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しおりを挟む「真山が生徒を呼び捨てにする事は滅多にない。それこそ片手で数える程だ。なのに、君はそれをたった2回しか会っていない中でそれをなしとげた‥‥‥真山に何をした」
「っ」
最後の言葉で一気に圧をかけてくる翔。
見たことがない翔に俺は一瞬困惑するが、すぐにゲームでのあるシーンを思い出した。
「( 確か、あれは‥‥‥翔のルート分岐イベント! )」
教師陣の攻略対象にはいくつかルート分岐イベントがある。
その内容は[ ヤンデレ属性 ]になるか[ ツンデレ属性 ]になるか[ ノーマル属性 ]になるかなどの属性分岐イベントだ。
生徒陣の攻略対象にはこれが存在せず、ただ[ Bad End ]か[ Happy End ]か[ Normal End ]の分岐イベント。それかイベントを起こすための分岐しか存在しない。
そして、今翔が俺に見せているこのシュチュエーションは翔の一つ目のルート分岐イベントに似ていた。
「( 内容は確かノーマルとヤンデレだった‥‥ここは迷わずノーマルだな。言葉は確か「真山先生に将来の夢が医療に関することだから、それを相談しました」だったか‥‥‥‥‥でも)」
俺はまっすぐに翔の目を見た。
その中にはどこか触れてはいけないような闇が感じられた。
その闇は触ったら霧散しそうな闇だが、そうなったら翔が崩れて壊れてしまいそうでもあった。
「‥‥‥俺は‥あなた達の力になりたい」
「っほう‥‥つまりお前は俺達に近づきたいと?」
気づいた時には勝手に口が動いていた。
「最初はあなた達に関わりたくなかった。それこそ死んでも」
「それはなぜだ」
「だってそうでしょ?ヤンキーっぽい保健室の教師や堅物な先生。誰が好き好んで近づくんですか?もし近づくとすればあなた達のファンの方でしょうね。でも、俺はあんた達に興味が無い‥‥‥‥でも、あなた達の力になりたい」
「‥‥矛盾してないか?」
確かに、俺の話は矛盾しているしバカだと言われてもしょうがないほどの語彙力だ。
「‥‥‥先生は目の前の人が落ち込んでたらどうします?」
「は?」
質問に質問で返された翔は、先程までの怖い雰囲気を霧散させて間抜けな顔を見せた。
「俺は‥‥多分声をかけちゃいます。目の前の人少し関わりを持っただけの赤の他人でも‥全くの知らない人でも」
「‥‥‥バカだな。そのせいで何か面倒なことに巻き込まれるかもしれないぞ?」
「その時はその時です。俺ができる範囲のことは協力しますし、もし俺の力が足りずもっと危ないことになれば‥‥‥‥‥‥‥‥俺がいなくなればいいんですから」
「っ!」
俺の言葉に翔は驚く。
まぁ、そうだろうな。目の前で生徒から死ぬ発言に近いものを言われたのだ。驚きもするだろう。
「周りが俺のせいで巻き込まれるぐらいなら、俺は自分一人でどうにかします。そのせいで白蓮が泣いたら‥‥その時は先生。あなたにお任せします」
「‥‥‥‥後の事は人任せですか?」
「でも、先生なら白蓮ぐらいなら慰めてそばにいてくれるでしょ?」
「‥‥‥」
翔の無言の肯定に俺は少し笑ってしまった。
もし、この世界で面倒事に巻き込まれるとしたら、攻略対象との接触時だろう。もしこの世界が前世で読んだらした小説内とかなら、普段生活でも巻き込まれそうだが、それは白蓮のせいということで。
「‥‥‥あなたはバカだ」
「はい。バカです。先生に言われたおかげで【自他共に認めるバカ】の称号が俺につきましたよ」
「‥‥‥バカだ‥‥バカは嫌いだ」
何回バカと俺に言えば気が済むのだろうか。いい加減俺もムカついてきた。仏の顔も三度まで!だ。
「先生。いい加減にし──────」
「──────でも、稜驊。お前の事は死なせないぞ?」
「‥‥‥は?今なんて?」
翔の発言を信じたくなんてもう一度聞くが、翔は「もう言わない」とばかりにコーヒーを口にふくんだ。
もういつもの翔に戻って‥‥いや、それよりも少し柔らかい雰囲気になった気がする。
「ちょ!巳蛇野先生!今のなんですか!見捨てていいんですよ!?俺他人!この場所に二回しか来たことのない他人!」
「‥‥そうだな。お前はこの場所に二回しか来ていない。たからお前と会うのは二回目だ」
いい笑顔でそう言う翔は、どこかスッキリしたような顔だった。
その笑顔のせいでさらに頭がこんがらがる。
「だったらどうして俺を見捨てないんですか!先生にとって他人でしょ?そういうのは先生にとっての守りたい人に言ってやってください!」
「例えば?」
「た、例えば?」
翔の急な真剣な視線と雰囲気に勢いを削られた俺は、浮かせていた腰を椅子におろした。
翔にとっての守りたい人。思いつくのは‥‥‥。
「‥‥‥‥白蓮とか‥‥鳥林先生?」
「なぜそこで真山の方が後に来るんだ」
俺の答えに声を殺して笑う翔。
俺はだんだん恥ずかしくなっていき、背中を曲げてそっぽを向いた。
「どーせ俺は常識人じゃないですよ。表情筋動かないせいで伝わるものも伝わらない奴ですよ」
「それは同感だ」
「うぉ!って、鳥林先生!」
不貞腐れていると、真山が俺の頭に腕を乗っけて体重をかけてきた。
「ん?どうした稜驊。ほれ、俺の事は気にせず話せ」
「いやいやいや!話せるか!俺の表情筋が動かない話は聞いても面白くないから!」
「いや、お前の表情筋は結構俺興味あるんだよなー‥‥‥なんで声色だけでそんだけ喜怒哀楽を表現できるんだよ」
「それは練習したからだよ!表情筋が動かないせいで昔は怖がられてたからな!」
「ほー」
真山は俺の横に移動してきてどかりと座った。
「で?翔。お前の守りたい人ってのは誰だ?」
「‥‥‥それをお前が聞くのか」
「いいだろ?面白そうだしよ!」
幼馴染モードに入った二人はなんとも入りにくい雰囲気になるが、真山の隣にいる俺は嫌でも入ることになる。
「‥‥俺の守りたい人は、稜驊とここの生徒だな。あとは真山。お前以外の友人数名だ」
真山の事を見ながら笑ってそういう翔には、ちゃんと真山が守りたい人の中に入っている事がわかる。
「何~!翔!お前いつから稜驊の事を呼び捨てにし始めた!」
「いやそこかよ!というか、本当になんで呼び捨て!?」
「ほう。こんな時でも表情筋動かずか‥‥メモしておこう」
「メモするな!」
「興奮するとタメ口も追加‥‥と」
「うわぁぁあぁああ!」
翔がメモをし始めると、真山もそれに便乗してメモをとり始める。
からかわれているのは自覚しているが、何故こうも俺は教師陣といるとツッコミの比率が多くなるのだろうか。いや、普段からボケは少ないというか全くないのだが、こうもツッコミだらけだと少し疲れる。
『おい!保健室から孤ノ山の声がしたぞ!』
『捕まえろ!』
「ひ!こ、この声は」
「「「いたぁぁああ!」」」
「連れていきなさい!」
「「「イエッサー!」」」
「うわぁあぁあ!」
真山達にツッコミを入れていたせいで、俺の事を探していたクラスメイトに居場所がばれ、俺はクラスメイトの運動部に担がれて保健室を出た。
廊下には俺の叫び声が木霊した。
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in保健室
「‥‥‥なんだったんだ?」
「そういやあいつ、クラスメイトから逃げてきてたんだったな‥‥‥あいつのクラス何してんだ?」
保健室には口元をひくつかせた翔と、呆れ顔の真山だけが取り残された。
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