毒にも薬にもなりたくないっ

新堂茶美

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6.

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ニールの後ろを挙動不審にキョロキョロしながら着いていき、執務室のようなところに案内される




黒い大きな執務机の真ん中に、背もたれの大きな黒い椅子があり、そこにゆったりと座る、まさに魔王のような青年が居た

やけに胸元の開いた白の布地は庶民にも分かるほど上質で、袖や肩口には赤や青、緑と沢山の糸で細やかな刺繍が施されている

片肘を肘掛に着き手の甲をこめかみに当て、斜めの目線で此方を見ている。たぶん

私もコハクも同じように顔を傾けてしまっていたが気にしないでほしい


何故なら、首元はスッキリとしているのに
それ前見えてるんですか?
と鼻先辺りで綺麗に揃えられた金色の前髪が視界を防いでいるのだ


不意に前髪の隙間から、チラリと青い虹彩が黒く縦長の瞳孔を際立たせている瞳と目が合った

あ、見えてるんですね

いやいやいやいや、どう見ても睨んでいる



それよりも!! なんだこいつ!! 聞いてたよりもピンピンしてるじゃないか!!!


そうして一気に緊張が何処かへ飛んで行ったのだ








「おいっ! 聞いてるのか?」


眉間に皺を寄せていそうな声音の王子にハッと我に返り、ポカンと開けたままだった口を閉じ、コハクの腰を抱いて両膝をついて挨拶をする

「は、はいっ! スイレンと申します。この子は家族で助手のコハクです。偉大な竜国の尊い王子殿下がのろ……病を患い、治療師を探しているとの事で馳せ参じた次第でございます」


「お前は人間だろう……」


「はい!! 人間です!! ですが……他族の治療も可能です……!」


「ふざけているのか? 人間……それもこんなチンチクリンなガキに何が出来ると言う! 解呪も治癒も要らん! 大体あのお節介爺、毎回要らぬと言っているのに手紙だけ寄越しやがって!!!!!」


「ですよねー! あの人、私の事、便利な道具か何かと思ってるんじゃないですかね!! 不要ということでしたら帰っていいですか?」

わかるわー、お節介焼くなら自分でやってくれって話だよ
もうヤケクソだ、要らないならもういいだろう、早く帰りたい



近くにいたニールが呆れ顔になっている

その綺麗な赤い髪をグシャグシャっと掻いて、大袈裟に溜息を吐いた
青の瞳がスイレンを映す
笑っているのに、何故かおっかない

周りにいる使用人達も青ざめている


えっ? 私が悪いの? 大体呼び出したのはそっちでしょ?? 訳の分からない状態にやり場のない苛立ちが募る



「ミケラウス殿下、発言宜しいでしょうか」

「なんだ」

「ありがとうございます。私の腕を見て頂けますか?」


ニールが袖を捲り出す

え!!! また切るの?

と、ヒヤヒヤしたが、鱗のある部分を王子に見せた


「怪我か? それがなんだ。その小娘にやられたのか?」

使用人達は鱗を見て驚いたような顔をしているが、ミケラウスは平然としている。竜族の傷跡って珍しいのかな

使用人の視線に気付いたニールは、1つ咳をして、目配せだけで使用人を下がらせた


あっという間に、スイレン、コハク、ミケラウス、ニールの4人だけになる


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