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柊彩 藍

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 「最近何もないねー。何か起きてほしい訳じゃないけど、あいつが2度と何もしないわけないから。」
 南がそう呟くと、池宮が少し面白い話題を口にした。
 「南ちゃん、都市伝説って知ってる?」
 池宮は最近新たな都市伝説が噂されていると聞いたそうだ。その都市伝説の内容を聞くもかなりありがちな内容なのだが仕事があまりない二人は暇潰しにそれを調べることにした。
 「それってどんなの?」
 「なんか街中で真っ黒な人影を見かけるんだって」
 「それって自分の視界に入ってなかっただけじゃないの?」
 二人はおしゃべりをしながらもパソコンで情報を引き出そうとしていた。
 「まずは掲示板かなー。まあ、ほとんど嘘だろうけどこれでだいたい何が起こったかアバウトにはわかるからねー」
 その掲示板には、その人影を見かけた。など何か気配がするなどの弱いものから、そいつに拐われた。襲われたなどという行きすぎた事までかかれてあった。二人はこんなものが見たいのではなく。この話の発端を探そうとしていた。都市伝説というのは誰かが話さないと流れないものである。二人はその発端の人物、日時を割り出そうとしていた。しかし、最近のホットな話題ともあって過去に遡っていくのもかなりの重労働であった。しかし、その中でもいくつかのコメントに目を向けることで得られることもあった。その人影は、危害を加えることもなくただそこにあるだけだということが分かった。しかし、だからこそ気になり意識をするのではないかとも考えることが出来た。一度気になってしまった不確定のものはちゃんと確認できない限り、どうしても不気味に感じてしまうものだ。今回の都市伝説もそういう類いだろうと踏んでいたのだが、あるコメントに二人は目を釘付けにされた。
 『私は、コンビニの店長なのですが真っ昼間の更に明るい店内にそれがいるのを確認しました。私は、そのときに店内にいたわけではなく防犯カメラ越しだったのですが確かにそこに人影がありました。しかし、その人は確かな形をしていなかったのです。その人だけぼやけているので見えるかどうか分からないですが監視カメラの映像を添付しておきます。よかったらどうぞ。』
 もちろん、この動画も偽造である可能性はあった。だが、二人は興味から見てみようと思った。結果は、何も見えなかった。それが意味するのは店長の証言が嘘の可能性、そして、本当に自分達には見えなかった可能性。その時、コンビニには店長が書き込みをしていた人影以外にも何人か客がいた。それを見てまず二人は声をあげて笑った。蒼太がいたのだ。さらに蒼太は、かごを持って大量の甘味調味料を購入していた。それからかなり調べはしたがどれも確定されたものはなく曖昧なものばかりで結局二人は飽きてしまい調べることを諦めてしまった。ちょうどその頃に、紗希と蒼太が一緒に来た。
 「仲良いですなぁー」
 南は、手を口の前に出していじった。
 「ちょっ羽鳥さん!同じ学校なんだから普通じゃないですか」
 「そうですよ。南」
 「だよね~付き合いたての男女が仲悪かったらそれはそれで問題だもんね~」
 南は、自然な流れで口を出すと二人はそのまま相づちを打って賛同した。
 「全く本当にその通りですよ!」
 それを見ていた池宮の表情を見て二人は気づいた。自分達がはめられたことを。
 「もーからかうな!」
 すぐさま逃げる南を紗希は追っかけていった。残された蒼太はデスクの上に開かれた二台のノートパソコンを見て池宮に質問した。
 「何か仕事ですか?」
 「いやいや、今は何も起きてないから仕事は無いけど。まあ、ちょっとした暇潰しかな。結局飽きて止めちゃったんだけど。」
 蒼太は、パソコンで開かれたページを少し読んだ。
 「へー都市伝説ですか。影……何か気になりますね。」
 「でしょ~。南はあんなんだから当然興味を持ってのめり込んでたってわけ」
 池宮の答えに蒼太は、少し不思議な顔をした。
 「あ、いやそういう気になるではなくて。何かこう、これを見かけたに近い感覚です。実際に見かけた記憶はないのになぜかこれをよく知っているような気がするんですよね」
 すると池宮は食いついてきた。
 「何か知ってるの!?」
 そのキラキラとした目に答えてあげたかったものだが、蒼太に話せるようなことなど何もなかった。そもそも蒼太がこの都市伝説に触れたのは今が最初だったのだから。
 「すみません力になれなくて。じゃあそろそろ失礼します。志穂さんに呼ばれてるので」
 「じゃあまたねー」
 ジジ……
 池宮は、手を振って見送った蒼太にモザイクがかかったかのような違和感を覚えた。
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