俺はゲームのモブなはずだが?

レラン

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「[ドシン!]いててて‥‥ここは」

「お、来たか」

「な!稜驊いつか君!?」

「あ、巳蛇野みだや先生」

 長いトンネルから出るとそこは保健室の給湯室だった。
 先におりていた真山は正座をしている。おそらくしょうにこの仕掛けを使った事を怒られているのだろう。
 後ろを振り向くと、俺が通ってきたトンネルは既に無くなっていた。
 よく見ると壁に何やら線が入っていることに気がついた。
 俺が穴の場所の確認をしている間、翔は真山はしかり続けている。

「巳蛇野先生。鳥林先生は俺を女子生徒達から逃がすためにこの仕掛けを使ったんです。怒らないであげてください」

「そ、そうだったのか」

 一応真山は俺を助けてくれた。その相手がたとえ関わりたくない攻略対象だとしても、助け舟を出さずにはいられない。
 翔は肩の力を抜いて優しい笑みを浮かべた。
 その笑みは、ゲームの中盤・翔の好感度40%以上ではないと見れないに似ていた。

「そーだそーだ。俺は怒られることなんてしていないぞー?」

「お前は黙っていろ!」

「え~?」

 何か翔の好感度を上げるようなことをしたかと考えるが、特にそれと言って心当たりはない。

「大丈夫だぞ?稜驊君。こいつのこと庇うなんて時間の無駄なことしなくても」

「あ、いえ。助けてくれたのは本当のことですし‥‥‥庇ってるとかではないので」

「お~い。稜驊~それはちょっと酷くないか?」

「いや、酷くないと思い‥‥‥え?今なんて呼びました?」

「ん?」

 俺は真山に呼ばれた気がしたが、もしかしたら勘違いかもしれない。













 ‥‥‥‥‥‥。

「‥‥‥‥‥俺、いつ先生と名前呼び捨てにされる程の仲の良さになりました?」

「え?そんなこと気にするのか?」

 真山に驚いた反応をされたが、俺にとっては名前呼び捨て問題は大問題だ。
 ゲーム内での名前呼び捨ては、攻略対象への好感度がそれなりに上がったことを意味する。キャラによっては、名前の呼び捨てが完全攻略した時にやっと聞けるキャラだっているのだ。
 真山に「変なやつだな」と言われているが、俺は気にせず真山に聞いた。

「俺、いつから先生に呼び捨てにされるほど仲良くなりましたっけ?」

「‥‥‥それは、あん時だろ」

「あの時?」

「お前が俺の目を見つめて、『いなくならないでください』って言ってきた時」

「‥‥‥えー」

 まさかのあれがきっかけかよ。
 あの時は衝動で動いていたから考える暇がなかった。
 それに、あれが原因て呼び捨てになるほど好感度が上がるなんて誰も考えないだろう。

「いやなのか?」

「え?」

 どうやら不機嫌オーラがにじみでてしまっていたみたいで、真山は錯覚で耳がしょぼんとした大型犬に見えるような様子で俺を覗き込んできた。

「べ、別に‥嫌では‥‥ないです」

「そうか!なら大丈夫だな!」

 俺の返しに顔をパアッと効果音が出そうなほど明るくする真山。
 俺は観念して真山の好感度が上がったことを受け入れることにした。

「で?なんで稜驊君は女子生徒から逃げてたんだ?」

「あ‥‥言わなきゃダメですか?」

「いや、無理に言えとは言わないが‥‥‥やはり気になってな」

 翔に理由を聞かれ、俺が言いたくないと言えば翔は無理には聞いてこなかった。
 誰が好き好んで「女子につかまり女装させられそうな所を逃げてきました」なんて言うか。
 俺だって男のプライドというものがある。

「そうだ稜驊。お前暇ならコーヒー入れてくれよ」

「なんで俺が」

「だってお前いれるの上手いだろ?俺もう一回稜驊のコーヒー飲みたいなー?」

「‥‥‥‥可愛くないのでそんなぶりっ子の真似しないでください」

「うっわー。辛辣だなおい。俺これでもお前の学校の保健教師だぜ?」

「鳥林先生が保健教師な学校の未来が少し心配です」

 そう言うと、真山は豪快に笑いながら定位置の机へと歩いって行った。

「あ、稜驊君。手伝うよ」

「ありがとうございます」

 翔が後ろはついてきて、コーヒーを入れるのを手伝ってくれた。
 おかげで早く入れることが出来た。

「はい。鳥林先生の分」

「おー」

 真山の所へ持っていくと、真山は何やらパソコンに向かって真剣なご様子で返事は適当だった。

「すまんな。真山は一旦集中するとこうなんだ」

「あ、そうなんですか」

 ゲームで知っていた事を翔に言われたが、「知っている」とは言えないので適当にそう返した。
 真山もコーヒーを片手に本を広げてソファーに座った。
 俺も今教室に戻れば逃げてきた意味が無くなるし、この場で特にすることがないので保健室にある本を読み始めた。

「‥‥‥お前は不思議だな」

「え?」

 しばらくして、翔にそう言われ何がだと思い顔を上げた。
 顔を上げた先には真剣な顔の翔がいて、その視線はどこか粘着質というかまとわりつくような視線で、俺は瞬時に体が固まった。
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