毒にも薬にもなりたくないっ

新堂茶美

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11.

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起きる様子の無いミケラウスの寝室の隣の執務室でニールと向かい合い、朝の様子を伝える



「ハハッ、コハクさんは最強の護衛ですね。下手したら、私でも敵わないかもしれません」


「やめてくださいっ! コハクはそんなんじゃないですから! ちょっとお転婆かもしれませんけど」


私の膝枕で眠るコハクをマジマジと見つめ出したニールの顔は真剣だ

冗談じゃない。お転婆で済ませられるわけがないし、これ以上、目の届かない所に行かせる訳にもいかないコハクの話題を慌てて逸らす


「それよりも! 王子様! 王子様の事なんですけど、この呪いは具体的に何時頃から、どんな症状が起きたりするんですか?」


「……そうですね……大きな症状としては1つはストレスを感じたり高度な魔術を行使すると鼻や口から出血を起こし、身体の痛み、発熱で数日寝込みます。魔力封じの呪術かと……

2つ目は亡くなった母君や女性への畏怖嫌厭ですね。これは魅了の呪術による弊害かとも思われます。現在は男の使用人を増やし、城内や出席する会合には魅了防呪の魔法石や魔道具を設置してはいますが……落ち着いて見えても心まではそう簡単にはいかないようです……会食や茶会、国王の前でさえ、ふとした時の会話に母君のことが出れば、味覚や視覚聴覚と言った五感が鈍くなり、心ここに在らずといった状態になってしまうのです。

原因としては直接的なことはわかっていませんが、ミケラウス殿下の母君が亡くなってからでしょうか。いや……4年程前から……ですかね。ミケラウス殿下が変わられたのは」


「そんなに前からっ?!」


「王妃様……母君が無くなる前の2年程は引きこもって居ましたので、赤子の頃から一緒にいる私が稽古や勉強相手をしていました。おかげでマナーや、私には必要のない部分の学問、女性のダンスの形まで厳しく覚えさせられましたよ……」


「そ……それはご苦労様です……」


「ですが、結局今まで女性と踊るようなことは1度もありませんでしたね。4年前まではお茶会や式典などで、同年代の少女達とも短い挨拶を交わしたり、笑顔を向けたり頻繁にされていたのですが……恐らく、魅了の呪術がかけられたのはその頃でしょう。今思うと女性の邪な視線に気付いていたのでしょうね。女性を怖がり傷付け、怯えるようになりました。赤子の頃から育ててくれた乳母や使用人関係なく、女性というものを遠ざけるようになったのです」


「魅了……王子様はおいくつですか?」


「現在18歳です。なので当時14歳、大人達は最初、思春期特有のものだとばかり言って、私の話など全く聞いてはくれませんでした。……3年前の事故が起きるまでは」




顔を歪め、膝の上で握り締めたニールの拳は真っ白だ



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