毒にも薬にもなりたくないっ

新堂茶美

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46.

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それからは式典の準備も忙しくなり、顔を合わせても上手く会話のできないふたりはギクシャクしていた。様子のおかしい二人にニールが声をかけるが、どちらも大丈夫だと言うばかり。
それでも、毎朝の診察にならない診察を欠かすことはなくミケラウスからも「明日もよろしく」と念を押された。



そして式典当日となった。いつも早い時間に起きていたはずだった。だけど、今日は使用人が慌ただしく通路を往復している。
寝坊でもしたかと思ったが、いつもの朝番の騎士がミケラウスの部屋の前に居て「おはようございます」と返ってこない挨拶をする。


「殿下のこと……感謝している」
扉を開けてもらう時に挨拶は返ってこなかったけど、挨拶よりも嬉しい言葉が返ってきた。

「失礼しまっ…………」
入室してすぐに固まってしまったスイレン。

窓の近く、そこに朝日が差し込み、日光を一身に浴びてキラキラと輝いているミケラウスがいた。真っ白な騎士服、胸元に着けた銀飾りに嵌め込まれた魔法石と同じ色の首元や手元のボタンが、何よりその金色の髪が光を反射して輝いていたのだ。


「綺麗……」

「!」

「あっ、いやっ!! かっこいいですねー!! あははは」

「あ、ああ、ありがとう」

「あとは前髪ですねー! 編み込みますっ?」

「やめろっ! だが、上げるのも嫌だな……」

「やっぱり編み込「却下」

「あははっ、体調はどうですか?」

「朝から毒だ。だがこれも最後か」

「そうですねっ」

「お前は……お前は今も帰りたいか?」

「そうですねぇ、最初は帰りたいーって思いましたけど、なんだかんだ楽しかったし温泉も気持ちいいしご飯も美味しいので大満足ですね」

「だったら、居ればいい」

「だめですよ。だめです。私はやる事が、やらなきゃいけない事があります。王子様も……みっ、ミケ王子も……ちゃんと自分のやらないといけない事があるでしょう?」

「ミケ王子か……ははっ、そうだなっ!」

そう言ってミケラウスはグシャグシャに頭を撫でる。

「あーっ、やめてくださいよっ!!」

数日間ギクシャクしていたのが嘘みたいでホッとした。 笑う声が聞けて嬉しい。 けれど、今日で最後なんだという寂しさが、足元から冷たくせり上がってくる。 しっかりと名前を呼べなかった悔しさも、伝えられないままの言葉も、全部が綯い交ぜになって、なんだか泣きそうになった。

──認めてしまえば、きっと動けなくなる。 ここに居たいと、この人の隣で笑っていたいと願ってしまえば、私が背負った「やらなきゃいけない事」を放り出してしまいそうで。

だから私は、ボサボサにされて顔にかかった前髪と一緒に、その弱さを強引に振り払った。
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