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第8話

ロアー本屋  1

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 バーネットを連れレミーは今の家、本屋に着くと一台の馬車が止まっていた。その周りには何事か?と噂をしながらも事実何が起きているのかを見に来た野次馬兼近隣住民がたむろしていた。

「すみません!いっつっ…あのっ!…すみ、ませんっ‼︎」

 人混みを掻き分けながら歩くが想像以上の人の数。そう簡単には通れない。それでもと声を上げながらもバーネットと家に向かう。すると前も後ろも悲鳴が上がった。中には悲鳴ではないものもあった。

「きゃー!」「彼よっ!」「目が…合っちまった…」
 
 声は様々。人を掻き分けながら進む度、幾つもの違う声が

「きゃっ…」

  悲鳴が上がったがやはりこの人数。悲鳴が誰のものかも分からない。そんな中レミーはなんとか人混みの元へと着いた。
 ふと後ろを振り向くが、一緒に居たはずの彼女の姿がない事にようやく気付いた。しかし気が付いた時にはすでに遅くレミーはバーネットどころかその他の人達が誰かも見分けられないくらいに場はもみくちゃ状態にと変わりつつあった。

「レ、レミー…あぁ…」

「バーネットっ‼︎」

 バーネットは、必死にレミーの名を呼ぶが声はどんどん人々の中へと消えてしまう。
 ならばっ!とレミーは思い切って再び集団に飛び込む。なにせ、バーネットの願いを聞いたのは私、バーネットを連れて来たのも私。なら最後までバーネットを連れてハルに会いに行かなきゃいけない。
 人を掻き分けながら再び歩くが、すでに想像を超える程の人混みと化している。

(バーネット…っ、今、今行くからっ‼︎)

 そんな中ふとレミーの右腕が引かれた。

「ひゃっ!?」

 右腕を掴みどんどん逆方向に進んで連れていかれるレミー。しかし、連れて行く人物は見えない。

「まっ、待って!バーネットが…彼女を探さなきゃ…ちょっ」

"いいから、大丈夫"

 連れて行かれる中そう聞こえた。か細い言葉と声だが、そう聞こえた気がする。何度か人の足や誰かのドレスつんのめりそうになると腕を支えてくれる。何度も何度も続くと遂にはサッと手を握られる。何処か暖かい指の感触。そして少しだけ大きく感じられる手の感触。しっかりと握ってくれる安心感。
 レミーはふと思う。

"…私…知ってる…この手…貴方…"

 手の主を言い当てそうになった。
 だが、声はまたもや人混みに消えてしまう。今言わなきゃ居なくなる。この手は離れてしまう。次いつ会えるかわからない。
 けれども何度も阻まれる声。その代わりに繋がれた手の感触と温もり。まるで今だから繋がれたような儚ささえ感じる互いの指先。気がつけば手は握手でなく互いの指に指を重ねる、離れられない特別な握り方になっていた。

 だが、レミーも手帳の主も決して離さない。
 …離したくない。そう思うから。

 そう思った矢先、指が一本ずつゆっくりと離れていく。名残惜しい様に自然とレミーは離れていく指を追いかけてしまう。

"気をつけて、またね…"

 そう言い最後の指先が離れていった。
 同時にレミーを呼ぶ声がした。

「レミーっ!良かったわ…人混みが凄いのだもの、私レミーと離れて心細かったのですよ!」
「バーネット…良かった。」
「レミー??」

 レミーは探してたバーネットに会う事が出来た。しかし代わりに"彼"が離れてしまった。
 "彼"は、バーネットに会わせる為に人混みに紛れてしまった私の手を引き戻しバーネットの側まで連れてきてくれた。

(ありがとう。連れて来てくれて)

 私はあの手の感触を温もりを忘れてはいない。それに誰の手かもう分かっている。分からない訳がかい。だってあの人しか居ない。私を連れて行く人なんか1人しか居ない。幼い頃からずっと思って居た人。バーネットから明かされたけれどやっぱり変わらない。
 あのパーティーの夜感じた温もり。離れてしまった指の温もりを確認しながらレミーは思う。間違いなく"彼"、ハルに間違いない。
 心がそう感じている。

(また、会えるよね?…ハルー。いや、ハル・ト・バーン)
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