姫の仕事は身辺警護です

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属国の姫

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 圧倒的な軍事力を誇示し、大陸全土に脅威を与えるウラド帝国。
 その若き帝王アミュール。
 若くして、帝位を継ぎ、周辺諸国を蹂躙した帝である。
 傍若無人、極悪非道など、彼の事を悪く言う者は多く居る。
 だから、彼は常に命を狙われていた。
 そんな彼に周辺国からは政治的な目的の為に婚姻が進められた。
 多くの姫が彼の下に集まる。
 無論、彼女達の目的は母国の利益の為である。
 だが、アミュールは正妻をまだ、取らなかった。
 多くは側室と言う立場に甘んじていた。無論、正妻の座は空白なのだから、誰がそこに座ってもおかしくはない。
 そこに一人の姫が嫁いできた。
 小国ローランド王国の第一王女サラである。
 小柄な体躯の彼女は緋色の髪と瞳をしており、それが白い肌に映える美少女であった。
 だが、嫁いできたからには彼女も側室の一人に並ぶのである。
 アミュールはほとんど、側室とは交流を持たない。
 ある意味では属国とした国の姫の誰かを特別扱いにする事を忌避しているのか。それとも命を狙われると考えているのか。誰にも真意は解らない。
 サラは王宮内に部屋が与えられた。傍には国から連れて来た侍女とここで用意された執事と侍女、兵であった。
 サラが連れて来るのを許されたのは3人の侍女だけ。
 だが、この3人の侍女。戦闘訓練を受けた腕利きの侍女達である。
 褐色の肌に白い髪を持つ美女は密林奥から連れて来たミュー。
 野生的で男性を力で屈服させるとするアマゾネスの戦士なのである。
 そして、理知的な眼鏡美人のアリア。
 暗殺や窃盗、諜報を生業にする一族の一人であり、暗器の扱いに長けている。
 最後に気弱で根暗な感じのする少女がマリ。
 15歳に満たないような容姿だが、千年を生きる魔女であり、他を寄せ付けない魔力を有する。
 この3人はサラを守る為に志願したのである。
 サラとこの3人は彼女が幼少期から仲が良く、サラからすれば、お姉さん的な立ち位置であった。
 サラもこの三人から色々と手解きを受けているため、戦闘技能は高く、並大抵の騎士では太刀打ちが出来ぬ程に優れていた。
 だが、この事は王国内において、極秘事項であり、それは当然、帝国にも極秘とされた。
 サラはあくまでも普通の女の子だし、三人はただの侍女。それだけだった。
 
 サラが嫁いできた日。
 大抵の姫は最初で最後となる帝王との謁見がある。
 サラは目いっぱい着飾る。
 連れて来た三人の侍女はオシャレにあまりセンスが無いため、この辺は帝国の侍女達が行う。
 「姫様はお綺麗な髪をしていますから、こちらの服の色がお似合いかと」
 珍しい緋色の髪を持つ姫に帝国の侍女達は着せ替え人形を楽しむように姫を着替えさせる。
 化粧もして、早速、謁見の間へと向かう。
 帝王の謁見の間は王宮内でもそれなりに大きなホールであった。
 属国から嫁いできた姫の謁見に列席したのは極僅かな臣下のみだった。
 帝王が玉座に鷹揚に腰掛ける前にサラは頭を下げて、傅く。
 「ローランド王国から参りましたサラと申します」
 その挨拶にアミュールは一言「うむ」とだけ答える。
 アミュールの傍には側近のコーベル男爵が立つ。
 彼は武勲多き騎士である。帝王の身辺警護として、そこに立つ事を許された者。
 帝王の命を狙う者は内外に多い。
 どんな時にでも帝王を守れる者は必要だった。
 コーベル男爵は帝王の信頼を得た数少ない臣下の一人だった。
 それが過去形である事が今、行われる。
 コーベルは突如として、腰に携えたサーベルを引き抜き、帝王の首へと一閃させたのである。
 達人とまでされた者の一撃を容易に躱す事など、出来るはずが無い。ましてや帝王は玉座に鷹揚と腰掛けているのだ。確実な一撃のはずだった。
 カコーン
 コーベルの腕に叩きつけられたのはサラが被っていたティアラであった。
 王国の姫として、純銀で宝石が幾つも付いたティアラはそれなりの重量がある。それがコーベルの腕に激しく投げつけられたのだ。
 コーベルのサーベルは帝王の頭の上を通り過ぎた。
 慌てたコーベルは返す刀で帝王の首を狙う。
 流石に帝王は玉座から転げるように身を逃がす。だが、コーベルは逃がさない。
 「この反逆者がぁああああ!」
 そこに飛び掛かったのがサラであった。
 彼女は捨て身でコーベルに体当たりをする。
 だが、小柄な少女の体当たり程度で怯むコーベルではない。
 「小娘がぁぁあああ!」
 邪魔をされて、苛立ちと共に彼はサラに斬り付ける。
 その一撃をサラは装飾品である腕輪で防ぐ。
 それは紙一重の技であった。
 一撃を防がれたコーベルは一瞬、怯んだ。
 その時には警護の兵士達が槍をコーベルに向けていた。
 「無念・・・」
 コーベルはこれ以上は無駄だと確信したのか、サーベルを捨てて投降した。
 「帝王様、御無事ですか?」
 サラは自らを省みる事なく、床に倒れ込んだアミュール帝王を見た。
 「う・・・む。大儀であったな。サラとか言ったな?」
 帝王は驚きを隠せぬ表情のまま、サラに尋ねた。
 「はい。ローランド王国より嫁いで参りました。サラです」
 二人は僅かな時、見つめ合った。

 謁見の時間が終わり、サラは自室へと戻る。
 色々な事があったが、帝王にはかなりの好印象を与える事が出来たと侍女達と共に歓談をしている。
 帝王暗殺を阻んだなんて、姫は今までに居たはずも無い。
 ましてや自らと犯人に飛び掛かるなんて、あり得なかった。
 だが、こうなれば、サラの株は急上昇しているに決まっている。
 嫁いできた甲斐があったわけだ。
 その夕刻、帝王から招集の命が下った。
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