毒にも薬にもなりたくないっ

新堂茶美

文字の大きさ
59 / 71

51.

しおりを挟む
それは一瞬の出来事だった。

纏う瘴気の色を濃くしたペルシュがミケラウスの手を払い除け、抱き着いた。
ミケラウスがペルシュの肩に寄り掛かっている。


「もう……何もかもが、遅すぎる……」

青いリボンが風に吹かれて飛んでいく。

動かないミケラウスを不思議に思ったスイレンが急いで駆け寄り、ペルシュから引き剥がすとそのまま崩れ落ちていくミケラウス。腹部がじわりと赤に染まっている。

「だめよっ……しっかりしてっ」
ミケラウスを抱きしめるスイレンの身体が輝きだす。腹部から流れる血が腕を服を身体を真っ赤に染めているのに、その色すら霞んで見えるくらいに暖かな治癒の光。

ペルシュが「もう……遅い……ああ……報われる」とうわ言のように呟いているが、先程まで纏っていた瘴気が消えている。
その手に持ったナイフは真っ赤に染まっていた。スイレンがそれを視界に捉える。

「散れ」

スイレンが小さく呟いたかと思うとナイフを持つ手がペルシュの手首ごと、スッパリと切れ、消滅した。同時に手首の無くなった断面が輝く。少しの痛みも感じてこないペルシュは呆けたまま動かない。不意に首が引っ張られる感覚がして腕の中にいるミケラウスを見ると、着けていた青い魔法石のネックレスを掴んでいた。

「着けてくれたんだな。すまない。少し……借りる」

ミケラウスが魔法石を握りこむと、閃光が走り、辺りが一瞬昼間かと思うくらいに照らされた。
その瞬間、コハクがスイレンの腰を抱き、5メートルほど後ろに飛んでいた。

「せっかくじかんあげたのに。すぅのおしゃべりのほうが多かった」

「コハク! お願い! 離して!!」

「だめだよ。けがする。それにくさい」

「コハクッ!! お願いッ!! ミケラウスが死んじゃう!!」

「すぅ、あいさつしたらかえるっていっ
た」

「お願いよぅ……」

「あいつ、しぬきだよ」

「だめよっ!! 絶対だめっ」

「はぁ……すぅのばか」

コハクが腰に回した手を離すと急いでミケラウスの元へと駆け寄るスイレン。

「ミケラウスッ!!!」

スイレンの声にペルシュが我に返り、逃げ出そうとしていた。

スイレンが座り込んだまま左腕でミケラウスを抱き、右手の掌をペルシュへ向ける。

黄金色の光が溢れ出し、ペルシュの身体が重くなる。地面に押し付けられるようにして呻くペルシュを余所に、ミケラウスの腹部を確認すると出血は止まっている。
それなのに、顔面蒼白で気を失っているミケラウス。それに怪我をしたら、鱗が出てきて、回復するのではないのか。

「どういうこと……」

そのまま、魔力を流そうとするとコハクに止められる。

「すぅ、だめ。またビリビリなる。それにふれてるところもしびれてるでしょ」

「だって、もう……」

胸元の魔法石を握る。その色は無色透明。

「あいつについてたしょうき、ぜんぶもらって、とじこめてる。ふえつづけてたから……」

「それなら早く解かないと!!」

「だめ。こいつのちとまりょくがまざってるから……いきなりとけたらこのくに、こわれる。それにじかんもない」

「私の血をっ!」

「こいつはひとりで、きめたんだよ。すぅ、ひつよー?」

「やってみなきゃわからないじゃないっ……!!」

その後、戻るのが遅いと探していたニールが私達を見つけると血相を変え、大声で騎士を呼びペルシュを連行させる。
真っ赤に染まったミケラウスとスイレンも城内へと戻った。

しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

【完結】ドアマットに気付かない系夫の謝罪は死んだ妻には届かない 

堀 和三盆
恋愛
 一年にわたる長期出張から戻ると、愛する妻のシェルタが帰らぬ人になっていた。流行病に罹ったらしく、感染を避けるためにと火葬をされて骨になった妻は墓の下。  信じられなかった。  母を責め使用人を責めて暴れ回って、僕は自らの身に降りかかった突然の不幸を嘆いた。まだ、結婚して3年もたっていないというのに……。  そんな中。僕は遺品の整理中に隠すようにして仕舞われていた妻の日記帳を見つけてしまう。愛する妻が最後に何を考えていたのかを知る手段になるかもしれない。そんな軽い気持ちで日記を開いて戦慄した。  日記には妻がこの家に嫁いでから病に倒れるまでの――母や使用人からの壮絶な嫌がらせの数々が綴られていたのだ。

七日後に神罰が落ちる。上層部は「下を切り捨てろ」と言った——私は全員を逃がす

蒼月よる
ファンタジー
七日後、この港に神罰が落ちる。 追放された元観測士イオナだけが、その事実を知っていた。 しかも災害は自然現象ではない——誰かが、意図的に引き起こそうとしている。 港の上層部はすでに手を打っていた。「下層区画を緩衝被害区として切り捨てる」秘密契約。被害を最小限に見せかけ、体制を守る冷徹な計画だ。 イオナは元護送隊長ガルム、荷運び組合長メラとともに動き出す。 犯人を暴き、証拠を公開し、住民を逃がし、工廠を止める——すべてを七日で。 被害を「選ぶ」管理か、全員を「残す」運用か。 追放観測士の、七日間の港湾カウントダウン・サスペンス。 この作品は以下の箇所にAI(Claude Code)を利用しています。 ・世界観・設定の管理補助 ・プロット段階の壁打ち ・作者による執筆後の校正

婚約破棄された公爵令嬢は虐げられた国から出ていくことにしました~国から追い出されたのでよその国で竜騎士を目指します~

ヒンメル
ファンタジー
マグナス王国の公爵令嬢マチルダ・スチュアートは他国出身の母の容姿そっくりなためかこの国でうとまれ一人浮いた存在だった。 そんなマチルダが王家主催の夜会にて婚約者である王太子から婚約破棄を告げられ、国外退去を命じられる。 自分と同じ容姿を持つ者のいるであろう国に行けば、目立つこともなく、穏やかに暮らせるのではないかと思うのだった。 マチルダの母の祖国ドラガニアを目指す旅が今始まる――   ※文章を書く練習をしています。誤字脱字や表現のおかしい所などがあったら優しく教えてやってください。    ※第二章まで完結してます。現在、最終章をゆっくり更新中です。書くスピードが亀より遅いので、お待たせしてすみませんm(__)m    ※小説家になろう様にも投稿しています。

好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】

皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」 「っ――――!!」 「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」 クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。 ****** ・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。

[完結] 邪魔をするなら潰すわよ?

シマ
ファンタジー
私はギルドが運営する治療院で働く治療師の一人、名前はルーシー。 クエストで大怪我したハンター達の治療に毎日、忙しい。そんなある日、騎士の格好をした一人の男が運び込まれた。 貴族のお偉いさんを魔物から護った騎士団の団長さんらしいけど、その場に置いていかれたの?でも、この傷は魔物にヤられたモノじゃないわよ? 魔法のある世界で亡くなった両親の代わりに兄妹を育てるルーシー。彼女は兄妹と静かに暮らしたいけど何やら回りが放ってくれない。 ルーシーが気になる団長さんに振り回されたり振り回したり。 私の生活を邪魔をするなら潰すわよ? 1月5日 誤字脱字修正 54話 ★━戦闘シーンや猟奇的発言あり 流血シーンあり。 魔法・魔物あり。 ざぁま薄め。 恋愛要素あり。

私ですか?

庭にハニワ
ファンタジー
うわ。 本当にやらかしたよ、あのボンクラ公子。 長年積み上げた婚約者の絆、なんてモノはひとっかけらもなかったようだ。 良く知らんけど。 この婚約、破棄するってコトは……貴族階級は騒ぎになるな。 それによって迷惑被るのは私なんだが。 あ、申し遅れました。 私、今婚約破棄された令嬢の影武者です。

【完結】それはダメなやつと笑われましたが、どうやら最高級だったみたいです。

まりぃべる
ファンタジー
「あなたの石、屑石じゃないの!?魔力、入ってらっしゃるの?」 ええよく言われますわ…。 でもこんな見た目でも、よく働いてくれるのですわよ。 この国では、13歳になると学校へ入学する。 そして1年生は聖なる山へ登り、石場で自分にだけ煌めいたように見える石を一つ選ぶ。その石に魔力を使ってもらって生活に役立てるのだ。 ☆この国での世界観です。

【完結】ゲーム開始は自由の時! 乙女ゲーム? いいえ。ここは農業系ゲームの世界ですよ?

キーノ
ファンタジー
 私はゲームの世界に転生したようです。主人公なのですが、前世の記憶が戻ったら、なんという不遇な状況。これもゲームで語られなかった裏設定でしょうか。  ある日、我が家に勝手に住み着いた平民の少女が私に罵声を浴びせて来ました。乙女ゲーム? ヒロイン? 訳が解りません。ここはファーミングゲームの世界ですよ?  自称妹の事は無視していたら、今度は食事に毒を盛られる始末。これもゲームで語られなかった裏設定でしょうか?  私はどんな辛いことも頑張って乗り越えて、ゲーム開始を楽しみにいたしますわ! ※紹介文と本編は微妙に違います。 完結いたしました。 感想うけつけています。 4月4日、誤字修正しました。

処理中です...