少女はドラゴンハンターになった。

エムポチ

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襲撃の夜

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 疲れていたのだろう。
 二人は夜の10時を前にぐっすりと寝入っていた。
 月明かりの綺麗な夜だった。
 自衛隊は24時間体制で見張りをしている。
 中学校の屋上で暗視装置を使って、見張りをする自衛官は何かに気付いた。彼はその異様な光景に気付き、即座に緊急警報のボタンを押す。それは駐屯地などに繋がっており、即座に自衛隊の即応部隊が動き出す。だが、この時点でまだ、住居地区に警報は発せられていない。最終的にそれを決定するのが自衛隊の最高指揮官だからだ。
 だが、すでに自衛隊は動いていた。彼方此方に配備された防空隊が対空機関砲や対空ミサイルを用意する。防空隊と言っても、すでにホークミサイルやペトリオットのような大型設備は失われており、且つ、魔獣には不要と言うことから、使われるのは歩兵携帯火器がメインであった。しかしながら、ここには87式対空戦闘車も配備されていた。
 唐突に銃声が夜の街に響き渡った。
 曳光弾と砲火で街が照らされる。
 それに叩き起こされたのが愛理達だった。
 「何よぉ・・・」
 寝ぼけ眼の愛理はそれでも紺色の制服のジャケットを着て、装備一式を身に付ける。逃げ出すとなれば、全財産を持って逃げるためである。同時にこんな状況でもまだ寝ているアミルを叩き起こす。
 「何ですかぁ?」
 やはり寝ぼけ眼のアミルだが、激しい銃声に気付き、慌てて、身支度をする。
 愛理は部屋から出て、窓際に近付く。
 「くそぅ。何が起きているの?」
 カーテンを微かに捲った時、巨大な赤い瞳がそこにあった。
 「ドラゴンっ!」
 愛理は咄嗟にカーテンを閉めて、廊下へと駆け出した。
 「アミル!ドラゴン!逃げるよっ!」
 愛理に怒鳴られ、アミルも部屋から飛び出し、廊下へと向かう。
 その時、窓が吹き飛び、火炎が教室を燃やし尽くす。爆発的な火炎に二人は吹き飛ばされ、教室の扉ごと、廊下へと吹き飛ばされた。
 「あつぅううう!」
 愛理は廊下を転がりながら、肩に提げた自動小銃を手に取る。
 「アミル!反撃準備」
 「ふぇええええ」
 アミルは廊下を這いずりながら、短機関銃に弾倉を突っ込んだ。
 「ど、ドラゴンって・・・何で?」
 アミルの質問に愛理は答えている暇は無いと返す。燃え上がる教室から遠ざかる二人。
 廊下の窓からは燃え上がる街が見える。空には多くの影が飛び回っている。それが全てドラゴンだと愛理は本能的に解った。
 「こんな数のドラゴン・・・どこから?」
 愛理の疑問は当然だった。ドラゴンは基本的に単独行動だ。集団で行動するのはワイバーンと呼ばれる小型のドラゴンぐらいだった。
 愛理は窓に銃口を向ける。それは咄嗟の反応だ。ドラゴンが窓の外に降りて来た。その口には火球がある。ドラゴンは魔法を使い、火球を産み出し、放つ事が出来る。その火炎は鉄さえも溶かす。
 「やらせるかぁああああ!」
 愛理は狙うのも曖昧に撃った。
 銃弾は火球を貫き、大きく開けたドラゴンの口を貫く。ドラゴンの頭は天を向き、身体は落下していく。落ちたドラゴンの上で不完全な火球が爆散した。
 「ハァハァハァ・・・ドラゴンが人間相手に火炎を放っている。食べるのが目的じゃない・・・皆殺し?」
 愛理は窓から見える光景に疑念を抱いた。普通、ドラゴンは人を食う為に襲う。だが、街を手当り次第に焼いているのを見ると、ドラゴンは食べる為に街を襲っているようには見えなかった。
 「何が目的なんだか・・・」
 愛理は校舎から出る為に昇降口に向かった。
 靴を履き替え、外へと出た。
 まるで地獄のような有様だった。自分達の家である校舎も火災が発生しており、体育館の屋根にドラゴンの死体が落下して圧し潰していた。
 警察官が人々に避難を呼びかけている。半端じゃないドラゴンの数に対抗し切れないのだ。
 愛理達も校門から飛び出て、彼方此方で火災の発生している街を駆け抜ける。
 途中で通い慣れた店の前を通った。店は圧し潰されていた。愛理は足を止め、店に向かって呼び掛ける。
 「おい!爺さん!」
 すると圧し潰された店から主人が出て来た。かなりケガをしていたが、無事であった。
 「逃げるよ!」
 愛理が彼にそう言うと、彼は首を横に振る。
 「俺は足で纏いだ。それより、嬢ちゃん、これをやる。餞別だ。大事に仕えよ」
 主人は愛理にM95対物ライフル銃を渡した。そして、瓦礫の上に腰掛ける。
 「爺さんはどうするつもり?」
 「俺にはこの店しか残ってないからな。ここには家族の思い出もある。悪いが・・・離れるつもりはない。店を潰したあいつらを一匹でも道連れにしてやるよ」
 主人はボルトアクションライフル銃を構えた。それは熊撃ちにも用いられる強力な弾丸を使うモデルだった。
 「解った。また来るから無事でね」
 愛理はそう言うと駆け出した。主人は彼女達の背中を見ながら、目に入る血を袖で拭き取り、空に銃口を向けた。
 愛理達は逃げ惑う人々の合間を駆け巡り、破壊された柵から飛び出した。
 「アミル!ゴブリンとかが居るかもしれない。念のため、周囲を警戒して!」
 愛理に言われ、アミルは短機関銃を構えた。
 二人はとにかく住居地区から離れた。
 廃墟となった住宅街へと向かう。無人となった住宅街にはドラゴンの攻撃は無かった。
 しかし、そこはゴブリンの巣となっている事もある為に危険だった。
 愛理は拳銃を構えながら、スーパーマーケットに入った。すでに品物などは無く、荒れ果てた店内。
 「ゴブリンの姿は無いわ。念のため、消毒をしてから、朝までここで隠れるわよ」
 愛理はアミルと共に店内の索敵を済ませ、朝までの時間、店内に留まった。
 
 朝が来た。
 二人は眠る事など出来なかった。疲れ切ったように店の前で朝日を見た。
 「戻る?」
 アミルが不安そうに言う。
 「そうだね・・・どうなったかを確認した方が良い」
 愛理も残して来た店の主人などの安否を気にして、居住地区へと戻った。
 街は酷い有様だった。建物の殆どは燃え、路上に黒焦げになった人であろう死体が転がっている。自衛隊の姿も無く、廃墟と化していた。
 「爺さん」
 愛理は馴染みの店の跡を見た。まるで爆弾でも爆発したような感じに大きな窪地となっていた。
 街中を探るも生存者は居らず、自衛隊も放棄して撤退したのだと解った。
 ドラゴンは徹底的に街を焼いたのだと感じ取り、再び、戻って来る可能性も考えて、二人は居住地区から離れる事を決めた。
 「どこに行くの?」
 アミルが不安そうに尋ねる。
 「一番、近いのは朝霞かな?」
 愛理は地図を眺めながら言う。
 「行った事あるの?」
 「無いわよ。こんな田舎」
 愛理は吐き捨てるように言って、歩き出した。
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