クロスフューチャー

5章～エルフVS忍～

動く森

　馬車に揺られて目的地へ行くまでの間少し荷物の整理をしていた。
　「そういえば、今どのくらい金ある？」
　アルビオンが、みんなに聞いた。3人はごそごそとお金を取り出して手のひらにのせて差し出した。アルビオンはそれを見てため息をついた。
　「今って金そんなにないのですか？」
　リリィは、心配そうにアルビオンを見る。ハルトと蓮はほとんどきにする様子などなかった。
　「いつまでもこんな人に任せっぱなしの移動じゃなくて何か乗り物欲しいなぁって思ったんだけど何が起きてもいいように残すお金を考えると難しいなあ」
　アルビオンは、移動手段を手にいれたいらしい。実際お金が無いわけではない。むしろ余っていると考えていい。しかし、だからこそ資金が底をついた時の状況に陥ることが怖かった。このときアルビオンは、機械式の乗り物を造ろうとしていた。その材料費を考えると残りが少なくなってしまうと考えていた。
　「今から森に入る。しっかり捕まってろ。」
　おじさんはハルトたちに注意を促した。その声は非常に緊張感を持っていた。
　「たかが森に入るくらいでそんなに焦らなくても」
　こうして余裕を持った態度をとっていた四人は森に入ったとたんに血の気が引いた。その理由として２つ焦る点があった。まず、おじさんの運転が急に荒くなった。ハルトたちが乗っていた荷台はガタガタと音をならし跳ね上がりハルトたちを混乱させた。
　「ちょっ…アルビオン何蹴ってんだよ」
　ハルトはアルビオンに蹴られ
　「それよりもリリィを何とかしてよ。リリィがつかんでるの俺の脚だから！」
　アルビオンはリリィに脚を捕まれ
　「な、な、何をするんですか！この変態！この混乱に乗じて変なとこ触らないで下さい！」
　リリィは蓮に胸やおしりなど色んなところを触られた。最後のに関しては事故だったのか非常に判断が難しいところなのだか、これほどに状況は荒れていた。そのなかでハルトは外がどうなっているのかを確認した。モンスターに襲われているならこのような状況になっているのも理解できるしそれならすぐに解決できる案件だからだ。しかし、馬車が襲われていたのは、モンスターでも盗賊でもなく『木』だった。明らかに『木』が動いていた。『木』は馬車に向かって突進してくるものや、その大きな根で馬車の進路を変えているものもあった。これが二つ目の理由だ。五人は馬車に激しく揺られて数十分。急に馬車が落ち着いた。これは落ち着いたというより完全に止まったのだろうか。ハルトたちの乗る荷台がびくともしない。荷台にしがみつきながら閉じていた目を開けると、まわりは根で囲まれ身動きがとれなくなっていた。しかし、上を見ると葉の１つも見えなかった。どうやら森から弾き出されたらしい。後ろには草々と生い茂る森。眼前には広がる平野。
　「あそこにあるのは何だ？小屋？いや家だ！おい、家がいっぱいあるぞ村についたかもな！」
　蓮がテンションを上げて指をさす。蓮もクルーピエに行く前に船を見つけたハルト同様目が恐ろしく良かったらしい。二人には当然何も見えず広がる平野を黙って眺めた。
　「あーほんとだな。あれは確かに村だ。」
　リリィとアルビオンはただ微笑みながら聞く。このときの二人の気持ちはシンクロしていた。「何でもいいからとりあえず休憩…しよ？」二人はかなり疲弊していた。もちろん激しく揺られて疲れたというのもあるがそれ以上に、疲れたからだに二人の輝かしい眼差しを見る方が精神的にダメージを与えた。げんなりとしている二人を満点の笑みで追い討ちをかける二人におじさんが朗報を与えた。
　「位置的にそれは、多分俺の村だ。この馬車さえなんとかしてくれたら案内するぜ」
　やっと休憩にありつけると思いリリィとアルビオンの気持ちが少し軽くなる。それでも、元気いっぱいのバカを見てそれが気のせいであると知らされるのだが………
　一行はおじさんの村にたどり着き休息をとった。蓮とリリィは寝床に入っていたが思慮深いアルビオンと案外色んな事を考えているハルトはおじさんにあることを尋ねた。
　「何で森に入った。」
　二人が聞きたかったのはこういうことだ。なぜ危険だとわかっていた森に自ら入ったのかと言うことだ。返答次第では自分たちの安全に関わる問題だから神経質になっていた。
　「そんな恐い顔で睨まんでくれ。心臓がいくつあってもたりやしねぇ。」
　怯えるおじさんにさらに追い討ちをかける。
　「理由を話さなかったら首を飛ばすぞ」
　ハルトが耳元で脅しをかける。
　「ま、ま、まってくれ。逃げられなかったんだ！」
　ハルトはアルビオンの顔を見ておじさんが嘘を言っていない事を確認する。その後黙って話を聞いた。
　おじさんの話によるとあの森はエルフが管轄する動く森だそうだ。普段は何もないのだが外的から身を守る手段としてまた、侵入者を逃さないために木を動かし対象を補捉する。その防衛システムに引っ掛かったのだと。さらにおじさんが出掛けたときはここまでもりの勢力は広がってなかったのだという。二人はおじさんの話を信じ、脅したことを詫びた。そしてエルフについて話を聞き始めた。