叶わぬ願いと望まぬ結末

第16章 笑顔のラルフ

使用人ゼーラルと人間ラルフ 4

　目の前に広がる光景に息を呑んだ。そしてしばらく呼吸さえままならない状態が続いてしまった。
　森の中腹辺りに広がるのは、木も無い開けた大地。この何もない光景は、誰も中腹まで入る事の出来ないこの場所は現魔王しか知り得ない場所だった。
　なぜならこの場にたどり着く者など居なかったからだ。それ程までにこの森に棲む生き物達は恐怖なのだ。
　そして、その中腹にあろう事かそれは居た。
　頭は猛獣の王である獣の風格を身体はどんな刃も術も通らない鋼鉄の四つ脚の肉体を有した幻獣、その名をライガル。
　たった一匹の遠吠えは、森を超えて遥か遠くに居る仲間達に伝わり対象を喰いつぶすとまで言われたお伽話にしか存在していないと言われていた生き物。

　そして、そいつは対象を獲物を見つけると物凄いスピードで向かって決して対象を逃さないと言われていた。
　
　ゼーラルが見た光景。
　それは、まさにライガルが獲物を対象を追い込み喰らうタイミングだった…