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第16章  笑顔のラルフ

使用人ゼーラルと人間ラルフ 3

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 魔獣の墓場。
 そこは大の大人が何百人もの隊列を組み回復薬や回復術を使える者が何十人も居なくては誰一人帰って来れない。そんな場所だ。
 そんな場所にラルフが、人間が行けるはずもない。子供達は度胸試しと遊びに使うこともある為に魔獣の墓場への入り口には必ず何人者兵が常に配備されている。だから、子供はおろか、人間でさえ誰一人として通れないはずだ。なのに、何故子供がそんな場所から帰って来たのか?謎ではあったが、今は急を要する為すぐに兵が招集された。
 オークにオーガにエルフ。悪魔付きの妖精や魔族の狼達も全ての魔族が招集された。

 だが、いくら招集を早めても結局は一日かかってしまう。そうして捜索範囲を決めたりいざという場合の戦闘配列を決めるのにまた一日かかってしまう。
 そうして捜索開始は早くて二日長くて三日後になってしまうのだ。
 それでは遅いと自ら願い出たゼーラルは一人探知魔法をその身に纏い魔獣の墓場を彷徨う。だが、誰もが恐れるにはまだ理由があった。

「これじゃぁ、迷ってしまう…くっ…」

 そう魔獣の墓場は松明を持ったとしても道も光もあてにはならない。毎日道が変わると噂の迷路に似た場所なのだ。かつての魔王は、竜の魔族で随一の力と身体の大きさだった為に魔獣の墓場全てを見渡す事が出来たらしいが、もちろんゼーラルやラルフ、普通の魔族が出来るわけも無かった。
 故にゼーラルは迷う事を恐れず声が枯れるまで叫び続け、ラルフと行方不明になった子供達を探し続けた。

「ラルフ様ーー‼︎子供達‼︎聞こえますか‼︎」

「ラルフ…ま‼︎…達‼︎……か!?」

 そうして捜索隊が来るまで独りゼーラルは探し続けた。
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