【完結済作品の短編集】

月咲やまな

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【童話に対して思うこと】(作品ミックス・一話完結)

【赤ずきんは森のオオカミに恋をする】レン×狼さんの場合

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 これはまだ、狼さんが秘密基地めいたツリーハウスに一匹で暮らし、レンが押し掛け女房的行為を勤しんでいた時期のお話——

「じゃじゃーん。こぉれ、なーんだ」
 そう言って、レンは狼に向かい一冊の本を見せた。その大きめな本はちょっとした凶器の代わりになりそうな程の分厚さがある。装飾はとても丁寧で、表紙に入る絵は綺麗な赤い薔薇。その薔薇は淡く光を放っているが、項垂れていて今にも枯れそうで、ちょっと寂しげな雰囲気があった。
「本、だろう?それくらい知ってる。何だ?無知な私を『獣だからどうせ知らない』と言って、笑い者にでもしたかったのか?——はっ!残念だったな」
「そんなつもりは全然無いよ。君ったら、被害妄想が過ぎるんじゃないの?」

 お前がそれを言うか⁉︎

 散々レンからは被害にしか合っていない狼はそう思ったが、それは言わないでおいた。馬鹿にするつもりで本を持って来た訳では無かった事が、正直嬉しかったのだ。
 その事でちょっと気分を良くした狼が、鼻高々に話を続ける。
「中身だってなぁ、タイトルから想像がつくぞ。だからそれを読む気は全然無いからな、持って帰ってくれ。ここに置いていっても、私はその本を重石代わりにするか、お前を嵌める為の罠の材料くらいにしかしないぞ?」
「ハメるだなんてイヤラシイなぁ。でもそれは僕の役目だよね」
 ニヤニヤと笑いながら、レンが狼の頬をツンツンと突つく。
「ちが!何をだ一体!全く…… だいだいアレだ、そんな本を持ってくるお前の方が、もっとずっとイヤラシイじゃないか。どうせお前みたいな主人公が、すごくイヤラシイ事を沢山しているような話なんだろう?んで、それを読めないであろう私にお前が自慢気に読み聞かせ、私が大騒ぎする様を見て高笑いする気だったんだ!でも残念だったな、私はお前のおばあさまから字を習い始めたから、いつかきっと、自分でだって本を読める様になってやるんだからな!」
 ふんっと鼻息荒く、狼が胸を張る。だがその発言は、レンの情念を刺激するには十分過ぎる内容だった。
「え。字を習ってるの?それって僕の為だよね⁉︎や、やだ、君ってば、か、か、可愛過ぎでしょー!しかもそんな内容だと、くせに、自分で読めるから読んでもらう必要が無いだなんて、言っちゃうとか」
「…… へ?」
 間に抜けた声が狼の口から溢れ出た。本当に、全く、そういう意図にしか取れないような発言をしてしまった自覚が無かったみたいだ。
「…… あ。う、う、うわぁぁぁ!ちが、違う!それを読みたいとかじゃなく、いつかは私だって文字を読めると言いたかっただけで!」
「しかもタイトル絶対に読み間違ってるし。『と』の部分を『が』って読んだでしょ。何?君ってば、そんなに僕の容姿が好きなの?そんなに可愛い?あ、違うね、僕は…… そんなに君の目から見ると美しいの?」
 スッと目を細め、レンが狼の方へにじり寄る。両手両足を床につき、まるで獲物を狙う獣の様だ。
「しかも、淫猥な内容の本を読み聞かせる、か。そんな事は考えた事も無かったけど、いいね。最っ高の企画だよ。僕にでもその類の本を入手出来る様になったら、すぐにでも持って来てあげる。その頃には本当に君も字が読めるだろうし、ベットの中でじっくり僕に読んで聞かせてよ。同じ事をたっぷり実体験させてあげるから、ね?」

「や、やめ、いや、待って、許してぇぇぇぇ!」

 金色の髪を揺らし、人の姿をした獣が狼に襲いかかって彼女の首に甘噛みをする。レンが手に持っていた本は床へと転がっており、その表紙には『美女と野獣』のタイトルが書かれていたのだった。


【終わり】
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