少女はドラゴンハンターになった。

エムポチ

文字の大きさ
14 / 19

名古屋

しおりを挟む
 横浜港から出港した護衛艦はゆっくりと沖合を進んだ。
 予定では呉に入港して、修理と改修を受ける予定なのだそうだ。
 愛理達は途中で大阪港で降ろして貰う事になっていた。
 だが、2日目に船は名古屋港へと寄港した。
 愛理達は艦長に呼ばれる。
 「申し訳ない。急遽、別の任務が入って、呉に向かわなくなったわ」
 艦長に謝られて、愛理は慌てて、申し訳なさそうにする。
 「本当なら大阪まで連れて行く予定だったけど、名古屋港で降りて貰う事になったけど、大丈夫?」
 「仕方がありません。幸い、装備も食料もいただいたので」
 「うちじゃ使わない装備だけどね。あなた達の無事を祈っているわ」
 艦長にそう言われて、愛理達は船を降りた。
 名古屋港とは言え、そこは金城ふ頭と呼ばれる場所だった。
 主に貨物船や商船が出入りする場所であり、名古屋の市街地からは遠く離れていた。
 「トラックが多く行き交うわね」
 愛理はトラックを眺めながらトボトボと埠頭を歩く。
 「この辺は思った程、地形の変化が無かったようですね」
 アミルが言うように異世界の風景はあまりなかった。
 埠頭にある展示場などの観光施設は無事であり、物資の貯蔵などに用いられていた。
 「あおなみ線・・・鉄道みたいね?」
 一般的な電車はこの時代、殆どが動かなかった。
 理由は電気の不安定供給と線路の維持が難しいからだ。
 しかし、高架でディーゼル車などを用いた鉄道システムがある所はその限りでは無かった。
 つまり、あおなみ線は現役の鉄道であり、駅も生きていた。
 「これに乗ったら、名古屋の市街地まで行けますか?」
 愛理は駅員に尋ねる。彼は笑顔で「そうだよ。終点の名古屋駅だけは建物の損壊が激しくて、無理だけど、手前までは行けるよ」と答えた。それを聞いて、愛理は駅員から切符を買う。
 切符は自動改札口が不動なので、昔のように切符切りで厚紙で作られた切符が切られる。
 「この辺って魔物は出ないんですか?」
 愛理の質問に駅員は答える。
 「出るよ。だけど、この辺は自衛隊以外にも有志による猟友会があるから、彼等が駆逐してくれるから、数は物凄く減っているんだ。多分、他の地域から来た魔物ぐらいしか居ないんじゃないかな?」
 愛理達はそれを聞いて、少しホッとしながら、ホームに向かい、列車に乗り込む。
 あおなみ線はほとんど高架を走る。高い位置から見える街並みは平坦で森と街が混在している。
 列車には何人かの客が乗っている。誰もが慣れているのか、眠って居たり、本を読んだりしている。
 時折、銃声が聞こえた。多分、魔獣を狩っているのだろう。それも日常なのか。誰も気にしない。
 アミルは初めて乗った列車に興味津々のようだ。
 「愛理、車と違って、滑らかに動いています」
 「あんまりはしゃがないで。恥ずかしいから」
 そんな他愛もない会話をしているとやがて、終着駅のささしまライブ駅に到着した。
 駅に降りた二人は周りを見渡した。
 ホテルやマンションがあり、比較的、街中に来た感じがした。
 「高層ビルが多いけど、東京と同じで、殆ど、使われていない感じね」
 愛理の言葉通り、高層ビルの殆どは倒壊したり、かなり損害を受けている事が多かった。そうで無くても電気が無ければ、人が住むのが難しい為、放棄された建物が多い。こうした場所にゴブリンのような魔獣は棲み付く事が多いので要注意だった。
 「東京と同じで、田畑も出来ないこうした都市部は放棄されている事が多いのだけど」
 愛理はそう思いながら名古屋駅に向かって歩き始める。
 人の姿はあまりない。駅は稼働していたが、都市としては機能はしていないようだった。
 時折、パトロールの為に自衛隊や警察の車両が走って行く。彼等は女の子が二人で歩いている姿を見て、心配して声を掛ける。その度に愛理は銃を見せて、大丈夫だと答えた。
 アミルは何かを感じ取り、歩き出す。
 こうした人の住まない場所にはエルフの住処があるのだとアミルは言う。
 それは以前に行ったエルフの村のように結界の中にある。
 アミルはエルフの気配を追い掛けて、那古野まで来た。そこには商店街があり、その入り口付近でアミルは呪文を唱えた。すると、空間に裂け目が出来た。
 愛理とアミルはその中に入る。
 中にはエルフの村が広がっていた。独特な様式の建物が並び、エルフが行き交っていた。
 突如、入って来た愛理達に彼等は驚いている。
 「相変わらずエルフはこうして、引き籠っているわけね」
 愛理は呆れたように彼等を見渡す。
 するとエルフの男が彼女達の前にやってきた。その手にはM4A1自動小銃が握られている。
 「お前等、どこから来た?」
 彼は愛理に向かってそう怒鳴る。
 「五月蠅いわね。東京からよ。それより、ドラゴンの事について話せる奴は居る?」
 愛理は向けられた銃口を無視して、尋ねる。その様子にエルフの男はたじろぐ。
 アミルは慌てて、彼に声を掛けた。
 「あの・・・私達は東京から旅してきました。世界を崩壊させようとするドラゴンを探しています。この辺のドラゴンについて知りたいだけです」
 同じエルフのアミルの言葉にエルフの男は銃口を降ろす。
 「あぁ・・・世界を崩壊させるドラゴンと言うのは初耳だが・・・まずは村長に会ってくれ」
 エルフの男は愛理達を連れて、ある建物へと向かった。
 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

転生後はゆっくりと

衣更月
ファンタジー
貧しい集落で生まれたリリは、生まれた瞬間から前世の記憶があった。 日本人特有の”配慮”に徹した赤ん坊を演じていたことで、両親から距離を置かれた挙句、村人からも「不気味な子」として敬遠されることに…。 そして、5才の誕生日に遠くの町に捨てられた。 でも、リリは悲観しない。 前世の知識チートは出来ないけど、大人メンタルで堅実に。 目指すは憧れのスローライフが出来るほど、ほどほどの守銭奴としてリリは異世界人として順応していく。 全25話(予定)

主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します

白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。 あなたは【真実の愛】を信じますか? そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。 だって・・・そうでしょ? ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!? それだけではない。 何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!! 私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。 それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。 しかも! ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!! マジかーーーっ!!! 前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!! 思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。 世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。

「貧相な小娘」と罵った第一王子へ。番(つがい)は貴方ではなく、国王陛下(お父様)でした

しえろ あい
恋愛
「お父様、わたくし、あの方と目が合った瞬間、分かってしまったのです」 十六歳のデビュタントの夜、ルーセント侯爵令嬢フェリシアを待っていたのは、残酷な罵倒だった。第一王子カシウスは、可憐な白いドレスを纏った彼女を「貧相な小娘」と呼び、己の番(つがい)であることを真っ向から否定する。 会場に響く冷笑と、愛用の刺繍に込めた自信さえ打ち砕くような屈辱。しかし、絶望の淵に立たされた彼女を見つめていたのは、王子ではなく、圧倒的な威厳を放つ「ある男」だった。 魂を焦がすような熱い視線が重なり、静まり返る謁見の間。この出会いが、王室を揺るがす大事件の幕開けになるとは、まだ誰も知らない。自身の価値を否定された少女が、真実の愛によって世界で最も幸福な王妃へと駆け上がる、逆転溺愛ストーリー。 ※小説家になろう様にも投稿しています※

異世界に転移してしまった私、古民家をもらったのでカフェを始めたら大盛況。国王陛下が頻繁に来るのですが、どうしたらいいですか?

来栖とむ
ファンタジー
ブラック企業で疲れ果てた30歳の元OL・美里(みさと)が転移した先は、見渡す限りの深い森。 そこで彼女が授かったのは、魔女の称号……ではなく、一軒の**「日本の古民家」**だった! 亡き祖母が遺したその屋敷には、異世界では失われたはずの「お醤油」「お味噌」「白いお砂糖」という禁断の調味料が眠っていて――。 「えっ、唐揚げにそんなに感動しちゃうの?」 「プリン一口で、国王陛下が泣いちゃった……!?」 おにぎり、オムライス、そして肉汁溢れるハンバーグ。 現代日本の「当たり前」が、この世界では常識を覆す究極の美食に。 お掃除のプロな親子や、お忍びの王様、さらにはツンデレな宮廷料理人まで巻き込んで、 美味しい香りに包まれた、心もお腹も満たされるスローライフが今、始まります!

3歳で捨てられた件

玲羅
恋愛
前世の記憶を持つ者が1000人に1人は居る時代。 それゆえに変わった子供扱いをされ、疎まれて捨てられた少女、キャプシーヌ。拾ったのは宰相を務めるフェルナー侯爵。 キャプシーヌの運命が再度変わったのは貴族学院入学後だった。

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

短編)どうぞ、勝手に滅んでください。

黑野羊
恋愛
二度も捨てられた聖女です。真実の愛を見つけたので、国は救いません。 あらすじ) 大陸中央にあるルオーゴ王国で、国を守る結界を維持してきた聖女ロザリア。 政略のため王太子と婚約していた彼女は、突如『真の聖女』が現れたとして婚約を破棄され、聖女の座を追われてしまう。さらに、代わりに婚姻しろと命じられた聖騎士からも拒絶され、実家にも見捨てられたロザリアは、『最果ての修道院』へと追放された。 けれど彼女はそこで、地位や栄光、贅沢などとはほど遠い、無条件に寄り添ってくれる『真実の愛』と穏やかな日々を手にいれる。 やがて聖女を失った王国は、崩壊へ向かっていき――。 ーーー ※カクヨム、なろうにも掲載しています

転生『悪役』公爵令嬢はやり直し人生で楽隠居を目指す

RINFAM
ファンタジー
 なんの罰ゲームだ、これ!!!!  あああああ!!! 本当ならあと数年で年金ライフが送れたはずなのに!!  そのために国民年金の他に利率のいい個人年金も掛け、さらに少ない給料の中からちまちまと老後の生活費を貯めてきたと言うのに!!!!  一銭も貰えないまま人生終わるだなんて、あんまりです神様仏様あああ!!  かくなる上はこのやり直し転生人生で、前世以上に楽して暮らせる隠居生活を手に入れなければ。 年金受給前に死んでしまった『心は常に18歳』な享年62歳の初老女『成瀬裕子』はある日突然死しファンタジー世界で公爵令嬢に転生!!しかし、数年後に待っていた年金生活を夢見ていた彼女は、やり直し人生で再び若いままでの楽隠居生活を目指すことに。 4コマ漫画版もあります。

処理中です...