Bloodpray

イクミ

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狩人の矜持

第2話

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 5体の魔獣を倒した後、愛用の武器の手入れをする。魔獣の血は濃くてドロドロしているから、狩りが終わってすぐに手入れをしないと切れ味が落ちて錆びついてしまうからだ。

(さっきは危なかったな・・・)

 あの大きな魔獣が突進してきた際、咄嗟に避けていなければ致命傷を負っていただろう。そう考えると狩人は常に死と隣りあわせだと実感する。狩人になってもう2年ほど経つが、自分がダグラス一派に所属してからは死んだ仲間の人数の方が圧倒的に多い。昔馴染みの狩人も片手で数えられるほどしかいない。それほどまでに狩人というのはいつ死んでもおかしくない環境なのだ。自分がまだ生き残っているのは運が良いのか向いているのか、どちらにせよ奇跡だと考えた。

(伝令鴉で報告しないと)

 狩人は仲間たちとの連絡に伝令鴉と呼ばれる連絡魔法を使用してやり取りをする。任務を受ける際も伝令鴉を通じて行うため普段は仲間たちと会う機会も少ない。規模の大きい任務になると4人組になることもあるが、そういった機会も普段はないため狩人の大半は1人か2人組で行動している。

(死体の後処理も終わったしそろそろ移動するか)

 無惨に食い殺された町の住人達の後処理を行わないと新たな魔獣を引き寄せてしまうため必ずしなければならない。この後処理がいつも苦手であまりやりたくない。引きちぎられた胴体や腕や足などを見るのは見慣れたが、頭部が残っていると大抵は苦痛の表情や絶望した表情のまま息絶えているからだ。今まで後処理した者達の表情が思い浮かび、やるせない気持ちになったがもう思い出さないように頭の中から消し去りその場を後にした。


 魔獣を狩り終えてその場を後にした私は、近くにある大きな町へ到着した。とりあえず一休みするために宿屋へと向かう。この町は比較的大きいため、自警団も多く騎士団も少数だが在駐している。王都や都市部には及ばないがそれでも安全な方だと言えるだろう。宿屋へと着いて受付に向かうと恰幅の良い女性が出迎えた。

「あら、いらっしゃい!宿をお探しかい?」

「ああ、しばらく部屋を借りたいんだが空いているか?」

「もちろん空いてるわよ!どのくらい泊まるつもりだい?うちは先に宿泊料を払ってもらうんだけど—」

「ここの宿は通るか?」

 そう言って宿屋の女性に紋章を見せると、表情が一変する。

「あんた、狩人様だったのかい!しかもダグラス一派の!もちろん通りますとも、こんな宿でも良ければ好きなだけ居てくれて構わないよ!」

「ありがとう、それは助かる。」

「あんた綺麗な顔だから狩人様とは最初は思わなかったよ!良い部屋を用意するからしばらく待ってくれないかい?向かいに酒場があるから先に夕飯でも食べてきちゃいな!」

「気を遣ってもらい感謝する。酒場で食事を終えたらまたこちらに来る。」

 狩人は必ずどこかの一派に入らなけばいけない決まりがある。一派へと入った際に紋章を与えられ、町や都市部などでは身分証明のようなものになり、宿や食事などを無料で受けれる。常に死と隣り合わせにある狩人の数少ない恩恵と言えるだろう。

 宿屋を出て向かいにある酒場へと入ると町の人々で賑わっていた。カウンターに座ると店の主がこちらへ来て注文を取りに来た。

「いらっしゃい!初めて見る顔だが、ここにはどいつからのご紹介で?」

「向かいにある宿屋の女性にここを紹介された。食事を頼みたいんだが、、。」

「ああ、宿屋の女将か!そいつは失礼!んで、どんなの頼みますかい?肉でも魚でもありますぜ!」

「それなら魚を焼いたものを頼む。それから、私はこういう者なんだが代金は払わなくて大丈夫か?」

 宿屋の女性に見せた紋章を店の主にも見せた。

「ダグラス一派の狩人様か!もちろんお代は不要ですぜ!とびっきり良い魚用意するから酒でも飲んで待っててくれ!」

「ああ、ありがとう。」

 料理が出来るまでの間、店の主から出された酒に手を伸ばし一口飲む。苦い酒は飲めないと勝手に思われたのかやけに甘い風味のする酒で思わず顔を顰める。しばらく酒を飲んで料理を待っていると大柄な男がこちらへ近づいてきた。

「兄ちゃん、随分可愛い酒飲んでるじゃねえか!大人の味がする酒は嫌いなんかい?」

 面倒くさそうな奴に絡まれたなと思い心の中でげんなりしたが、適当に受け流してやり過ごそうと決め返事をした。

「いや、店の主人に勝手に出された酒だ。」
 
「そうかよ!それは可哀想になあ!よかったら酒奢ってやるからこっちに来て一緒に楽しもうぜ!」

「遠慮しておく。1人でゆっくり食事したいからな。」

「そんなつれないこと言うなよ!1人は寂しいだろ?な?」

「1人には慣れてるし落ち着くから問題ない。」

「そんな悲しいこと言うなって!それにあんた、ここら辺じゃ見ないくらい綺麗な顔してるからさ、こっちは気になってんだよ。だから仲良くしようぜ!」

 そう言って無理矢理肩を組まれた瞬間、この男に対して不快感が自分の中に生まれてくるのを感じた。

「気安く私に触らないでくれないか。」

「まあそう言うなって!あっちで飲もうぜ!」

 強引に男が元いた席に連れていかせようとしているのに我慢の限界を迎えた私は、この男の首元に剣を突きつけて脅してやろうかと考えついた。
 その時、1人の男が仲裁に入った。
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