異世界の管理人

ぬまちゃん

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デジタル音楽とスマホ

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「そうですよね、レコード世代の人にとっては、デジタルとかCDとか、ダウンロードなんて分からないですよね」

男の子は、主任さんと西の魔女、女の子に説明し始めた。

「まず最初に、デジタルとアナログの話ですね」

異世界の住人に対する男の子の説明は続く。

音と言うのは、空気の振動が僕達の耳や体に当たって、音楽として認識するのです。

ですから、音とは空気の連続的な振動なんですね、それを記録したものをアナログといいます。レコードはそのアナログの振動を溝の強弱として記録しているんです。

それに対して、デジタルというのは、連続した音を、瞬間・瞬間に分解した塊にするのです、それをデジタルといいます。CDは、そのデジタルの塊を小さなピットと呼ばれる溝の大小として記録します。

「うーむ、言葉の意味は理解できるぞ。しかし、デジタルとかにしてしまったら、アナログの良さが失われてしまううのではないか? アナログとかで、十分いい音楽が聴けるではないか。それなのに何でデジタルとかにしてしまったのだい?」

主任さんは鋭い着眼点で突っ込んでくる。さすが冥界の王である。

「そうですね、アナログはいい音が出るのですが、ノイズといって、どうしても余計な雑音が入ってしまうんです。その代わりデジタルだと、そのノイズが原理的に入らないんですよ。そもそも、デジタルに変換してしまっているので、データといって、電子的な文字で表されるのです」

男の子は、その質問に適格に答える。

「おお、ワガハイもしっているぞ。なんでも楽団の演奏家は、楽譜とか言う文字を使って音楽を奏でるのだろう?」

「はい、そうですね。アナログの演奏をする場合に、楽譜と言って沢山の音符が書いてありますよね。でも、デジタルの場合は、その音そのものをバラバラにして電子的な文字で記録するのです」

「神宮司君、さっきから君は、バラバラにするといって言っているが、そんなにバラバラにしたら、音がぶつぶつ切れてしまって、綺麗な音が出ないではないか」

主任さんはデジタルの本質に関する質問を男の子にぶつける。

「ハデスさん、人間の耳や目は、バラバラになっていても、そのバラバラの時間間隔が短いと、区別が出来ないのです」

男の子の説明は、どんどん進む。

たとえば、サリーさんやマリアさんが今朝見ていたテレビという物は、実際には一秒間に60枚の細かい絵を画面に映しているのです。でも人間はそのバラバラの絵を自然な流れと思って認識してしまいます。

それと同じように、音も一秒間に24000回の細かい音の粒を人間は自然な音の流れとして認識してしまうのです。

「何だと、それではそのCDとやらは、人間が感知出来ないぐらい早い時間間隔で音の塊を出しているのか?」

主任はチョット驚きながら質問をする。

「ハイそうですね。正しくはスピーカーやイヤフォンという膜が空気を揺さぶって音を作っているので、その膜が動く前にはアナログという連続な動きになってしまうのです」

ですから、音の塊が人間の耳に飛び込んで来る訳では無いです。流石にそんな音の塊が飛んで来たら痛いですものね。

それと、デジタルの良いところはデータの複写と保管が簡単なんです。デジタルは、単純な0と1の組み合わせなのでその数字の資料をコピーして保管しておけば、劣化しないのです。

「それは、これから何十年先の事を考慮してという事かね?」

主任は人間界の先見性の部分を指摘する。

「そうですね、逆に数十年前の映像や音楽を残して置いて、既に亡くなった方の音楽を聞くことが出来ますからね」

男の子は、その部分に同意する。

「そうか、人間はそうやって自分たちの知識や経験を残す事を大切にしているのだな」

「そうですねえ。書籍と言いレコードやテレビと言い、自分達の知識を未来の人間達のために残そうとしてるんでしょうね」

「やはりそうか…人間とは恐ろしい生き物だなあ」

主任さんは異世界の生物として人間の恐ろしさを改めて思う。

「え?ハデスさんなんて言ったのですか。まあいいか。そうですね、延々と知識の継承を行なっている生き物ですね」

主任さんの意見を不思議に思いながらも、同意する。

「最後にデジタルの良いところは、圧縮と伸長が出来ることです。例えば、0000000011111111とあったら、0が8つと1が8つとして書き直す事が出来るのです。そうすると全体の大きさを小さく出来るのです」

男の子の説明は止まらない。

「まあ、小さくなるのは良い事だが、それの利点は何かね」

主任さんも、なかなか引かずに質問を繰り返す。

「それはですね、音楽データを電波に乗せて送る時に早く送れるのです。僕のスマホにも、そうやって音楽データが入っています。これを圧縮しないで送ると凄く時間がかかるんです」

男の子は自分の知識を総動員して主任さんの質問に答えようとする。

「デジタルとか圧縮とか、人間というのは色々な事を考える力があるのだな」

主任さんは、男の子の説明に人間の凄さを改めて実感する。

「多分なんですけど、人間は自分達が力の無い生物だと分かっているんです。だから毎日努力しているのではないでしょうか?」

男の子は、自分の事を省みる様にして主任に答える。

「うむ、人間は侮ってはいけないな…」

主任はチョット人間と男の子を尊敬し始めた。
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