異世界の管理人

ぬまちゃん

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空想と現実の境界

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「しかし、現実と空想は違うでしょう?その区別もできないという事?」
女の子の意見にすこし違和感を覚えた西の魔女が意見を述べた。

「サリーおば様、でも小さい子供はぬいぐるみを大切にして自分の友達の様に扱ったりするでしょう?」
「決して、人形は架空の友達だから…とか思った事は無いはずですわ」
「人形が本当に生きている様に思えるのです、子供達にとっては…」
女の子は、子供の時の事を思い出して、人形に情を感じた時の時の話を持ち出した。

「まあ、確かに小さな子供達は、その様な事をするわね。でも、それは子供達であって大人はしないでしょう?」
「人間界の大人たちは、そんな現実と空想の区別もつかないのかしら?」
西の魔女は、こまったような顔をした。


「そうですね」
「昔の大人に比べると、確かに現実と空想があいまいな人も多いですね」
「若い頃から、マンガを見て育った大人たちは、マンガやライトノベルといった想像力ゆたかな小説に対しても敷居が高くないのでしょうね」
「結構な年齢の人も、マンガを読んでいる人が多いですからね。例のアニメのキャラクターに対する思い入れも、実は大人の人の方が熱心なのです」
男の子は、少し恥ずかしそうに、今のアニメ全盛期の状況を説明した。
結局、自分も時々アニメを見ているからだ。


「ううむ、そうか、人間界では、大人になっても空想力が衰えないのは、そういうカラクリがあるのだな」
「小さい頃から空想力を鍛えて、大人になるとさらにアニメやライトノベルという小説でその空想力に磨きをかけるのか…」
「その強力な空想力を持った大人たちが、異世界で縦横無尽に暴れられたら、どんな怪物も、ドラゴンさえも太刀打ち出来ないだろうなあ」
男の子の説明を聞いた主任さんは、納得したようにうなずく。


「昔は、小説家ぐらいしか空想を働かせる大人はいなかったのでしょう」
「しかし、今は沢山の人間が空想を働かせる職業に付いたり、別の仕事をしながら密かに小説を書いて空想力を鍛えているのは事実ですね」
男の子は、ハデスさんに現在の状況を説明した。

実際、今は多くの人間がネット上に小説を投稿し、その小説をみんなが読んでいる。
そして、その小説を読んだ人間がまた、新たな小説を書き始める。
そのような循環で、多くの人間の想像力が鍛えられているのだ。

このようにして鍛えられた想像力は、異世界の住人に対しては脅威になりえるのだろう。


考えてみれば、大昔の話から、遥か未来の話、そしてそれこそ異世界に転生した時の冒険譚といった話が、毎日のようにネットに上がっているのだ。
そして、その話に出て来る主人公は皆、その強さが飛びぬけている話ばかりだ。
一振りで町を吹き飛ばす剣を手に、チートと呼ばれる裏技を駆使して、色々な世界を飛び歩くライトノベルが巷にあふれ帰っている。
確かに、人間から見たら単なる空想上の話かもしれないが、その世界の住人達からみたら、迷惑この上ない話だ。


そのように人間の無限ともいえる想像力が、異世界で自由に使われたら、異世界を滅ぼす事は不可能ではないだろう。

でもきっと、人間達は自分たちが異世界を滅ぼしたなんてこれっぽっちも思っていない。
多くの異世界は、誰にも気が疲れずにひっそりと滅んでいくのだ。
そして、また人間達の想像力で新たに異世界が生み出されて、人間達に虐待されていくのだろう。

主任は、その事を思うと涙腺が緩んでくるのだった。

それに気が付いた男の子は、主任さんに近づいて、やさしく声をかけた。

「ハデスさん、いったいどうしたのですか?先ほどから具合が悪そうですよ」

「うむ、神宮司君。流石に今日は色々と新しい所を見て周り、多くの発見があったので疲れてしまったようだ」

「大丈夫です、そろそろ、自宅の最寄りの駅に着くので、もう少ししたらアパートに戻れますよ」

四人は、降車駅で電車を降りると、行きと同じバスに乗り、アパートに帰って行った。

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