上 下
81 / 138
第16章  笑顔のラルフ

使用人ゼーラルと人間ラルフ 2

しおりを挟む
 そんなある日、ラルフの行方が分からなくなったと城内が騒ぎ出すという事件が起きた。
 ゼーラルは魔王から呼び出され、何か知らないのか?と何度も問われたが、ゼーラルにとっては意味のない質問だった。
 何故ならゼーラルにとってこの状況がある意味好都合であると感じていたからだ。たがだか、人間一人が居なくなる事に何故そこまで必死にならなくてはならないのか?ラルフのそばに1番長く居たゼーラルだったが、この状況になってもどうでもいいとしか思えなかった。
 だが、魔王直々に託された任務を疎かにする事も出来ない為、仕方なしにラルフを探す事にした。

(…“無事"にではなくても構わないだろう。)

 そんな風にゼーラルはラルフを探し始めた。そうして何人も、幾つの村の民も、魔界総出で探し続け一日が終わろうとしていた。
 一日中、全ての仕事を捨て去りラルフ捜索に駆り出された人や自ら探すと言い出した人も居た。何人もがただの人間を探す事に必死になった。
 何故それほどまでに必死になるのか?
 未だにゼーラルは分からず仕舞いだが、それでもと一応探していた。
 そうした中、小さな魔族の子供が近くの森から一人で帰って来たと聞いた。
 どうやら、ラルフ捜索中に何人かの子供が親の目を盗んで遊びに出てしまっていたらしい。その一人だった。
 だが、この事がラルフとゼーラルを近づける事件の幕開けだった。

「あの子は!?」

「うちの子は!?」

「まさか…あの場所は…」

「いやぁーー‼︎」

「嘘だ…うそ…だ…」

 親である彼らが慌てふためき混乱するのも無理はないだろう。何故なら子供達が遊びに行った場所は魔界で一番の危険な場所と恐れられた秘境。
 "魔獣の墓場"なのだから…
しおりを挟む

処理中です...