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「うう~」

 俺は屋上のタイルに寝転んで、冷えたタオルで目をおおって休んでいる。
 理由は簡単な話だ。先程の修也しゅうや京馬きょうま七夏弥ななひさの言い争いを耳元で聞いたため、頭に響いて頭がグァングァンするのだ。
 修也達は、騒いだ罰として皆一緒に買い出しに行った。白蓮びゃくれんは、トイレに行っていて、今はいない。

「大丈夫ですか?」

 声をかけてきた人が誰か確かめるために、タオルを少しずらして横を見ると、心配そうにこちらを見ている虎國とらくにと、追加のタオルを持った鷹雅たかまさがいた。
 俺は起き上がって、「大丈夫です。さっきより落ち着きましたから」と返事をしておいた。

「そうですか‥‥今日は私の家の車で送ります」
「え、いいんですか?」
「はい。車が来たら起こしますから、まだ寝てていいですよ」

 それはとても嬉しい。実を言うと、このまま歩いて帰ったら、帰り道とかで会長とかの人達が待ち伏せしてそうで怖かったのだ。
 俺は虎國にお礼を言って、タオルを目に戻してまた寝転がった。
 でも何故か、頭の部分に先程感じていた硬さと冷たさはなく、変わりに何か少し柔らかい感触と温かさがあった。
 俺はタオルをずらして上を見ると、そこには鷹雅がいた。
 鷹雅は俺と目が合うと、コクリと頷いて、本を読み始めた。

「「‥‥‥‥」」

 ‥‥‥‥‥‥。

「「‥‥‥‥」」

 謎の沈黙。
 え?さっきの頷きは何?何の意味が込められてたんだ?
 俺は鷹雅の読書を邪魔する気にもなれず、とりあえず大人しく鷹雅に膝枕されたまま、また寝ることにした。

ーーーーーーーーーー

「‥‥‥‥ん‥‥んぁ?どこ?」
「あ、おはようございます。もうすぐ稜驊いつか君の家につくので、起こそうと思っていたところなので、ナイスタイミングですね」

 声のした方を見ると、鷹雅が座っていた。
 質問には答えてくれなかったが、虎國の言葉通り、窓の外を見ると見慣れた景色だった。
 どうやら俺が寝てる間に車が来て、俺を運んで帰っていたらしい。
 俺は状況把握のために車の中を見渡してみた。
 すると、先程は気が付かなかったが、鷹雅が虎國の横に座っていた。

「‥‥‥‥」

 無言でこちらを見ている鷹雅。
 俺はすぐに鷹雅から目を逸らして、虎國に質問した。

「‥‥もしかしてですけど、俺が寝てたから起こさなかったんですか?」
「ん?ああ、そうですよ。あまりにも気持ちよさそうだったので、起こさないでおきました。気分は大丈夫ですか?」
「‥‥‥ありがとうございます。おかげで気分も体調も大丈夫です」

 虎國は細身だから、俺を運べるはずがない。つまり、俺を屋上から車まで運んだのは鷹雅か。
 ‥‥お礼言っておくか。

「あ、えっと。先輩」
「っ‥‥‥なんだ?」

 お、おう?
 何故か驚いたあとに、とても優しい顔をされて微笑まれた。

「あの、俺をここまで運んだのって、鷹雅先輩ですよね?ありがとうございます」
「ん?いや。運んだのは虎くーー」
「ーーご到着致しました」

 鷹雅が何か言っている途中で、車のドアが開いて、運転手が着いたことを教えてくれた。
 俺は自分のカバンを掴んで車を出た。

「今日はありがとうございました」

 俺はそれだけ言って車から離れた。すると運転手がドアを閉めてから運転手へと移動して行った。

「稜驊君」
「‥‥はい」

 せっかく短く別れの言葉を言ったのに、車の窓が開いて、そこから虎國が顔を出してきた。



 そう虎國が言った瞬間に、車は発進して行った。
 ‥‥‥‥マジかよ。

「また明日も会わなきゃいけないのかよ」
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