上 下
86 / 118
番外編

84 悪党の恋4

しおりを挟む
気が付くと感動にうちひしがれた様子の王子が目の前にいた。

「カイン、大事にする。」

いや、ケツの穴痛えし、大事にしてねぇから。お前この野郎、俺に何しやがった。話したいのに声が枯れて何も言えねぇ。

俺はなぁ……ケツは、ケツだけは守ってきたんだよ。それが、それを……ポロポロと涙が出てきて止まらなかった。

「ああ、カイン。泣くほど喜んでくれるなんて。そんなに俺の事を好きだったんだな。苦しませて悪かった。……俺はお前を抱いて気付いた。……俺もお前が好きだ。……二人で幸せになろう。」

ならねぇし!と口をパクパクさせると舌を入れられ貪りつかれた。言っとくけど、こんなキスしたら、バニラ嬢引くからな!俺は悔しさで泣きながら王子の胸を叩いた。

その日から昼間の俺と王子の逢瀬が始まった。たまに夜まで持ち越して来る時もあって、長引いてドロドロに蕩けた体を明け方まで何度も突かれた時は泣きながら許してと懇願した。

夜になり王子が居なくても体に情事の後が色濃く残りあまりの気だるさに何もする気がおきず、ただ寝て過ごした。

「――えと、つまり、王子は俺の事が好きで犯したんだっけ?」

辛うじて体力が残り時間があった時に聞いてみたら「カイン照れているのか?お前が俺を好きだから抱いて欲しいと言ったのではないか……あの時のお前、震えていて可愛かったな。……もちろん今のお前も可愛い。」

俺が睨むと勘違いして慌てて訂正する。

「そうかぁ……(昼間の)俺、王子の事好きなのかぁ」

王子はまだ犯り足りないのか欲情した赤い瞳で俺を舐めるように見つめた。

「初めて好きだと言われた時は考えた事もなかったから驚いたが、お前が親友として大事だったし真剣に考えた。……だから沢山待たせてしまって悪かった。」

そう言って王子は俺に手を伸ばした。

はぁ?この俺の癖に一回で落とせないとか――

伸ばされた王子の手を取りそれに口付けしながら瞳にかかる前髪の奥から王子を見つめた。

「王子、俺をあんたのもんに、して?」

この俺が片思い?ちゃんちゃらおかしい、ヘソで茶を沸かすのかってんの。

王子の自分が優位だという態度が明らかに変わる。

――まぁ、獣のように貪りつかれたのは自業自得だ。
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

片思いの相手に偽装彼女を頼まれまして

恋愛 / 完結 24h.ポイント:1,883pt お気に入り:14

異世界迷宮のスナイパー《転生弓士》アルファ版

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:177pt お気に入り:584

【連載】異世界でのんびり食堂経営

BL / 連載中 24h.ポイント:21pt お気に入り:46

腹黒上司が実は激甘だった件について。

恋愛 / 完結 24h.ポイント:1,022pt お気に入り:139

俺を裏切り大切な人を奪った勇者達に復讐するため、俺は魔王の力を取り戻す

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:5,205pt お気に入り:93

【完結】転生後も愛し愛される

恋愛 / 完結 24h.ポイント:631pt お気に入り:860

【完結】選ばれない僕の生きる道

BL / 完結 24h.ポイント:177pt お気に入り:1,877

処理中です...