俺はゲームのモブなはずだが?

レラン

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「昨日は大盛況でした!今日も頑張るぞ!おぉー!」
「「「「おぉー!」」」」
「‥‥‥はぁー」

 一日目は大盛況で終わった我がクラスの【女装男装喫茶】。
 一般公開は今日までなので、今日を頑張れば、もう後は生徒達などへの公開しかない。
 まぁ、それが一番問題だったりするんだがな。
 なので、昨日生徒会三人が来たのは意味がわからん。来るなら三日目に来ればいいのに。
 ‥‥‥‥‥いや、来なくていいな。

  ガヤ ガヤ

 お客が集まり始めた頃。俺はこっそりと裏の方へと回った。

「あ、それ手伝うよ」
「え!ありがとう稜驊君!ならここれ作って!あと、これの盛りつけお願い!」
「お、おお」

 表に出たくない一心で手伝いを申し出たが、思った以上に仕事が回ってきた。
 まぁ、ほとんどが盛り付けるだけなので、結構楽だ。クッキーは作っている。

「あ!こんな所にいた!稜驊君!」
「!!」
「早く来て!」
「え!ま!」

 一通り回ってきた仕事が終わった時、神羅が俺を連れ戻しに来た。
 盛り付けな終わったパフェを見て、厨房係の女子が何か言っているが、もしかして失敗したのだろうか。それなら謝らなければいけない。だが、神羅が俺の腕を掴んで進んでいるので、声をかける間もなく、俺はホールの方へ出ることになった。

「ほら!あそこ!稜驊君行ってきて!」
「はぁ?てか、何そんなに急いでるんだよ」

 これまで見た事ないほどの焦り具合を見せる神羅。顔は血の気が引いている。

「い、稜驊君にご、ご指名が入ってるの!早く行ってきて!私達じゃ無理!」
「はぁ!?だから誰が来たんだよ!」
「羊森!羊森 幸弥!が来・た・の!」
「幸弥ぁ?」

 俺は神羅に背中を押されるままに進む。
 すると、一応VIP室として作った、カーテンで仕切られた場所に幸弥の姿があった。場所は窓側後ろ。いつも俺が座っている席付近だ。
 その姿は物思いにふけるイケメンのはずなのだが、どこか物々しい雰囲気を醸し出している。

「なんでここにいるんだよ」
「それは本人に聞いてよ!とにかく、私達じゃ無理な相手なの!稜驊君を指名してるし行ってきて!」
「はいはい。了解しましたよ」

 俺は一旦身だしなみを整えて、幸弥に注文を取りに行く。

「ご注文はお決まりでしょうか」
「あぁ?っ‥‥‥‥おぉ」

 外を眺めていた幸弥は、俺が声をかけるとドスの効いた声で振り向いた。座っている幸弥の方の顔が低い位置にあるので、普通、可愛いはずの下から目線は睨みをきかせたものとなった。
 だが、俺を見た途端に目を見開き、顔を背けてしまった。

「‥‥あの、ご注文を」
「‥‥‥‥これ」

 幸弥が指さしたのは【メイドパフェ】一つ。【メイドクッキー】三つで、オプションは写真・ポッキー・あーん・セリフと全てを頼んできやがった。

「お、お客様‥‥‥失礼ですが、食べ切れるのですか?」
「‥‥‥問題ない」

 問題ないのならいいのだが、折角作ったものを食べ切れず残されると、結構むかつくものだ。

「注文入いったぞー。パフェ一つ。クッキー三つだ」
「「「「あんた/お前何者なの/んだよ!?」」」」
「急になんだよ!」

 バックヤードに入って注文を伝えると、あっという間にクラスメイトに囲まれてしまった。
 仕事をしろと怒鳴りたいのだが、迫ってくる圧が凄すぎて、俺は怒鳴るに怒鳴れなかった。

「なんであの羊森と仲良さそうなんだよ!」
「いつ知り合ったの!?」
「関係は!?」
「もしかして付き合ってるの!?」
「おい待て!誰だ今付き合ってるとか言った奴!孤ノ山は俺達のものだろ!?」

「おい!」

 誰だ今俺をモノ扱いした奴!
 俺は誰のものでもなく俺自身のものだ。

「というか、なんで稜驊君はこんなに有名な人と知り合いなの!?」
「それは俺が聞きたい!俺自身、なんでこうなってんのかわかんねぇーんだよ!」

 そんな会話をバックヤードでしばらくして、流石にこれ以上この場に固まる訳にもいかず、俺達は仕事に戻った。

「お待たせ致しました。パフェとクッキーです」
「‥‥‥‥」

 無言で運ばれてくる物を見続ける幸弥。
 パフェは先程俺が盛り付けしたもので、クッキーはクラスの女子が焼いたものだ。

「それでは、どのオプションから行いますか?」
「‥‥‥ん」
「ポッキー‥‥ですか」

 差し出されたポッキーを俺は受け取り、幸弥の横へと移動する。

「それでは、失礼します」
「////」

 予想以上に近かったのか、幸弥の顔はすでに真っ赤だった。
 食べ進めると、すぐに幸弥は顔を背けた。

「あら。最速記録で顔を背けましたね」
「っ~////」

 ポッキーはまだ残っていて、二口しか食べていないポッキーの残りを、俺は全部一気に食べた。
 それも恥ずかしかったのか、幸弥は顔を真っ赤にしたままこちらを向こうとしない。
 ‥‥‥あ、まさか!

「も、申し訳ありません!残りを食べるなんて、汚らしかったですか!?」
「い、いや」

 どうやら、残りを食べるなんてはしたないという考えで、怒って顔を赤くしていた訳では無いようだ。それがわかって一安心だ。

「それでは、次に移りましょうか」
「‥‥こ、これと」
「?あ、はい」

 どうやらあーんの写真を撮りたいようで、カメラを差し出してきた。

「それでは、あーんと写真のオプションは一緒ということでいいですか?」
「‥‥‥」

 無言で頷く幸弥を見て、なんで俺なんだろうと本当に思ってしまう。いや、他の人だと怖がられてしまうからとか色々理由はあるだろうが、この店に来る時点でおかしいだろう。

「あーん」
「っ////」

 パフェのアイスをのせたスプーンを差し出すと、幸弥はパクパクと鯉のように動かし始めた。
 そのまま動かない幸弥は見ていて面し‥かわ‥‥いや、楽しいのだが、私は早く食べて欲しい。

「‥‥‥お客様。腕が疲れてきました」
「あ、あぁ。す、すまん」

 俺はプルプル震える腕を頑張って維持している状態で、それを伝えると幸弥は俊敏な動きでアイスを食べてしまった。

「‥‥‥写真」
「んぐぅ!」

 そのまま俺からパフェを取り上げて全て食べてしまいそうな勢いだった幸弥は、俺の一言で食べるのをやめてむせ始めた。

「‥‥はぁー。残り少ないですが、一応写真はとれますね。あーん」
「‥‥‥‥すまん」

 次は素直に目をつぶりながらも食べてくれた幸弥に、俺はまた食べられてはいけないとカメラをかまえて1枚撮った。

「はい。撮れました」
「あぁ」

 撮れた写真を見て満足そうに笑った幸弥に、俺は驚いた。
 笑った顔があまりにも優しいものだったのだ。

「‥‥‥‥笑えるんですね」
「?笑う?」

 失礼だとは思ったが、幸弥ならば許してくれる気がしてそう言うと、幸弥は誰が笑ったのか笑っていないようで首を傾げた。

「なんでもありません」

 自覚がないのならあえて伝える意味もないだろう。そう考えて俺は首を横に振った。
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