writerS

柊彩 藍

文字の大きさ
46 / 61

犯人特定

しおりを挟む
 警察は、慌ただしく活動していた。あちらこちらで通り魔事件の報告が寄せられていたからだ。事件の調査によると、被害者はその全てにおいて似たような証言をした。身長は170㎝程、恐らく男性、フードを深く被っていた。だいたいこのような証言が帰って来た。そして、警察は事故現場から犯人の逃走経路を確認した。聞き込みによると怪しいフードを深く被った男が路地裏に入っていったという目撃情報を手にいれた。さらに、警察は事件現場と地図を照らし合わせて、かなり広範囲にほぼ同時刻に犯行が行われていることを確認した上である結論に至った。それは、どの通り魔も同一犯であり、魔法による空間移動などで犯行ポイントを変えていたのだと。そこで、魔法に通じたものたちに協力を仰ぐことにした。その協力先は防衛省魔法生物特別対策科である。警察は、守谷に頼んだ。そして、守谷は警察からの要請を受諾し、指示を出した上でwriterSにも事件の情報を流した。もし、これが単なる通り魔事件でないのなら彼らの力も必要になると感じたからだ。そして、守谷の勘がその可能性が高いと言っていた。
 
 「今、守谷から協力要請が出た。全員一旦集まれ。」
 ボスからのメッセージによりwriterS全ての人間が集結した。そこで、なぜ協力を要請されたのかの理由と事件に関する現段階で確認されている情報を伝えた。そして、writerSは魔法目線での調査を行った。修だけは、警察に行き両方からの目線で警察と連携をとった。
 「とりあえず、魔法使用の痕跡探しかな。ボスの話によれば転送術式か、空間移動術式しか考えられないから絞るのは簡単そうだね。」
 紗希は、その二つの魔法使用痕跡に絞り着々と、操作を進めていった。
 「…………」
 「南?どうかしたか?体調でも悪いの?」
 黙り混んで作業をしていく羽鳥を気にかけ紗希は声をかけた。
 「いや、大丈夫少しボーッとしてただけ。」
 もちろんそんな事はない。羽鳥は捜査をしていく中で違和感を感じはじめていた。それが、捜査をしている現場に感じたものなのか、この事件自体にたいしてなのか、それとももっと別の何かなのかは、分からなかった。しかし、その違和感は確かに悪い予感がしていた。羽鳥は、その違和感を感じるほどに何かが不安になっていった。そして、事件の解決に進歩が見られた。その時にその違和感は、違和感ではなくなる。
 「南、ちょっときて。瑞希も!」
 先の呼ぶ方へ二人は向かった。紗希が手がかりを発見したようだ。そしてそれは間違いなく転送術式であることが判明した。そこである可能性が出てきた。犯人は二人以上であるということ。犯行に至ったのは恐らく一人であるだろう。それは警察が突き詰めた予想に代わりはない。しかし、魔法的に見て、転送術式が使用された事が二人以上の犯行だと証明した。転送術式は、そもそも自分以外の何かにかけるものであり自分自身にかける事があまり無い。それどころか、自分自身にかけるメリットが無いのだ。まず、普通の使用方法では、特定の地点や人物にかけて、それを使用する人がノーコストで魔法を発動できるというものである。この術式の、特徴は使用者と術者が違うということだ。しかし、自分自身にかけれないことはない、この場合、魔力を消費するのは術式を組み上げる時だけなのだがその過程で命を失う危険がある。転送術式の基本として他人にかける魔法を自分にかけると言うことは、自分を他人として定義することなのである。このとき、自分の魂を否定することになるため死の可能性が出てくる。よって犯人は二人以上であると推定できる。
 「わかった警察に伝えておく。」
 三人は、ボスに報告し更なる情報を求めて捜査を再開した。
 
 「修。これ新しい情報。」
 先ほどの情報を資料にして修の元へ私にきた。
 「………………」
 修は、よほど集中しているのか返事が無い。相川は、念のためもう一度声をかけた。
 「おい、おいとくぞ。」
 「…………………」
 それでも反応は、無い。それどころか相川の存在にすら気づいていないようにも感じられた。
 「返事くらいはしろよ」
 「ボス、今から言うこと信じられますか?」
 修は、ひどく怯えた顔で振り向いた。
 
 「まずこの動画を見てください。」
 そしてパソコンで監視カメラの映像を再生した。そして、そこに映っていたのは、被害者が体を蜂の巣にされる映像だった。しかし、実際は被害者にそれほどの傷は無い。そう不思議に思っているとみるみる被害者の傷が消えていく。そして顔は映らなかった者の傷を治した被害者の腹に一刺しナイフで傷をつけた。
 「なんだよ、こんなの酷すぎる。」
 「まだ何ですよ。」
 修は、別のカメラの映像を見せた。
 そこには、フードを被った男の顔が映っていた。
 「これ合成とか加工はしてないんだよな。」
 「信じられますか?」
 「信じたくないに決まってるだろ!」
 そこに映っていたのは、蒼太だったのである。さらに、たまたまフードを被って路地裏に入っていった可能性も考えられなくは無いが、監視カメラの情報と、相川が持ってきた情報だけでその可能性は否定された。まず、被害者を攻撃した最初の武器恐らく散弾銃と特定された。散弾銃は、蒼太が使える武器のひとつである。さらに、別のカメラに現れた時間帯。事件を起こしてからやって来た時間にちょうど重なるのだ。それだけではない。蒼太が入っていった路地裏は、先ほど紗希が捜査結果を報告した場所なのである。修は、苦しみながらも警察にこの事を報告した。そしてその30分後に荒牧蒼太に逮捕状が出された。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します

白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。 あなたは【真実の愛】を信じますか? そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。 だって・・・そうでしょ? ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!? それだけではない。 何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!! 私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。 それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。 しかも! ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!! マジかーーーっ!!! 前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!! 思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。 世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

幽閉王女と指輪の精霊~嫁いだら幽閉された!餓死する前に脱出したい!~

二階堂吉乃
恋愛
 同盟国へ嫁いだヴァイオレット姫。夫である王太子は初夜に現れなかった。たった1人幽閉される姫。やがて貧しい食事すら届かなくなる。長い幽閉の末、死にかけた彼女を救ったのは、家宝の指輪だった。  1年後。同盟国を訪れたヴァイオレットの従兄が彼女を発見する。忘れられた牢獄には姫のミイラがあった。激怒した従兄は同盟を破棄してしまう。  一方、下町に代書業で身を立てる美少女がいた。ヴィーと名を偽ったヴァイオレットは指輪の精霊と助けあいながら暮らしていた。そこへ元夫?である王太子が視察に来る。彼は下町を案内してくれたヴィーに恋をしてしまう…。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

処理中です...