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『ふざけんじゃねぇ!』って、言えますか?
長い1ヶ月の始まり
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山川満瀬は今日から高校1年生になる。初対面の皆。初めてのミニスカ制服。初めてのホームルーム。なんだか一気に大人びた自分に、昨日と全く違う世界に、満瀬は胸を弾ませていた。始まるって、いつもそうだ。新しい机。新しい椅子。新しい人間たち。不安と希望でワクワクドキドキ。そんな瞬間が、好きだ。
中学を卒業する時、満瀬はそのことを思い出す。もう誰も信用出来なくなるくらい、傷ついたこと。だから、この高校生活の始まりは、満瀬にとってかけがえのないものになるんだと、幸福に向かって手招きされているような、そんな感覚になった。
「では、山川満瀬さん、自己紹介をお願いします」
新しい先生が自分の名前を呼んだ。満瀬は張り切って、黒板の前に立った。
「山川満瀬です、よろしくお願いします……」
家に帰り着くと、誰もいないようだった。両親は共働きで、こういうことはしょっちゅうある。満瀬は合鍵を使って扉を開けた。
しんとしたリビング。普段は明るい2人なだけに、ずっと静かで、物寂しい。リビングの明かりを点けると、机には作り置きの夜ご飯と置き手紙。満瀬はふんふん鼻歌を歌いながら、夜ご飯を電子レンジで温める。
ガチャリ。満瀬の耳に、玄関の鍵を開ける音が届く。お父さんかな、お母さんかな。そんな予想をするのが満瀬の1日の楽しみのひとつ。コトン、と優しく扉を開けるのがお父さんで、ガチャン、となんだか慌ただしい感じに扉を開けるのがお母さん。耳を澄ませる。どっちかな。どっちだろ。
どかん!!
満瀬は驚いてぴょんと跳ねた。爆発したかのような音だ。そして、
「ただいまーーーーー!!!」
という獣の咆哮に、満瀬はまたしてもぴょんと跳ねた。それから一瞬たって、一気に恐怖が自分を支配していく。犯罪者が女の子1人の家を荒らしに来たという、何年前かに見たニュースが頭をよぎる。まさか、そんな。私どうなっちゃうの……?
声の主と思われる侵入者はどかどかと廊下を歩いて、リビングに近づいてくる。満瀬はぐるぐるとリビングを見渡す。隠れなきゃ。隠れるとこ、探さなきゃ。
どかん! とまたしても大きな音を立ててリビングのドアを開けた音が響く。満瀬はどうしようもなくなって、テーブルの下に隠れた。
つもりだったのだが、一瞬目が合ってしまった。背筋が凍って、動けなくなった。やばい、こっちに向かって歩いてくる……!
「誰、おまえ?」
男はそう口にしたが、満瀬には聞こえない。すると、思い切り肩を掴んでぐいっ、と引き寄せられた。
「お前誰だよ!?」
何が何だか分からなくなった。頭が真っ白になった。微かに聞こえたような気がする疑問文に、満瀬は答えた。
「み、満瀬……」
男の顔がチラッと見えた。あれ。見たことある……。この人、確か……。
「け、健志郎くん……?」
男はびっくりした様子で、飛び上がった。
「み、満瀬……?」
「そ、そうですけど……」
健志郎、とは夢野健志郎のことだ。母の妹の子どもにあたる人物。つまり、いとこである。
「なんでここにいるんだ……?」
こっちが言いたかった。なんで、健志郎くんがこの家に来たの?
「なんで、ここに来たんですか……?」
「なんで、って、俺はこの家をおばちゃんにゆずってもらったんだよ。俺ん家だぞ、ここ」
え? ゆずってもらった……?
「それって、どういう……」
「いやいや、おばちゃんにうちんちに住まない? って言われて……何も聞いてないの?」
満瀬は思わずはっ、となった。そういえば、私書き置きなんてされたことない。満瀬は書き置きに飛びついた。つられて健志郎も、書き置きに目をやった。そこに記されていたこととは、
「満瀬ちゃんへ。海外出張が決まったので、お父さんとお母さんは少しの間アメリカへ行きます。健志郎くんが来るから、お世話してもらってね、よろしく~。お母さんより」
満瀬と健志郎は顔を見合わせた。3秒も。そして、
「えーーーーーー!!!」
2人して絶叫した。
「なにこれ!? どういうこと!?」
「嘘だろ!? ゆずってもらったんじゃなかったのかよコノヤロウ!」
そして、健志郎は言い放った。健志郎がいつも言う言葉。これから1ヶ月もの間、満瀬が嫌という程、辛い時も悲しい時も、聞き続けた言葉を。精一杯の声量で言い放った。
「ふざけんじゃねぇーーーーっ!!!」
中学を卒業する時、満瀬はそのことを思い出す。もう誰も信用出来なくなるくらい、傷ついたこと。だから、この高校生活の始まりは、満瀬にとってかけがえのないものになるんだと、幸福に向かって手招きされているような、そんな感覚になった。
「では、山川満瀬さん、自己紹介をお願いします」
新しい先生が自分の名前を呼んだ。満瀬は張り切って、黒板の前に立った。
「山川満瀬です、よろしくお願いします……」
家に帰り着くと、誰もいないようだった。両親は共働きで、こういうことはしょっちゅうある。満瀬は合鍵を使って扉を開けた。
しんとしたリビング。普段は明るい2人なだけに、ずっと静かで、物寂しい。リビングの明かりを点けると、机には作り置きの夜ご飯と置き手紙。満瀬はふんふん鼻歌を歌いながら、夜ご飯を電子レンジで温める。
ガチャリ。満瀬の耳に、玄関の鍵を開ける音が届く。お父さんかな、お母さんかな。そんな予想をするのが満瀬の1日の楽しみのひとつ。コトン、と優しく扉を開けるのがお父さんで、ガチャン、となんだか慌ただしい感じに扉を開けるのがお母さん。耳を澄ませる。どっちかな。どっちだろ。
どかん!!
満瀬は驚いてぴょんと跳ねた。爆発したかのような音だ。そして、
「ただいまーーーーー!!!」
という獣の咆哮に、満瀬はまたしてもぴょんと跳ねた。それから一瞬たって、一気に恐怖が自分を支配していく。犯罪者が女の子1人の家を荒らしに来たという、何年前かに見たニュースが頭をよぎる。まさか、そんな。私どうなっちゃうの……?
声の主と思われる侵入者はどかどかと廊下を歩いて、リビングに近づいてくる。満瀬はぐるぐるとリビングを見渡す。隠れなきゃ。隠れるとこ、探さなきゃ。
どかん! とまたしても大きな音を立ててリビングのドアを開けた音が響く。満瀬はどうしようもなくなって、テーブルの下に隠れた。
つもりだったのだが、一瞬目が合ってしまった。背筋が凍って、動けなくなった。やばい、こっちに向かって歩いてくる……!
「誰、おまえ?」
男はそう口にしたが、満瀬には聞こえない。すると、思い切り肩を掴んでぐいっ、と引き寄せられた。
「お前誰だよ!?」
何が何だか分からなくなった。頭が真っ白になった。微かに聞こえたような気がする疑問文に、満瀬は答えた。
「み、満瀬……」
男の顔がチラッと見えた。あれ。見たことある……。この人、確か……。
「け、健志郎くん……?」
男はびっくりした様子で、飛び上がった。
「み、満瀬……?」
「そ、そうですけど……」
健志郎、とは夢野健志郎のことだ。母の妹の子どもにあたる人物。つまり、いとこである。
「なんでここにいるんだ……?」
こっちが言いたかった。なんで、健志郎くんがこの家に来たの?
「なんで、ここに来たんですか……?」
「なんで、って、俺はこの家をおばちゃんにゆずってもらったんだよ。俺ん家だぞ、ここ」
え? ゆずってもらった……?
「それって、どういう……」
「いやいや、おばちゃんにうちんちに住まない? って言われて……何も聞いてないの?」
満瀬は思わずはっ、となった。そういえば、私書き置きなんてされたことない。満瀬は書き置きに飛びついた。つられて健志郎も、書き置きに目をやった。そこに記されていたこととは、
「満瀬ちゃんへ。海外出張が決まったので、お父さんとお母さんは少しの間アメリカへ行きます。健志郎くんが来るから、お世話してもらってね、よろしく~。お母さんより」
満瀬と健志郎は顔を見合わせた。3秒も。そして、
「えーーーーーー!!!」
2人して絶叫した。
「なにこれ!? どういうこと!?」
「嘘だろ!? ゆずってもらったんじゃなかったのかよコノヤロウ!」
そして、健志郎は言い放った。健志郎がいつも言う言葉。これから1ヶ月もの間、満瀬が嫌という程、辛い時も悲しい時も、聞き続けた言葉を。精一杯の声量で言い放った。
「ふざけんじゃねぇーーーーっ!!!」
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