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「‥‥い‥‥‥ーい‥‥‥‥おーい!大丈夫かー?」

 俺の意識を覚醒したと思われる、目の前にいる人物。
 そいつは俺の従兄弟で、髪は黒髪。右が青紫色で左が琥珀色のオッドアイの瞳を持つ人物。

「‥‥あ、ああ」

 まだ朦朧とする頭で必死に、今しがた見たものを思い出す。
 ‥‥思い出した。というか、に思い出さされたに近いか。
 俺はどうやら、前世で無理やり妹にやらされたゲームに転生してしまったらしい。
 何故そうわかるかと問われると、目の前にいる人物が『鍵』っと言うしかない。

 『瞳の奥に恋をした~君との愛は~』という、題名のBLゲームの主人公。
 それが目の前にいるこいつ。

 名前は【狐ノ山このやま 白蓮びゃくれん
 容姿は、髪は黒髪。右が青紫色で左が琥珀色のオッドアイの瞳。平均よりも少し小さめの体で、それでも男らしく勇敢なところがあるやつだ。
 性格は老若男女誰にでも壁なく話せる。
 俺の従兄弟であり、さっきいたBLゲームの主人公である。

「‥‥もう、大丈夫だ。でも今日はもう休みたい。ごめんだけど、今日は帰ってくれるか?」

「あ、ああ!そうだよな!すぐ休め!!今日はおばさん達いないから、後で俺の家から食べ物持ってくるからな!!ゆっくり休めよ!!」

 そう言って俺の家から出ていく主人公様。
 俺はすぐに自分の部屋に帰り、もう一度頭の中を整理する。

「‥‥とりあえず、攻略者たちの事を覚えてる限り書き出すか?」

 俺は机に向かって、BLゲームの内容を映し出し始めた。
 興味がなかったゲームだったが、意外と内容を覚えていて、映し出す頃にはもう外は真っ赤だった。

「‥‥‥あとは現状整理か」

 俺は自分の部屋にある立て掛け鏡の前に立つ。
 現在の俺はこうだ。

 名前は【弧ノ山このやま 稜驊いつか
 容姿は、髪は白髪。右が琥珀色で左が青紫色の、白蓮とは反対のオッドアイの瞳。体格は白蓮と同じだ。
 性格は、人付き合いは苦手な方で、あまり話さない。それせいもあってか、いつも無表情だ。

 ‥‥驚きだよ。
 何がって?俺の容姿もだけど、俺のじたいが驚きなんだよ。
 俺の記憶では、このゲームにこんな容姿のやつは出てこない。仮に出てきていたら、攻略対象になっていてもいいぐらいだ。だが、そんなやついなかった。
 ま、俺はどこからかひょっこり出てきたモブって事だ。

「‥‥‥あ、やばいじゃねーか」

 さも驚いているような口調だが、俺の顔は無表情のままで、何も変化が見えない。
 これは、変顔対決は優勝できるレベルだな。と、思わず関係ないことを思ってしまうほどだ。
 あ、何がやばいかと言うと、俺はあと一週間で、主人公と共にゲーム内でのメインステージである学園。『白夜ノ森学園』に入学するのだ。
 ここは全寮制で、もう入寮手続きも服などの輸送も終わっている。後戻りできない状態なのだ。
 俺は普通にゲームに干渉せずに生きたいと、心の中で思っていたがこれでは無理そうだ。
 せめてでも、今の俺の容姿をどうにか隠して、入学してからできるだけイベントがある場所には近づかないようにしよう。

「‥‥寝るk《ピンポーン ピンポーン》‥‥‥誰だよ」

 俺は階段を降り、玄関に向かうと、そこのは主人公君がいた。
 おい。なんで勝手に他人の家入ってんだ?こいつは。

「よ!稜驊!ちゃんと寝てたか?飯持ってきたから一緒に食おうぜ!」

 そう言って、持っている紙袋を俺の前に差し出す主人公君。
 いや、ご飯を持ってきてくれたことには感謝する。だけど、人の家に勝手に入るお前は許さねー。

「ご飯はありがたく受け取るが、お前は帰れ1人で食いたいんだよ」

「またまた~。いつも無表情なお前だけど、俺はわかるぜ!今お前が言ったことは、お前が本当は思ってないことだろ?
 何だ、具合が悪いのって風邪かなんかだったのか?だから、俺に伝染らないようにって遠ざけようとしてんのか?大丈夫だって!
 ほら、リビング行こうぜ!おっ邪魔しまーす!」

 そう言って、ズカズカと家に入る主人公君。
 ‥‥現実ではこんな感じなのか。なかなかいい性格してるんだな、主人公君。
 ‥‥‥もちろんいい意味だよ?ニッコリ
 表情は変わらないので、心の中だけでも笑う。

「ご飯食べたら帰れよ?」

「ええ~?飯食べたら遊ぶだろ~。あそれとも一緒に風呂入るか?」

「ふざけんな、そんなのごめんだ。主人公君となんて入れるか‥‥あ」

 俺は風呂が嫌すぎて、主人公君の事を思わず『主人公君』と呼んでしまった。
 まずいと思い、横目で主人公君の様子を見ると、本人はキョトンとしていた。

「主人公君?なんだそれ。主人公つったら、お前の方がお似合いじゃねーか。その容姿だ。高校に入学したら、女どもが黙ってね~ぞ~?」

 そう言って、俺の横に来て俺の頬をつつく主人公君。
 ‥‥この容姿のことに対しては、俺は同意する。
 もし俺が女なら、こんな綺麗な容姿のやつがいたら目の保養として、ずっと見ているかもしてない。
 あ、ナルシストじゃないぞ?前世の記憶がある俺にとって、前世の自分の容姿を知ってる分、今の俺の容姿の綺麗さが分かるってだけだ。

「はいはい。分かったからやめろ。ご飯食うんだろ?今温めるから座って待っとけ」

「OK~!じゃ、テレビ見て待っとく!」

 そう言って、リビングのテレビの前にあるソファーに飛び乗る主人公君。
 ‥‥‥子供ガキだな。本当に。
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