主人公をいじめぬいて最後は殺される悪役王子だった事に気付いた10才の俺。

はるか

文字の大きさ
70 / 118
最終章

70 村の恩返し

しおりを挟む
南の国境付近で隣国との間に侵略戦争が起きている。

町に出ると人々は暗い顔をして噂していた。どうやら戦況は思わしくなく、戦いが行われている近くの町や村では健康で若い男の徴兵もあったらしい。 

魔王(戦ってはいないが)や疫災を乗り越えてきたアレンも国単位の人間同士の戦いには苦戦しているようだった。

頬に何かが落ちたので上を見上げると綿雪がふわりとふわりと舞っていた。

雪はどんどん増えていき視界が覚束なくなっていく。

俺がハウス作りに没頭している1年近くの間この国は戦争をしていたのか。

ほとんど家の敷地内で過ごしていた俺は添い寝の仕事もしていなかったのに報酬として支払われる給料で雇った家政婦が週3回用意してくれる食事を食べて生きてきたから気付きもしなかった。

アレンは無事なんだろうか?

どんどん降ってくる雪の寒さに不安が過る。

アレンの居る所も寒いんだろうか?

不安に押し潰されそうになり、ぎゅっと自分を抱きしめてうずくまる。

その時だった――

「――ラインハルト、どうした?」

ラインハルト。この姿の俺をそう、呼ぶのは……懐かしい声に思わず顔をあげる。

「何だ、泣いてるのかと思った。ラインハルト全然変わってないな。」

キラキラと光る金髪を煌めかせながら眩しい笑顔で俺に向けている。え、男前になってる?俺に全く似てなくなったユノは超絶イケメンに成り上がっていた。

「お前、はデカくなりすぎだ!……ユノ。」

最後に別れた時よりも随分と背が伸び、筋肉もついて男らしくなった幼馴染みを俺は嫉妬心で思いっきり睨み付けたが、すぐに立ち上がると堪えきれずにユノに抱きついた。

感動?の再会を済ませ俺は冷えきった家に戻ると急いで暖炉に火を灯してユノを迎えお茶を出した。

「ラインハルトは没頭したら周りが見えなくなるからなぁ。でも1年はないだろ。……アレン、可哀相過ぎる。」

ないわ~。と首を振りながらユノがお茶を飲む。

俺はいたたまれなくなり横を向く。

「しかもラインハルト痩せすぎ!満足に食事も取ってなかっただろ?」

「はっ?週3は食べてたし!」

俺はムキになって言い返した。

「週4は食べてないのかよ。」

声変わりした低い声でユノが俺を咎めるから俺は震えてしまう。お前誰だよ?俺に似た醜男なユノは何処へ行っちまったんだ?

「ちょっ、やめろよ!そんな怯えて、俺が子供を虐待してるみたいじゃないか!」

「誰が、子供だ。」

俺がすかさず言い返すと二人で目を合わせ堪えきれずに吹き出した。

独りで凍えそうだった気持ちが暖かくなる。

一―通り笑い終えるとユノが俺の目を真っ直ぐに見て言った。

「……ラインハルト、今この国に1番必要な材料を持ってきた。」

俺は目を見張る。

「出来たんだな?」

ユノは誇らしげに頷く。

「あの村は枯れた大地に僅かばかりでも作物を作って生き残ってきたんだ。ラインハルトの教えてくれたノウハウを忠実に守ったらあんな草を育てるのなんて訳ないよ。」

そうだな。あの土地を生き抜いてきた人達だ。きっと丁寧な仕事をして上質な物が出来たに違いない。

「俺は第1陣だ、明日も明後日も届く。ラインハルト、こなせるか?」

「……誰に物を言ってる?」

俺は村人の思いと頑張りに応えるべく真っ直ぐにユノを見返し答えた。

「あはっ!やっぱラインハルトは男前だなぁ。勿論俺も手伝うからな!」

「助かる。」

短く礼を言うと俺は深々と頭を下げた。

そして俺達は三日三晩徹夜をしてエリクサーを作った。

「……これで3万本分か。」

「ラインハルト……ごめん……俺……寝る。」

ユノは届いた薬草全てを煎じ終えると、とうとうダウンした。

「それでも足りねぇな。」

10万人単位で前線に出ていると聞く。こんな量では全く足りない。

するとユノががばっと最後の力を振り絞るかのように起き上がった。

「誰がこれで終わりって言った?これから毎日届くからな!1ヶ月だ!」

まるで俺を断罪するかの様に指を指しそう言うとまたバタっと倒れた。

「……おいおいマジかよ。あの人達どんだけ働きもんなんだ。」

両手で顔を覆い笑いを噛み締めると、天を仰ぐように感謝した。そしていつの間にか俺もそのまま眠りについていた。



しおりを挟む
感想 128

あなたにおすすめの小説

記憶を無くしたら家族に愛されました

レン
BL
リオンは第三王子で横暴で傲慢で侍女や執事が少しでも気に入らなかったら物を投げたり怒鳴ったりする。家族の前でも態度はあまり変わらない… 家族からも煩わしく思われたていて嫌われていた… そんなある日階段から落ちて意識をなくした…数日後目を覚ましたらリオンの様子がいつもと違くて…

普段「はい」しか言わない僕は、そばに人がいると怖いのに、元マスターが迫ってきて弄ばれている

迷路を跳ぶ狐
BL
全105話*六月十一日に完結する予定です。 読んでいただき、エールやお気に入り、しおりなど、ありがとうございました(*≧∀≦*)  魔法の名手が生み出した失敗作と言われていた僕の処分は、ある日突然決まった。これから捨てられる城に置き去りにされるらしい。  ずっと前から廃棄処分は決まっていたし、殺されるかと思っていたのに、そうならなかったのはよかったんだけど、なぜか僕を嫌っていたはずのマスターまでその城に残っている。  それだけならよかったんだけど、ずっとついてくる。たまにちょっと怖い。  それだけならよかったんだけど、なんだか距離が近い気がする。  勘弁してほしい。  僕は、この人と話すのが、ものすごく怖いんだ。

【完結】弟を幸せにする唯一のルートを探すため、兄は何度も『やり直す』

バナナ男さん
BL
優秀な騎士の家系である伯爵家の【クレパス家】に生まれた<グレイ>は、容姿、実力、共に恵まれず、常に平均以上が取れない事から両親に冷たく扱われて育った。  そんなある日、父が気まぐれに手を出した娼婦が生んだ子供、腹違いの弟<ルーカス>が家にやってくる。 その生まれから弟は自分以上に両親にも使用人達にも冷たく扱われ、グレイは初めて『褒められる』という行為を知る。 それに恐怖を感じつつ、グレイはルーカスに接触を試みるも「金に困った事がないお坊ちゃんが!」と手酷く拒絶されてしまい……。   最初ツンツン、のちヤンデレ執着に変化する美形の弟✕平凡な兄です。兄弟、ヤンデレなので、地雷の方はご注意下さいm(__)m

結婚初夜に相手が舌打ちして寝室出て行こうとした

BL
十数年間続いた王国と帝国の戦争の終結と和平の形として、元敵国の皇帝と結婚することになったカイル。 実家にはもう帰ってくるなと言われるし、結婚相手は心底嫌そうに舌打ちしてくるし、マジ最悪ってところから始まる話。 オメガバースでオメガの立場が低い世界 こんなあらすじとタイトルですが、主人公が可哀そうって感じは全然ないです 強くたくましくメンタルがオリハルコンな主人公です 主人公は耐える我慢する許す許容するということがあんまり出来ない人間です 倫理観もちょっと薄いです というか、他人の事を自分と同じ人間だと思ってない部分があります ※この主人公は受けです

分厚いメガネ令息の非日常

餅粉
BL
「こいつは俺の女だ。手を出したらどうなるかわかるよな」 「シノ様……素敵!」 おかしい。おかしすぎる!恥ずかしくないのか?高位貴族が平民の女学生に俺の女ってしかもお前は婚約者いるだろうが!! その女学生の周りにはお慕いしているであろう貴族数名が立っていた。 「ジュリーが一番素敵だよ」 「そうだよ!ジュリーが一番可愛いし美人だし素敵だよ!!」 「……うん。ジュリーの方が…素敵」 ほんと何この状況、怖い!怖いすぎるぞ!あと妙にキモい 「先輩、私もおかしいと思います」 「だよな!」 これは真面目に学生生活を送ろうとする俺の日常のお話

寄るな。触るな。近付くな。

きっせつ
BL
ある日、ハースト伯爵家の次男、であるシュネーは前世の記憶を取り戻した。 頭を打って? 病気で生死を彷徨って? いいえ、でもそれはある意味衝撃な出来事。人の情事を目撃して、衝撃のあまり思い出したのだ。しかも、男と男の情事で…。 見たくもないものを見せられて。その上、シュネーだった筈の今世の自身は情事を見た衝撃で何処かへ行ってしまったのだ。 シュネーは何処かに行ってしまった今世の自身の代わりにシュネーを変態から守りつつ、貴族や騎士がいるフェルメルン王国で生きていく。 しかし問題は山積みで、情事を目撃した事でエリアスという侯爵家嫡男にも目を付けられてしまう。シュネーは今世の自身が帰ってくるまで自身を守りきれるのか。 ーーーーーーーーーーー 初めての投稿です。 結構ノリに任せて書いているのでかなり読み辛いし、分かり辛いかもしれませんがよろしくお願いします。主人公がボーイズでラブするのはかなり先になる予定です。 ※ストックが切れ次第緩やかに投稿していきます。

悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?

  *  ゆるゆ
BL
王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。 悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう! せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー? ユィリと皆の動画をつくりました! インスタ @yuruyu0 絵も動画もあがります。ほぼ毎日更新! Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。動画を作ったときに更新! プロフのWebサイトから、両方に飛べるので、もしよかったら! 名前が  *   ゆるゆ  になりましたー! 中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー! ご感想欄 、うれしくてすぐ承認を押してしまい(笑)ネタバレ 配慮できないので、ご覧になる時は、お気をつけください!

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました

まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。 性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。 (ムーンライトノベルにも掲載しています)

処理中です...