少女はドラゴンハンターになった。

エムポチ

文字の大きさ
6 / 19

エルフの村

しおりを挟む
 二人は朝霞を目指して歩き出した。
 初めて歩く道。
 地図を片手に歩くわけだが、どこに何か居るなんて、まったく分からない。
 愛理は拳銃を片手に常に警戒をした。
 練馬から朝霞までも歩きだとかなりの距離であった。
 ドラゴンの群れに襲われた事も考えると、近くにドラゴンが居る可能性だって否定は出来ない。
 突然、ドラゴンに襲われるとなれば、危険極まり無かった。
 ドラゴンじゃなくても危険は多い。
 多くの魔獣が存在し、それらの中には人間を捕食する種族も多い。
 無論、魔獣全てが危険では無く、中には平穏な魔獣も多い。
 ペガサスやユニコーンなどは見た目が馬と同様に草食動物で人に危害を加える事は少ない。
 エルフも同じだった。妖精族と呼ばれるが、人間と対等に会話が可能な知能を有するのはエルフとドワーフぐらいであった。人間は彼等から異世界の情報を得る為に積極的に接触を続け、会話が可能なまでになった。
 アミルも人間の教育を受けたエルフだった。
 因みにこうした種族を分類する名称はあくまでも人間側が一方的に名付けただけである。
 「愛理、疲れました」
 アミルは疲労困憊と言った感じに瓦礫に座り込む。
 「相変わらず、エルフは体力が無いわね」
 愛理は笑って彼女を見下ろす。
 「仕方がないです。私達の身体はあなた方のように筋肉が付かないのですから」
 「魔法に頼ってばかりだからよ」
 「仕方がないですよ。本来、私達はそうして生きてきたんですから」
 「だから、ドラゴンやゴブリンに怯えながら生きる事になるのよ」
 愛理は呆れたように言うも常に周囲を警戒する。
 僅かな休憩の後、二人は再び歩き出した。
 
 住宅街を疎らになり、荒れた果てた田んぼが連なる場所に来た。
 「愛理・・・感じる」
 アミルが何かを感じ取ったようだ。愛理は即座に周囲の警戒を強める。
 「愛理・・・大丈夫。これは仲間の結界・・・」
 「結界?」
 「うん・・・結界があるのを感じる。ちょっと、行って良い?」
 アミルに尋ねら、愛理は頷く。するとアミルはフラフラと何かを感じ取りながら、歩いて行く。するととある神社の鳥居の前にやって来た。愛理は周辺を見て、そこにゴブリンなどが巣食って無い事を確認した。
 「ここが私達の仲間の村がある」
 アミルが鳥居の前でそう言う。愛理は不思議そうに見渡すが、どこにもエルフの姿は無い。
 「寂れた神社しか無いけど?」
 「結界が張られていて、エルフ以外は見えない」
 「結界って・・・魔法で出来ているの?」
 「そう・・・結界魔法。エルフが他の種族から隠れる為の魔法」
 「なるほど・・・あんただけが入れるの?」
 「私と一緒なら大丈夫。手を握って」
 アミルが差し出した左手を愛理は掴む。そして、アミルは歩き出した。すると鳥居の中に彼女の姿が溶けるように消えていく。それに愛理は驚きながらも彼女を掴んだ手を握りながら、同じように溶け込むように消えた。
 まるで水面を通り抜けたように別の世界がそこに広がる。
 「何・・・ここ?」
 そこは村だった。とても神社の境内とは思えない光景が広がり、愛理は驚く。それを見て、アミルが説明をする。
 「ここは結界の中・・・魔法で拡張された空間です」
 「拡張された空間・・・現実の空間とは違うって事?」
 「はい。魔法で作られた世界です。エルフは身を守る為にこうした空間を作ります」
 愛理は行き交うエルフ達を見る。人に似た容姿ながら、人間からは美しいと言われる彼等。
 「エルフの村ねぇ・・・なるほど・・・人間があんた達を発見が出来ないわけだ」
 エルフは人間と交流を持つ数少ない異世界の種族だが、同時にその美しい見た目もあり、人間から暴力を受ける事も多々あった。その為、彼等は人間との交流を必要最低限にしている。
 行き交うエルフ達は怯えたように愛理を見ている。愛理は少し居心地が悪そうに思いながら、村の中をアミルと共に歩く。すると声が駆けられた。
 「おい。そこの人間」
 愛理が見れば、店先に立つエルフの女が居た。
 「私に何か用?」
 「そうだよ。こっちに来い」
 その物言いに愛理は少し、ムッとしたが、素直に彼女が入った店に入る。
 中は甘い感じのお香が焚かれ、怪しい感じの店だった。
 「危ない物を売ってる店じゃないでしょうね?」
 愛理はその雰囲気に躊躇する。女は大きな水晶の玉が置かれた席に座り、愛理を呼んだ。
 「安心しろ。ただの占いの店だ」
 「占い?」
 愛理が訝し気に答えた時、アミルが小声で愛理の耳に伝える。
 「エルフの占いは魔法を使って行うので、物凄く当たります」
 「へぇ・・・そういう事・・・」
 愛理は女の前に座った。
 「あんた、私を占おうって言うの?」
 「すでに占いは出ている。あんた、ドラゴンの群れに襲われただろ?」
 「それは占いじゃなくて、結果だ。そんな珍しい話、すぐに伝わるだろ?」
 「ははは。用心深いガキだね」
 「ガキって・・・あんただってそう年上には見えないよ」
 「悪いがエルフは老いないからね。私は100歳を超えるよ」
 長寿のエルフは見た目では年齢が解らない。愛理は改めて知った。
 「犬とかと同じだね。見た目で年齢が解り難い」
 「エルフを家畜と一緒にしないでおくれ。あんたらが解り易いだけだ」
 「それで、あんたの名前は?」
 「年上の者への口の利き方じゃないね。まぁ、良い。呼んだのは私だ。私から名乗ろう。私は・・・巫女のイヴリン。あんたの名前は?」
 巫女と聞いて、アミルが驚く。
 「巫女様なのですか?」
 それに愛理も興味を抱く。
 「巫女がそんなに凄い事なの?」
 アミルは興奮して話す。
 「巫女様はエルフの中では最上位の力を有したお方ですよ」
 「最上位ねぇ・・・私は江藤愛理。こっちはアミル」
 「江藤愛理にアミルか。お前等を呼んだのはこれからの事を伝えたかったからだ」
 「これからの事?」
 「あぁ・・・お前等・・・これからどうするかなんて、決めてないだろ?」
 「解ってるじゃない。正直、朝霞に行っても、一からやり直しだからね」
 「だったら、旅に出ないかい?」
 「旅?・・・悪いけど、今日を生きるのでも大変なんだよ?」
 愛理は呆れたように言う。事実、食糧だって心許ない状況で旅もへったくれも無かった。
 「そうかい。だが・・・この世界が崩壊するのを防ぐって話だったら?」
 「崩壊・・・どういう事?」
 「簡単さ・・・この世界が壊れて無くなるって事さ」
 「あっさり言うわね。確かにおかしな事になっているけど・・・それが原因?」
 「その通り。二つの世界が合わさったのが今の状況ってのは解るよね?」
 「あぁ、ラジオで聞いた。偉い学者さんでもわけが解らんってね」
 「そうだ。誰にも解らなかった。だが、私は占いで見た。この元凶をね」
 その言葉に愛理は何かに気付き、口にする。
 「ドラゴン?」
 その一言にイヴリンが驚く。
 「なぜ・・・知っている?」
 「何故も何も・・・この前、殺したドラゴンがそう言っていた」
 「ドラゴンが言っていた?・・・そうか、あんた、ドラゴンを殺してるからね」
 「胡散臭い話だったから、信じてはいないけどね」
 「ふふふ。そうだろうね。だが、そいつの言った事は多分、真実だ」
 「へぇ・・・じゃあ、あのドラゴンには悪い事をしたわね」
 「なに・・・ドラゴン相手に情けは無用だよ」
 イヴリンは笑う。
 「それで・・・旅に出るってのは?」
 愛理の問い掛けにイヴリンは答える。
 「あぁ・・・私の占いでは元凶になるドラゴンが西に居る。西にこの世界の世界樹があるはずだ」
 「西って漠然としてるわね。どのぐらい西なの?大阪?九州?それとも海外?」
 「そうは遠くないはずだ。多分・・・大阪か京都ぐらい」
 「もっと明確にならないの?」
 「占いなんて、曖昧なもんだよ」
 「魔法を使ってるんでしょ?」
 「そう言うな。まったく知らない知識を得ようとしているのだからな」
 愛理は納得がいかない感じに頬を膨らませる。
 「とにかく・・・あんた達に元凶を取り除き、世界を戻して欲しいんだよ」
 「難しい事を言うわね。私達じゃなくて、自衛隊に言うべきよ」
 「言ったさ。だが、自衛隊では確認が出来なかったの一言でね」
 愛理は少し考え込む。
 「自衛隊に発見が出来なかったら・・・私達じゃ、無理かも」
 「無理でも良いさ。少しでも何とかしたいと思っているだけだからね」
 イヴリンの言葉に愛理は少しムッと怒る。
 「酷い話じゃない。人を大変な旅に出そうって言うのに」
 そう言われてイヴリンはハッと気づいたように謝る。
 「すまない。すまない。代わりと言ったらなんだが、あんた達の旅の足しにでもなるだろう」
 イヴリンは金色の腕輪を出した。
 「高そうな腕輪ね。金?」
 「純金だよ。売ってもそれなりになるだろう。それよりもこれは魔術式が刻まれている。アミルが使えば、魔力を強化してくれる。そう言う意味でも役に立つだろ」
 「なるほど・・・アミルの役に立たない魔法が役立つかもって奴ね」
 愛理に言われて、アミルが怒る。
 「役に立ってるでしょ?火だって起こせるし!」
 「ライター要らずね」
 愛理はそう言って、大笑いをした。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

転生後はゆっくりと

衣更月
ファンタジー
貧しい集落で生まれたリリは、生まれた瞬間から前世の記憶があった。 日本人特有の”配慮”に徹した赤ん坊を演じていたことで、両親から距離を置かれた挙句、村人からも「不気味な子」として敬遠されることに…。 そして、5才の誕生日に遠くの町に捨てられた。 でも、リリは悲観しない。 前世の知識チートは出来ないけど、大人メンタルで堅実に。 目指すは憧れのスローライフが出来るほど、ほどほどの守銭奴としてリリは異世界人として順応していく。 全25話(予定)

主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します

白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。 あなたは【真実の愛】を信じますか? そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。 だって・・・そうでしょ? ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!? それだけではない。 何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!! 私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。 それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。 しかも! ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!! マジかーーーっ!!! 前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!! 思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。 世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。

「貧相な小娘」と罵った第一王子へ。番(つがい)は貴方ではなく、国王陛下(お父様)でした

しえろ あい
恋愛
「お父様、わたくし、あの方と目が合った瞬間、分かってしまったのです」 十六歳のデビュタントの夜、ルーセント侯爵令嬢フェリシアを待っていたのは、残酷な罵倒だった。第一王子カシウスは、可憐な白いドレスを纏った彼女を「貧相な小娘」と呼び、己の番(つがい)であることを真っ向から否定する。 会場に響く冷笑と、愛用の刺繍に込めた自信さえ打ち砕くような屈辱。しかし、絶望の淵に立たされた彼女を見つめていたのは、王子ではなく、圧倒的な威厳を放つ「ある男」だった。 魂を焦がすような熱い視線が重なり、静まり返る謁見の間。この出会いが、王室を揺るがす大事件の幕開けになるとは、まだ誰も知らない。自身の価値を否定された少女が、真実の愛によって世界で最も幸福な王妃へと駆け上がる、逆転溺愛ストーリー。 ※小説家になろう様にも投稿しています※

異世界に転移してしまった私、古民家をもらったのでカフェを始めたら大盛況。国王陛下が頻繁に来るのですが、どうしたらいいですか?

来栖とむ
ファンタジー
ブラック企業で疲れ果てた30歳の元OL・美里(みさと)が転移した先は、見渡す限りの深い森。 そこで彼女が授かったのは、魔女の称号……ではなく、一軒の**「日本の古民家」**だった! 亡き祖母が遺したその屋敷には、異世界では失われたはずの「お醤油」「お味噌」「白いお砂糖」という禁断の調味料が眠っていて――。 「えっ、唐揚げにそんなに感動しちゃうの?」 「プリン一口で、国王陛下が泣いちゃった……!?」 おにぎり、オムライス、そして肉汁溢れるハンバーグ。 現代日本の「当たり前」が、この世界では常識を覆す究極の美食に。 お掃除のプロな親子や、お忍びの王様、さらにはツンデレな宮廷料理人まで巻き込んで、 美味しい香りに包まれた、心もお腹も満たされるスローライフが今、始まります!

3歳で捨てられた件

玲羅
恋愛
前世の記憶を持つ者が1000人に1人は居る時代。 それゆえに変わった子供扱いをされ、疎まれて捨てられた少女、キャプシーヌ。拾ったのは宰相を務めるフェルナー侯爵。 キャプシーヌの運命が再度変わったのは貴族学院入学後だった。

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

転生『悪役』公爵令嬢はやり直し人生で楽隠居を目指す

RINFAM
ファンタジー
 なんの罰ゲームだ、これ!!!!  あああああ!!! 本当ならあと数年で年金ライフが送れたはずなのに!!  そのために国民年金の他に利率のいい個人年金も掛け、さらに少ない給料の中からちまちまと老後の生活費を貯めてきたと言うのに!!!!  一銭も貰えないまま人生終わるだなんて、あんまりです神様仏様あああ!!  かくなる上はこのやり直し転生人生で、前世以上に楽して暮らせる隠居生活を手に入れなければ。 年金受給前に死んでしまった『心は常に18歳』な享年62歳の初老女『成瀬裕子』はある日突然死しファンタジー世界で公爵令嬢に転生!!しかし、数年後に待っていた年金生活を夢見ていた彼女は、やり直し人生で再び若いままでの楽隠居生活を目指すことに。 4コマ漫画版もあります。

短編)どうぞ、勝手に滅んでください。

黑野羊
恋愛
二度も捨てられた聖女です。真実の愛を見つけたので、国は救いません。 あらすじ) 大陸中央にあるルオーゴ王国で、国を守る結界を維持してきた聖女ロザリア。 政略のため王太子と婚約していた彼女は、突如『真の聖女』が現れたとして婚約を破棄され、聖女の座を追われてしまう。さらに、代わりに婚姻しろと命じられた聖騎士からも拒絶され、実家にも見捨てられたロザリアは、『最果ての修道院』へと追放された。 けれど彼女はそこで、地位や栄光、贅沢などとはほど遠い、無条件に寄り添ってくれる『真実の愛』と穏やかな日々を手にいれる。 やがて聖女を失った王国は、崩壊へ向かっていき――。 ーーー ※カクヨム、なろうにも掲載しています

処理中です...