クロスフューチャー

柊彩 藍

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4章~カジノで一攫千金!~

逃走傍ら追跡

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 ハルトは蓮が殺されそうになっている状況と、自分は何も武器を持っていないという状況、そして自分の事を仮面の二人には認識されていないという状況これらを踏まえて飛び出した。ハルトは迷うことなく一直線に鬼の仮面に飛びかかった。鬼の仮面は、蓮に振り下ろそうとしていたナイフ以外に、剣を携えていたからだ。ハルトは、その剣を腰から引き剥がし、蓮に触れるとテレポートで闘技場の穴のところまで逃げた。ハルトは焦っていて、逃げる場所を特には考えていなかった。よくよく考えれば、あんな大穴を開けたとなると兵士が調査に来ていてもおかしくはなかった。テレポートをした時に、闘技場の穴には静寂が広がった。そこにいた兵士数十名が一斉にこちらを見た。ハルトと、蓮が所持する武器は1つ鬼の仮面から奪った剣の一振りである。二人は、本質的に似ているからか少しも考えることもなく、かつアイコンタクトをとらないままお互いの糸を組み合った。
 「たくさんの武器が転がってるなぁ?」
 「落ちてるものは拾わないとな。」
 二人は、悪役に抜擢されてもおかしくない不適な笑みでそう告げた。二人を、見つけて臨戦体制にはいっていた兵士達もその笑みに恐れをなしたのか一歩退いた。二人が一歩を踏み込んだところでほぼ勝負は決まっていた。結果はもちろん圧勝。しかも二人とも能力を使うことなく。まず、ハルトが前方に剣を投げ、先に走っていた蓮が受けとる。そして、蓮が一撃で相手の剣を弾き飛ばす。それをハルトがつかんであとは、ただたんに二人が無双を繰り広げるのみであった。二人は、兵士達を無力化したあと、闘技場の地下を捜査したいがあの仮面達が驚異として立ちはだかるため、あの仮面達と距離を取るべくこの場を離れようとした。だが、それは、かなわなかった。仮面のうちの一人が吐き気がするほどの殺気を撒き散らしながら階段をのぼってきた。戦闘音を聞き付けてやって来たのだろう。だが、一人なら相手することが出来ると考えた。すると、蓮が上を見て唇を噛んだ。すでに闘技場の穴の上にも獅子の仮面がスタンバイしていた。それに、弓で二人を狙っていた。
 「秘密を知ったものは排除すべし。我々の資金源に損害は与えない」
 鬼の仮面は、確かにこう言った。それが本当なら、モンスターを生成してそれを商品にしていることとなる。モンスターを生み出すだけでもすでにハルトは許せなかったのに、売っているとなると必ず買い手がいる。その買い手が何をするのかを考えるだけでハルトの選択肢の中に逃げるという選択肢が消え失せた。
 「ハルト流石にここまでいい位置をとられたら不利すぎる。一旦逃げるぞ!はやくアレをつかってくれ!」
 蓮は精一杯声をかけた。しかしハルトの耳には届かない。いや、届いていたのかもしれないが、ハルトの心がそれを否定した。
 「ここで二人を倒す!」
 蓮は、最初から逃げる気しかなかったので、「よし、逃げよう」という返事を期待していた。それに始めはそう聞こえた。だが、ヤル気満々のハルトの姿をみて、蓮は驚いた。驚きを通り越して驚けなかった。普通に考えれば、ここは逃げるべきなのだから。ただ、獅子の仮面から攻撃を仕掛けられたら、蓮も心に火がついた。ハルトは怒りを、蓮は楽しみを糧に勝負を仕掛ける。
 
 アルビオンとリリィはひたすら兵士を追い続けた。しばらく追い続けると、ある建物の中に兵士は入っていった。そう、兵舎である。
 「よし、ここが…って兵舎かよ!ただ帰っただけかよ!」
 「アル君ここまで走ったの無駄だったんですか?」
 リリィは、息を切らしながら落胆する。
 「ごめん、まさかそんなにはやく帰りたくて走ってるとは思わなくて。じゃあ戻るか」
 「そうですね。」
 二人は、その場をさっていった。
 その後、しばらくして兵舎に駆け込んだ兵士達が兵舎から出てきた。兵士達はそのまま近くの倉に入っていった。
 「さて、あそこに潜り込むか」
 アルビオンとリリィは、その場から立ち去ったように見せかけ、物陰に潜んでいて、兵舎を観察していた。なぜなら、追いかけているあいだこちらを振り向いた兵士の顔を見て、アルビオンは何か企んでいると予想していたからだ。もちろん、リリィには伝えていない。さっきは、普通にアルビオンが失敗したと感じていた。何せアルビオンは、リリィに言ってしまったらどこでボロが出てしまうか不安だったからね。そして、いざ物陰から飛び出して倉に乗り込もうかとしているときに、リリィはアルビオンの肩をつかんで引き留めた。
 「戦闘に関してはどーするんですか!戦える人今いませんよ!」
 焦りが隠せないリリィに対して、アルビオンは自信ありげな顔で親指を立てた。
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