writerS

柊彩 藍

文字の大きさ
36 / 61

作者の権限

しおりを挟む
 writerSの勢力は蒼太の狙撃の復活により優勢になりつつあった。しかし、それは蒼太の狙撃による援護ありきなのでそこが破綻してしまえば劣勢へと傾いてしまうのはwriterSだけでなく防衛省の人々まで理解していた。逆に言うと、この狙撃は相手にとって不利に傾かせる条件であることを示している。
 大柴は、荒れ狂う巨体を前に動けずにいた。そうグランドオーガが、大柴の前に立ちふさがったのである。大柴は、グランドオーガの発するオーラに怯んでしまっているのである。グランドオーガはその体格故か、強さがにじみ出ていた。そして、グランドオーガが大振りでただ金棒を振り下ろすという攻撃だけで、確実な死を悟った。その振り上げた時の風圧で家が何件かつぶれるのを目にしたからである。呼び動作だけでここまでなら実際の攻撃となると受けたら、即死。かすったとしても重症は免れないだろう。さらに完璧に避けきれたとしても、叩かれ砕かれたアスファルトによる攻撃でダメージを与えられる。それだけでもかなりのダメージを背負うことに変わりはなかった。そして、その上で、大柴は、間に合わないと理解したのだ。
 その頃、蒼太は多大なるピンチが迫ってきているところであった。はじめは一条がさばききれていた。しかし、その数が増えるにつれ蒼太を守ることは困難になっていった。
 「蒼太、一応防御結界を張れ!このままだと守りきれる自信がない。」
 一条は、多数をしのぎながらそう告げた。蒼太は、忠告通りに結界を張った。はじめは、結界に攻撃が届く前に一条が対処出来ていたがやはり限界は来てしまった。結界に攻撃が届き始め、一条も傷を負い、機動力が減少した。そして、最終的には蒼太結界が剥がれ、蒼太に攻撃が届いてしまった。二人は敵に飲まれてしまった。
 二人に何かあったことは、わりとすぐにそれも多くの人間が気づいた。それは、直接援護がなくなったと感じたものや、間接的にやりにくくなったなどの感覚を覚えたなどの事からだった。そして、ほんの一瞬狙撃ポイントを見るとそこに群がる無数のモンスターの姿を確認出来た。一条が、直前にヘルプとして呼んでいた煌輔もあとから来てそれを殲滅することに当たっていたが、倒れる数より増える数の方が多いのは遠くから見ても分かった。そして、蒼太の身を案じたものが叫んだ。
 「蒼太君!」
 紗希が叫んだその時、絶望的な戦況のなかで変化が起きた。
 「我は、これを記した作者なり。名をmagicwriterとしよう。そして、その我が命ずる。我が作りし、期待の偶像よ、作者の権限としてお前を人間の枠から除外する。人外となりしキャラクターよ、有する力全てを持って相手を殲滅せよ。強き者を撃破せよ、弱き者には構うな消し去ってしまえ、邪魔する全てを動かない人形へとかえろ。」
 年寄りの声が町中に響いた。そして、その声がしてからわずか3秒でビルの屋上に群がるモンスターは消え去った。そのなかで、一人立つのは蒼太だった。
 「蒼太!良かったまだ生きていたんだな。」
 煌輔が、安心した笑みを浮かべると蒼太は、一瞬振り向き何も言わずに飛び降りた。
 「先にやることがあるってか、せめて反応ぐらいしてくれてもいいだろう。」
 そして、煌輔も飛び降りた。
 その頃大柴は、グランドオーガと対峙していたのだが、グランドオーガが蒼太の方角に視線を向けた。強いエネルギーに気を引かれたのだろう。それに気づいた大柴は、この場にグランドオーガを留めさせるように仕向けた。しかし、それも意味がなかった。蒼太の方からこちらへとやって来たのだ。それもあり得ないほどの速さで。大柴でもかかる時間の半分ほどでここにたどり着いたのだ。その時の蒼太の姿は殺すための兵器、殺人兵器そのものだった。体は、返り血で赤く染まり、手からは血が滴り落ち、目はまっすぐターゲットを向いている。その時の蒼太には、生きた人間である様子が見られなかった。まるで意識がどこかへ行ってしまったように。そんな蒼太の手には、二つの銃が握られていた。散弾銃と狙撃銃。蒼太が出せるすべての銃である。
 「ガハハ、コロスコロス!」
 グランドオーガは、強さ漂う蒼太に興奮していた。しかし、その興奮はすぐに恐怖に変わるものとなる。グランドオーガは雄叫びをあげた。それと同時に、周囲から空を飛ぶ魔導師が現れた。大柴は、蒼太の邪魔にならないようにそれを破壊しに行くがどれも手前で倒されてしまっていた。その、全てが蒼太に撃ち抜かれていたのだ。さらに驚くことに蒼太は一度も視野を変えることなく全方位の敵を撃ち抜いた。グランドオーガはそのうちに金棒を振り上げた。その瞬間に、蒼太は金棒の上にいき散弾銃で大きな衝撃を与えた。その衝撃からグランドオーガは、金棒から手を離してしまった。このときの、グランドオーガは猫の前に差し出されたネズミのように震え上がっていた。本能が、蒼太に勝てないと認識したのだ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

幽閉王女と指輪の精霊~嫁いだら幽閉された!餓死する前に脱出したい!~

二階堂吉乃
恋愛
 同盟国へ嫁いだヴァイオレット姫。夫である王太子は初夜に現れなかった。たった1人幽閉される姫。やがて貧しい食事すら届かなくなる。長い幽閉の末、死にかけた彼女を救ったのは、家宝の指輪だった。  1年後。同盟国を訪れたヴァイオレットの従兄が彼女を発見する。忘れられた牢獄には姫のミイラがあった。激怒した従兄は同盟を破棄してしまう。  一方、下町に代書業で身を立てる美少女がいた。ヴィーと名を偽ったヴァイオレットは指輪の精霊と助けあいながら暮らしていた。そこへ元夫?である王太子が視察に来る。彼は下町を案内してくれたヴィーに恋をしてしまう…。

主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します

白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。 あなたは【真実の愛】を信じますか? そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。 だって・・・そうでしょ? ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!? それだけではない。 何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!! 私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。 それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。 しかも! ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!! マジかーーーっ!!! 前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!! 思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。 世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。

【本編完結】転生したら第6皇子冷遇されながらも力をつける

そう
ファンタジー
転生したら帝国の第6皇子だったけど周りの人たちに冷遇されながらも生きて行く話です

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

処理中です...