【完結済作品の短編集】

月咲やまな

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【アイツだけがモテるなんて許せない】

くだらない夢・後編【琉成×圭吾】(圭吾・談)[R18]

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『ひとまず手近なトイレに入ろうか』
 介助はありがたいが気遣う声が妙にムカつく。そんなに心配するくらいならさっさとこの迷惑極まりない妄想をやめてくれと叫びたい。
 何を考えているのか流石に内容まではこちらへ伝わってこないのでわからないが、何かしらの妄想が琉成の脳内で続行中な為、ケツの中を容赦無く指で弄られ続けている。耳を甘噛みされる感覚や、首を撫でたりもされて、これではまるで昨夜の痴態の再現ではないか。


 一番近いトイレに入り、個室の中へ俺を運んでいく。便座の蓋を下ろして座らせると、後ろ手で鍵を閉めて琉成がニヤリと笑った。
 頬が赤く、ひどく高揚していて呼吸も荒い。俺がこうなっている理由までは流石の琉成にもわかってはいないだろうが、それでもこちらの体の状態はそれなりに把握している気がする。

『もしかして、昨日の事思い出しちゃったのかな?』

 嬉しそうな声でそう言い、俺の前に琉成がしゃがんだ。
『こーんなに大きくテント張っちゃって、可愛いなぁもう』と言い、俺の勃起状態にある股間を指先で撫でてくる。後ろにはまだ弄られている感触があるままなせいで大きな声が出そうになると、『しー、声は我慢しようか。圭吾は慣れてるから、出来るよね?』と、俺の口元に指を立てた。
 自分の鞄から小さなサイズのタオルを取り出し、それを俺の前に差し出しす。
『はい。あーんして』
 素直に口を開けると、いつも通りにそれを口内に押し込まれ、くぐもった声しか出せぬ様にさせられた。
 今回もやっぱり見た事の無い柄のタオルだ。今までのは一体どこに消えているんだ?事後に捨てているとはどうしても思えず、毎度気になってしまうが、これではまた訊けずに終わりそうだ。

『授業中に色っぽい顔をし出したから、何事かと思っちゃったけど…… 俺だけじゃなくって安心したよ』

 嬉しそうに笑いながら、俺の穿いているズボンのファスナーを躊躇なく下ろしていく。
『淡白な圭吾でも思い出しちゃうくらいに、昨日のが気に入ってくれていたの?それともその前かなぁ。今までの全部だったら、すごく嬉しいけど』
 とてもじゃないが今の行為とは微塵も一致しない明るい声が聞こえ、ちょっとムカついた。
 俺が行為の最中以外でお前との痴態を思い出して興奮する事なんざこれっぽっちも無いし、この先だってありえんだろ。そんな事をしている暇があるんなら、参考書の一ページでも読み込んでおいた方がよっぽど建設的だ。

 今この状態になっているのは全てが全てお前のせいでしか無いんだよ!

 と訴えてはみたものの、タオルのせいで全て『ふんぐぅぅ!うぐ、ふぅぅっ』としか言えるはずがなかった。
『んー?早くして欲しいの?せっかちさんだなぁ』
 ふふっと笑いながらパンツとズボンを脱がせられ、膝あたりまで下げていく。そして俺の完全に勃起している陰茎にうっとりとした瞳をした顔を近づけ、琉成はゴクッと唾を飲み込んだ。

『こんな場所でなんて、初めてした時みたいで興奮するね』

 そのせいでか、奴の中で妄想が加速しているっぽい。
 指程度で済んでいた感触が、消えたと思ったら今度はもっと太くて長いモノがズンッと一気に奥まで挿れられた。もちろん“本物に”では無いのだが、リアルな感覚が体を貫き、届いちゃいけない辺りまでゴリッと切っ先で擦られている感じがする。
 驚き、焦り、そして快楽とが同時に俺を襲い、目の前でチカチカと光が散った。背筋が大きく反れて、ガクガクと全身が震えている。どうやら俺は…… 中イキしてしまったっぽい。ここまでの間中もずっと指で散々中を弄られ、もう限界目前まできていたのかと、イッてしまってから初めて気が付いた。
 全身から力が抜けて、ズルズルと体が便座の上から落ちそうになっていく。そんな俺の体を慌てて琉成が支えると、『…… んんん?』と不思議そうな顔をして首をかしげた。

『まさか、脱いだだけでイッちゃったの?』

 んな訳あるか、馬鹿なんじゃねぇの?
 そうは思うが頭ん中がぼーっとしてしまって、余韻が全然抜けない。それどころか、より一層興奮度が加速してしまっている。もしかして前でイッたワケじゃないせいだろうか。
 まさか自分の妄想がそのまま俺に伝わっているだなんて気が付けるはずがなく、ワンコみたいな顔がニタァと興奮気味に歪みだす。まるで俺の体が淫乱になった事を歓喜しているみたいだが、全然違う。そんな勘違いは本当に勘弁してくれ。…… 勘違いで、間違いであってくれ。

『すっかり快楽を覚えちゃったみたいだねぇ?あぁ…… 凄いな、後ろヒクヒクさせちゃってる。毎日シテいて解れたままだから、指も簡単に入っちゃうねぇ。圭吾の中はいっつも空っぽだから好きなタイミングで喰べても平気とか、もう完璧過ぎてずっと挿れていたくなるよ』

 琉成のモノがまだ入った感触があるままなのに、唾液で濡らした本物の指が中に入ってくる。妄想とは違ってゆっくりと、とても丁寧は動きだ。なのに頭ん中では俺の太腿を力強く掴んで持ち上げ、陰茎を激しく打ち付けてくる感覚を被せてきた。
『んぐーっ!』
 容赦無い感触が襲いかかってくるのに、現実では優しい手付きなせいでギャップがヒドイ。伝わってくる妄想では無理矢理犯す様に俺を抱くクセに、実際には大事に大事に扱ってくるとか卑怯だろ。
 先走りが流れ落ちる陰茎に舌を這わせ、裏筋を舐め上げてから琉成が自分の口内へと押し入れていく。その間も刺激を与え過ぎて声が大きくなってしまわない様に気遣いながら扱ってくれているのに、やっぱり脳内ではぐぽぐぽと音が鳴っていそうなくらいに抱かれているせいで、ちょっとの刺激だけで俺は難無くまた絶頂へと達してしまった。

『——んぐっ⁉︎』

 ほぼ咥えただけに等しいタイミングで精液が口内に吐き出された事に驚いたのか、瞳をくっと開け、琉成が肩を震わせた。突然の事だったのに気持ちをすぐに切り替え、一滴も溢す事なく苦い液体を飲み下していく。そしてずるりと陰茎を口から抜き取り、愛おしげに頬擦りをしてから軽くキスを俺のモノにしやがった。ソレが俺の本体かってくらいの扱いだ。

『気持ち良かったんだね。嬉しいなぁ、こんなに興奮してくれるだなんて』

 立ち上がり、興奮した瞳で俺を見下ろす。
 ぺろりと唇を舐めながら着ている服を軽く捲り上げ、ベルトを外してズボンの前を開けると、穿いている下着を下げてギンギンに滾っている自身の陰茎を俺の前に晒した。ヒクヒクと動くソレからは先走りが流れ出ていて、コイツも少しの刺激だけで簡単に弾けそうに見える。そりゃそうだろ、妄想の中では散々に俺を犯し尽くし、それは今でも続行中なせいでこっちの体はボロボロのグダグダだ。眦からは止めどなく涙が零れ、タオルを噛まされている口は力を入れ続けたいるせいですごく怠い。

『挿れたいけど…… 人通り多いんだよなぁ此処のトイレ』

 残念そうに息を吐き、汗っぽくなっている髪をかきあげる。モロ出し状態なのにそんな仕草がカッコイイと思わせるとか、いっぺん死んでくれないかなぁ。

『太腿貸してもらうね。その方が声我慢出来るでしょ?』

 妄想をやめてくれていない時点で保証は出来ない。だが当然それを伝える事などは無理なので、ぐったりした体がこれ以上は崩れない様に両手を壁に当てて突っ張った。力がほとんど入っていないので無駄かもしれないが、何もしないよりはマシだろう。
『ん、いいこだね』と言って、俺の頭を優しく撫でる。妄想では犯し続けておきながら、何でここまで行動は真逆の事が出来るんだろうか。
 俺の脚を持ち上げて閉じさせる。細いせいでどうしたってできてしまう隙間を無くす様に少しだけクロスさせ、ぴっちりと閉じられた内腿の間に琉成が己の陰茎を押し入れた。潤滑剤は無いが、自身の先走りのおかげでずるんと難なく入ってくる。裏筋が擦れ合い、気持ちいいには気持ちいいのだが、少し物足りないと思うのが悔しくてならない。だが、それを補うみたいに妄想が再スタートしやがった。当然ソレは俺の中に入り込んできていて、激しく突き上げてくる。こちらの事なんぞガン無視した動きは俺の体をオナホ扱いでもしているみたいだ。なのにやっぱり現実の琉成はゆっくりと優しく動いてくれるせいで、下っ腹の奥がキュンキュンと疼いて止まらない。妄想との差があればある程に愛されている気がして嬉しくもなってしまう。

 コイツ、どんだけ俺が好きなんだよ、ったく。

 興奮のせいでお互いにあっさり達し、何とか妄想もせずにいてくれる様になり、後片付けなどは全てやってくれた。
 だがしかし、その後も一緒にご飯を食べに行きゃあ店内でローターの様なオモチャを入れるプレイを楽しむ妄想をしたり、服を買おうと立ち寄った店の更衣室に入った際にはそこで後ろから挿れられたりなどなどをさせられる想像をされてはしまったが、そのせいで妙な気分になってしまったとしたって、琉成は絶対にその場では俺を襲う様な真似はせず、必ずトイレや路地裏などの人目につかない場所へ俺を連れて行ってくれたのだった。
 

       ◇


「…… ——なぁ」
「ん?」
 クローゼットの前に立って服を着替えている琉成に声を掛けると、奴が笑顔で振り返った。
 ベッドの端に座ったまま、人当たりのいい表情を浮かべる琉成の顔を見上げ、ジッと見詰める。夢の中ではいっつも俺とのエロい妄想ばっかしていた琉成だが、実の所普段は何を考えているのだろうか?どうしたって不思議でならず、これを機にちょっと訊いてみようかと思うが、はぐらかされて終わりな気もして迷いが生まれた。

「…… 」
「どうしたの?」

 何も言葉を続けない俺の様子が気になるのか、腰をかがめてこちらの顔を覗き込んでくる。
 端正な顔をした細マッチョの清一や、可愛い系になりつつある充達とはまた違う、懐っこいイケメンが近距離まで近づいてくると反射的に後ろへ盛大に下がってしまった。
 だが琉成がその事で傷付いたり、ガッカリした様な感じは無い。むしろ俺が逃げたり騒いだりした時の方が嬉しそうなのは何故なんだろうか。こちらの過剰な反応を楽しんでいるのだとしたらタチが悪い。

「あ、いや…… えっと。お前は普段どんな事を考えてんのかなぁって、ちょっと不思議に思ったんだ」

「…… 気になるの?」
「ならないと言ったら嘘になる」
 夢であんな経験をするまでは、あまり気にしていなかった気がする。はぐらかしたり、スルーされるんだろうなと思うと訊くのも億劫だったというのもある。知りたいと意思表示をしても教えてもらえないというのは正直ストレスでしかないし、傷付きだってするのだから。

「そっかぁ。知ってくれていなくても全然気にしないし、むしろそうでありたいけど…… でもやっぱ嬉しくもなるもんだね。圭吾が俺を知りたいって思ってくれるのって」

 着替えの終え、服の裾を整えながらニッと嬉しそうに琉成が笑った。
 その笑顔を見て胸の奥がじわりと熱くなるのを感じる。琉成が嬉しいと、俺も嬉しい。あぁそうか、コレが恋人同士ってやつなのか。

「九割は圭吾の事考えてるよ。残りは、授業の事とか次に提出するレポートどうしようかなぁとか、ご飯何にしようかなぁとか、そんな感じ」

「比重がオカシイぞ。ってか、エロい事ばっか妄想してんじゃ無いだろうなぁ…… 」
 夢だとはいえ、体験済みなせいでジト目を向けると、「当然!」と明るい声で返された。

「世界中に圭吾ってこんなに可愛いんだよって言いたくって、公衆の面前だろうが所構わずに深くねちっこく丹念に愛でて、その細い体を存分に喰らい尽くす事ばっか考えてるよ」

 そう言って、ベッドに腰掛けている俺の前に琉成が片膝をついて座った。そして俺の右手を取ると、手に甲にそっと口付けをおとす。
「王子かよ。ってか、んな事ばっか考えてんのな」
 夢で見た通りで納得しか出来ない。だからって、本当にやったらぶん殴った上に意地でも別れてやる。

「でも…… 安心して、絶対にそんな事はしないから。圭吾の可愛い姿を愛でていいのは、この世で生涯俺だけだしね」

 柔らかな笑みを浮かべ、俺の手を引き、自分の頬に触れさせる。そして頬擦りをするみたいに顔をゆっくり動かすし、「これ以上、嫌われたくないもん」と呟いた。

「圭吾は元来淡白な質だからね、現状でもかなり無理をさせているのは自覚してる。だけど俺にはしたい事が沢山あって願望は尽きないけど、ソレを全て押し付けて、心から嫌われるのはイヤだからさ」
「…… そうな。流石にコックリング?だっけか、アレでちんこ軽く叩かれたうえに装着までさせられた時には、もうコイツとは別れようかと思ったくらいにビビったわ」
「でも受け入れてくれた」
「まぁ…… 『今すぐ死ね』とは思ったけどな」
「俺は圭吾が許してくれる範囲の事しかお願いしないよ」
 つまり大人なオモチャやコックリングはお許しの得られる範囲だと。いや、アウトだろ。…… まぁ事実許しちまったんだけどな、散々全身弄られて、頭ん中真っ白にさせられて、だが。

「頭ん中ではそりゃもう散々に、強姦レベルでまですげぇめっちゃくちゃにしてるけど、ずっと一緒に居たいからさ。人前じゃ絶対に喰べたりはしない」

 真っ直ぐに俺の目を見据え、ハッキリと琉成が断言した。

 周囲への言葉や雰囲気での威嚇は多々あれど、確かにコイツは俺に、いかにも恋人っぽい触れ方をした事はなかった。それこそ、夢の中ですらも。
 食べ物を食わせ合ったりはどうなのよと言われると何とも微妙な所だが、餌付けの延長みたいなもんだからノーカンだろ。…… 一部の腐った女子達には妙にウケているらしいが、内情は悟られてはいないと断言出来る。
 言動に関しては何とも言えぬ点が多くあるが、少なくともエロい触れ方をしやがったせいで決定打を与える様な真似はしていない事は確かだ。
 その事に気が付き、一気に俺の頬が真っ赤に染まり、ドクンッ心臓が大きく跳ねた。

 んとーに、愛されてんのな、俺。

 夢の中だろうが現実だろうが、同じ行動や言動を得られた事で、嘘では無いと確信出来る。
「あーくそ。もういいからどっか行け」
 真っ直ぐに琉成の顔を見られず顔を逸らす。俺を強姦ばっかしてる妄想をするド変態のクセに、んな奴からの愛を実感したせいで恥ずかし過ぎ、憎まれ口しか出てこない。
「え!やだよ、んなに可愛い顔してもらえてんのに」
 俺の腰に抱きつき、イヤイヤと首を横に振る。完全にガキの行動だが、図体がデカイのにワンコ系なせいか似合ってしまうのが恐ろしい。
「ねぇ、もっかいしよ?」
「——は⁉︎無理言うな!圭吾も清一も、もうすぐ帰って来る時間だろうが」

「ちょっとだけ!ね?ちょっとだけだから。それにほら、この部屋は防音もバッチリだし、ドアを開けられない限りは平気だって」

「男の言う『ちょっとだけ』は絶対に信じるなって、誰かが言っていた!」
「くっ!」
 渋い顔をして、今度は琉成が俺から顔を逸らした。どうやらその通り過ぎてぐうの音も出ない様だ。

「だけど、あー…… 明日は俺、バイト…… 休みだから、さ」と言うと、キラッキラとした瞳をしながら琉成がこちらに顔を戻す。
「デート?デートする?」
「講義が終わった後でもいいなら、だけどな」
 照れ隠しで痒くもない後頭部をぼりぼりとかく。
 ただ放課後にどこかへ二人で行くというだけなのに、何故自分達は恋人同士なのだと意識してしまうとこんなにも気恥ずかしくなるのだろうか。今までだって、何度も二人で放課後に出掛けてきたというのに。
「何処がいい?パンケーキとかどうかな?巨大パフェの予約をして、圭吾が挑戦するのを俺が見ているとかもいいね」
 楽しそうに話す琉成の背後にパタパタと振られた尻尾の幻覚が見えるくらい嬉しそうだ。コイツが過多な性欲を即座に制御出来るくらいだ、よっぽどデートの約束が嬉しいのだろう。

「圭吾も何処へ行きたいか考えておいてね」
「あぁ、わかった」

 夢とは違ってコイツの妄想を体感せずに済むので気軽に誘ったのだが、後悔の無い一日を過ごせそうだ。——と思っていたのだが、結局は数時間程度の食事と買い物の後は早々にホテルに引き込まれ、いつも通りの一日とほとんど変わらなかった。無理矢理違った点をあげるとしたら、普段以上にしつこかった事くらいだろう。
 デートに誘われて嬉しかったにしたって、もう二度と止めて欲しいと強く思う一日だった。


【終わり】
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