぬまま、青鬼が鞄の中から書類の束を出し、それらをベットで寝転ぶ椿原に渡す。
(何だろう?分厚いし、何かの企画書っぽいけど)
「あの日一緒に観た映画の原作になったゲームとコラボ企画をやってみたいと実家に話したらな、採用されたんだ。アニメやゲームのキャラクター商品で香水の販売は既にあったが、ウチとの企画だったからな、相手方からも即決をもらえたらしいぞ」
椿原が驚き、ベットの上で「…… え」とこぼしながら起き上がって、正座をして座った。
「人気投票などもやって、上位に入った者の香水を作る。テーマは『キミの香りに包まれたい』になったそうだ」
そう話しながら、青鬼が椿原の持ったままになっている企画書のページを捲り、進行状況の詳細を説明し出す。
なのに、今彼は別の事で頭がいっぱいで、情報がほとんど耳に入ってきていなかった。
(…… マジか。嘘!わぁぁぁぁ——)
あんな仲間同士とのその場のノリで思い付いた程度の話を真面目に受け止めて、実行出来る方法を模索してくれていたなどと夢にも思わなかった為、完全に寝耳に水だった。
(あ、コレは都合の良い夢かな?だって、あのゲームとのコラボに明が、ボクの彼女が関わるとか無いでしょ。しかも自分から提案してとか、益々もって無いでしょ!実家まで動かすとか!)
「圭が考えてくれた企画をあのまま流すのも忍びなくてな。だが、今からでもやめた方がいいか?」
あまりに反応が無い為、青鬼が心配になってくる——が、勢いよく「是非やって下さいっ!」と返してもらえ、やっと彼女は安堵の息をつくことが出来た。
「それでな、出来れば圭に手伝って欲しいんだが、どうだろうか?」
「ボ、ボクが?え、でも…… ボク、調香の事何も知らないよ?」
「あぁ、わかってる。だがな、私はキャラクターの香りが全く想像出来ない。向うから資料は貰うが、それを読んだからといって似合う香りが浮かぶ気がしないんだ。ならば、実際にゲームをしている圭が思い付くイメージを私に教えて欲しかったんだが…… ダメか?」
「え、えぇ、えぇぇ…… っ」
(好きなゲームの企画に、自分が関われる⁉︎マジかぁぁぁ)
興奮が止まらず、頬を染めながら、椿原は口元を震わせている。好きな人に告白でもされた時の乙女のような空気感を漂わせている為、青鬼が少し困った顔になった。
「…… 何人ですか」
滾る気持ちを落ち着けようとしているのか、問いかける椿原の声が淡々としている。
「七人の予定だったな」
「明にコスプレしてもらった人も、その中にいる?」
「いたな。人気なのか?」
「うん。ボクも一番好き。前より好きなった、明似合い過ぎ。ヤバイ。あの日あの後ホテルに連行。抱き倒したくらい、もうっ」
「おいおい、語彙力が落ちてるぞ」と言い、青鬼が椿原の隣に寄り添う。ベットの上で二人、脚を伸ばして壁に寄りかかると、背の低い椿原が彼女の肩にコツンと頭をのせた。
「そうだね、でも嬉しくって幸せ過ぎてもうヤバイ」
何気ない事すらも拾い上げて実現化してくれる事があまりに嬉しく、感情が彼の中で暴れ狂っている。
「勝手な事をしているか?とも考えたんだが、かなり好きなゲームみたいだったからな。何か私でもしてやれることがないかと思ってな…… 。ほら、相手の好きなことは、共有したいものだろう?」
普段、『どうやら私は酔って椿原を襲ってしまったみたいだ』という引目を持っているせいで、積極的には動かず、彼の望みに合わせるばかりな青鬼が、珍しく自分から行動したというだけでも嬉しいのに、見事にオタク心を突く内容だとかもう——
(明ったらイケメン過ぎる。ソレを出来る環境下にいる人とボクはお付き合い出来てるとか、漫画かよ!もう恋愛ゲームだよ!あぁぁぁぁ、もうっ!)
「好き!結婚して下さい!」
嬉しさと愛情が溢れ出てしまい、つい言ってしまったこの言葉が、結局二人のプロポーズの瞬間となってしまった。
【終わり】
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