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狩人の矜持
第1話
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鬱蒼と茂る木々の中で1人の青年が息を潜めていた。辺りは不気味なほどに静まり返っていて物音立てれば目立つほど緊張感に包まれている。息を潜めている青年は漆黒の髪に紫色の瞳をしており、鼻筋も通った綺麗な容姿をしていた。腰には直剣を携えているが、剣身が無く柄だけである。青年は息を潜め何かから気づかれないように待ち構えていた。
(この辺りに奴等は来るはず)
青年が心の中で呟いた後、不気味な鳴き声が辺りに響いた。
「グォォォォォォォォォ」
その瞬間、何かが近くまで駆けてくる音が聞こえてきた。青年は腰に携えていた剣身の無い直剣に手を伸ばした。
「グガガガガガガ」
やってきたのは全身が黒い毛で覆われた4体の獣であった。瞳孔のない白い目で大きく鋭い歯を剥き出しにしている。剥き出しの歯からは唾液を垂らしており、飢えているのがその様子から分かった。4体の獣の後ろから更に大きな獣が辺りに足音を大きく響かせながら近くまで歩いてきていた。
(全部で5体、群れているか・・・)
大きな獣の口には人間らしきものが咥えられていた。大きな獣は歯を立て噛み砕くと骨が割れるような音が辺りに鈍く響く。噛み砕かれて胴体から切り離された腕や脚に4体の獣が群がり、割れ先にと食らい始めた。それ以外にも獣たちの周辺には人間の腕や足と思われる部位が無惨に食い散らかされている。
(逃げ遅れた人間か・・・)
恐らく近くにある町の住人だろう、と青年は考えた。町はこの5体の獣たちに襲われ壊滅されていたのだった。生き残った町の人間も僅かだと青年は耳にしていた。
(数では圧倒的に不利、短期決戦で臨むしかないな)
青年は木々のなかから出て獣たちの前に立つ。獣たちは食べていた人間の残骸から口を離し、大きな唸り声をあげて今にも青年に襲い掛かろうとしていた。
「グァァァァァァ」
先ほど人間を食らっていた口からは唾液と血液を垂らしている。大きな獣が一際大きく唸ると、4体の獣たちが一斉に襲いかかってきた。
「お前たちが襲った町の人間と同じだと思うなよ」
青年が獣たちに言い放つと、剣身の無い直剣を手に持ち振るわせる。すると、青年の目の前で何かが怪しく光りだす。勢いよく突進してきた4体の獣たちは止まることが出来ずにぶつかると、一斉に身体を震わせて苦しさから鳴き声をあげた。
「ギャイン!」
4体の獣たちが次々に倒れていき、動かなくなった。4体の獣たちは感電死していた。大きな獣が一歩後退りをして青年を警戒し始める。
「どうした、襲ってこないのか?」
青年が言うと目の前で怪しく光っていた何かが無くなり、手に持っていた剣身の無い直剣に集まる。すると、剣身が元に戻っていた。青年が持っていた直剣は多節剣であり、獣たちがここに来る前に事前に仕掛けていたのだった。更に4体の獣たちが突進してきた際、剣身に雷属性の魔法を纏わせることで、接触した敵に外傷と感電を同時にさせるという技を見せたのだ。
「グォォォォォォォ」
大きな獣が鳴くと、勢いよく青年へと突進してくる。青年は多節剣を震わせると鞭のようにしなりながら大きな獣へと攻撃する。しかし、大きな獣は攻撃を避けて突進しながら大きな口を開けて青年の身体に噛みつこうとしていた。
「っく、、、!」
青年は横に転がり寸前で回避し、今度は大きな獣の後ろ足を多節剣を震わせて攻撃する。攻撃が命中すると大きな獣は痛みに唸り声をあげた。
「ギャァォォォォ!」
後ろ足を攻撃をされたことで大きな獣の動きが一気に鈍くなる。青年はトドメを刺すために多節剣を震わせて距離を伸ばし、大きな獣の首元に剣身を巻き付かせた。
「グァァァァァァ」
大きな獣は首元に巻き付かれた剣身から逃れようと身体を大きくばたつかせる。しかし、身体をばたつくほど首元に巻き付いた剣身が食い込み大きな獣をじわじわと傷つかせていた。
「これで終わりだ」
青年が言うと、多節剣を一気に引き寄せ大きな獣の首元に巻き付かれていた剣身が刃を立てて一気に切り刻んだ。
「ギャウウッ!」
大きな獣が鳴き声をあげ地面に倒れた。首元からは獣の血が溢れて地面に血溜まりを作っていた。
「ふぅ、、、一先ず完了だな」
青年は大きな獣が息絶えたことを確認してその場をあとにした。
青年の名は「セツナ」、魔獣や咎人と呼ばれる異形の存在を狩る狩人であった。
戦と繁栄の神マグムスを崇拝する国家フィアリッヒ王国。この国では人間の血肉を喰らう魔獣と血の呪いを受けた者の成れの果てである咎人の存在によって、脅威に晒されていた。王都や都市部は騎士団に守られているが町や村では騎士団が行き届かず、民間により設立された自警団が守っているが強大な力を持つ魔獣や咎人に対抗するには限界があった。そのような魔獣や咎人を狩ることを生業としている狩人は、常に死と隣りあわせの環境で戦っている。今しがた5体の魔獣を1人で倒したセツナも狩人の1人であった。
(この辺りに奴等は来るはず)
青年が心の中で呟いた後、不気味な鳴き声が辺りに響いた。
「グォォォォォォォォォ」
その瞬間、何かが近くまで駆けてくる音が聞こえてきた。青年は腰に携えていた剣身の無い直剣に手を伸ばした。
「グガガガガガガ」
やってきたのは全身が黒い毛で覆われた4体の獣であった。瞳孔のない白い目で大きく鋭い歯を剥き出しにしている。剥き出しの歯からは唾液を垂らしており、飢えているのがその様子から分かった。4体の獣の後ろから更に大きな獣が辺りに足音を大きく響かせながら近くまで歩いてきていた。
(全部で5体、群れているか・・・)
大きな獣の口には人間らしきものが咥えられていた。大きな獣は歯を立て噛み砕くと骨が割れるような音が辺りに鈍く響く。噛み砕かれて胴体から切り離された腕や脚に4体の獣が群がり、割れ先にと食らい始めた。それ以外にも獣たちの周辺には人間の腕や足と思われる部位が無惨に食い散らかされている。
(逃げ遅れた人間か・・・)
恐らく近くにある町の住人だろう、と青年は考えた。町はこの5体の獣たちに襲われ壊滅されていたのだった。生き残った町の人間も僅かだと青年は耳にしていた。
(数では圧倒的に不利、短期決戦で臨むしかないな)
青年は木々のなかから出て獣たちの前に立つ。獣たちは食べていた人間の残骸から口を離し、大きな唸り声をあげて今にも青年に襲い掛かろうとしていた。
「グァァァァァァ」
先ほど人間を食らっていた口からは唾液と血液を垂らしている。大きな獣が一際大きく唸ると、4体の獣たちが一斉に襲いかかってきた。
「お前たちが襲った町の人間と同じだと思うなよ」
青年が獣たちに言い放つと、剣身の無い直剣を手に持ち振るわせる。すると、青年の目の前で何かが怪しく光りだす。勢いよく突進してきた4体の獣たちは止まることが出来ずにぶつかると、一斉に身体を震わせて苦しさから鳴き声をあげた。
「ギャイン!」
4体の獣たちが次々に倒れていき、動かなくなった。4体の獣たちは感電死していた。大きな獣が一歩後退りをして青年を警戒し始める。
「どうした、襲ってこないのか?」
青年が言うと目の前で怪しく光っていた何かが無くなり、手に持っていた剣身の無い直剣に集まる。すると、剣身が元に戻っていた。青年が持っていた直剣は多節剣であり、獣たちがここに来る前に事前に仕掛けていたのだった。更に4体の獣たちが突進してきた際、剣身に雷属性の魔法を纏わせることで、接触した敵に外傷と感電を同時にさせるという技を見せたのだ。
「グォォォォォォォ」
大きな獣が鳴くと、勢いよく青年へと突進してくる。青年は多節剣を震わせると鞭のようにしなりながら大きな獣へと攻撃する。しかし、大きな獣は攻撃を避けて突進しながら大きな口を開けて青年の身体に噛みつこうとしていた。
「っく、、、!」
青年は横に転がり寸前で回避し、今度は大きな獣の後ろ足を多節剣を震わせて攻撃する。攻撃が命中すると大きな獣は痛みに唸り声をあげた。
「ギャァォォォォ!」
後ろ足を攻撃をされたことで大きな獣の動きが一気に鈍くなる。青年はトドメを刺すために多節剣を震わせて距離を伸ばし、大きな獣の首元に剣身を巻き付かせた。
「グァァァァァァ」
大きな獣は首元に巻き付かれた剣身から逃れようと身体を大きくばたつかせる。しかし、身体をばたつくほど首元に巻き付いた剣身が食い込み大きな獣をじわじわと傷つかせていた。
「これで終わりだ」
青年が言うと、多節剣を一気に引き寄せ大きな獣の首元に巻き付かれていた剣身が刃を立てて一気に切り刻んだ。
「ギャウウッ!」
大きな獣が鳴き声をあげ地面に倒れた。首元からは獣の血が溢れて地面に血溜まりを作っていた。
「ふぅ、、、一先ず完了だな」
青年は大きな獣が息絶えたことを確認してその場をあとにした。
青年の名は「セツナ」、魔獣や咎人と呼ばれる異形の存在を狩る狩人であった。
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