毒にも薬にもなりたくないっ

新堂茶美

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「私を魔石にでも変えるつもりか」
 
迎えに来た馬車、周りの人の身なりや立ち居振る舞い、お城のデカさ、何より偉い人に会うというプレッシャーでガチガチに固まった身体を、ある意味一瞬で解いてくれたのが、目の前にいるミケラウス王子だ。
 
対面で呆けている少女はスイレン、16歳。
 
島生まれ島育ち、人里離れた断崖絶壁の家に住む、生粋の田舎娘である。
父譲りの水色の瞳と、母譲りの白銀色の髪は、田舎娘としては珍しいが、スイレン自身は誇らしく思っており、人目は気にしていない。
 
母から続く薬草やポーション、手作りの雑貨を売り、たまに軽い訪問診察など、何でも屋のような生業で日々を過ごしている。
国へ行けば高給取りになれるほどの治癒に長けた魔力を持っているが、目立ちたくはない。それに今の仕事は気に入っている。
大きな街が遠い村人達には重宝して貰えて、村の皆は優しくて、採れた魚や収穫した芋などのお裾分けも貰えて、毎日をお腹いっぱい、元気いっぱいに生きている。
 
そんな田舎娘が、何故こんな場所にいるのかというと……私もよく分かっていない。
 
朝起きたら、ベッドの横で正座をしている友人がいた。
近くの森で遭難していたところを助けて以来、勝手に家に遊びに来るようになり、勝手に心の友呼ばわりするようになった、エルフのおじさんだ。
 
「知り合いの息子さんがね、呪いに侵されたみたいでね! それでね……! ねっ……? お願いしますぅ」
 
正座をしているせいで床にまで着いてしまっている御自慢のサラサラの長い金髪も気に留めず、おじさんの癖に詐欺な美しい顔面の前で両手を組み、ウルウルの紫色の瞳を近づけてくる。
 
(あ、絶対面倒臭いやつだ)
 
何処かのお姫様が怪しい薬を作って想い人を殺めかけているとか、子供のイタズラで封印した結界が解かれたとか。
脳裏に苦い思い出が過ぎり、冷や汗が出る。このおじさんがお願いをする時は、碌なことがない。
 
ベッドのシーツに包まりイヤイヤしていたら、いつの間にかおじさんにシーツごと抱えられ、おじさんの知り合いが住むという国の別荘まで、転移で飛ばされて今に至る。
 
「あー、ビルガメシアの城は結界があって転移できないからね。ごめんね。お便りだけ送っておきます。中々に見目のいい王子様ですよー」
 
なんて言いながら置き去りにされたため、本当によく分からないのだ。



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