愛夫弁当はサンドイッチ─甘党憲兵と変態紳士な文官さん─

蔵持ひろ

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 早まった。寝た子を起こしてしまったかもしれない。キアランに体を揺らされてアレックスはそう焦っていた。それほどまでにキアランの攻めには容赦がなかったのだ。

「あっあっあっあっ……はげし……あぅっ……」

 うねる肉壁の抵抗を容赦なく振り切って最奥まで突かれる。無意識に離れようとするとそれを動きを利用されペニスが押し入り結果、アレックスの腰が上がってぴったりとキアランの下半身にくっつく形になる。

「アレックスさん……アレックスさん……貴方の中、気持ちいい……もっとください……」
「かっ……はぁっ……あっ……く……」

 ゴリゴリと硬くなった剛直が前立腺を抉る。アレックスのペニスはキアランの薄くなめらかな腹に擦られ先走りが溢れ続けている。

「どうですかっ……?貴方を、気持ちよくできていますか?……んっ……」
「いい……いいから……続けろよっ……」

 嵐の中にこの身が投げ出されてしまったように翻弄される。けれども不快じゃない、もっと中を擦って欲しい。初めての行為であるはずなのにそう思っていた。性を吹き出し、頭を真っ白にさせる。
 そうして限界を迎えた二人は、互いに達した後ベッドで眠りにつくのだった。


「……喉が痛い……」

 意識がぼんやりと覚醒していく。隣にはところどころカピカピで硬くなったシーツに横になり、彫刻のように美しい顔をこちらに向けている恋人がいた。朝から眩しい寝姿だ。
 思い出せばムードもへったくれもない行為だった気がする。
 アレックスが何度も流れをぶった斬ってキアランを止めたり。今度はすけべな雰囲気のまま行為をしたいとは思うが、キアランに全てを任せたらとんでもないところまで進んでしまいそうだ。……では次はアレックス主導で行くか。色っぽい雰囲気を作るなんて久しぶりすぎてどうしたらいいかわからないが、やるしかない。

「……いつ見ても綺麗な顔だな」
「ありがとうございます」

 寝起きくらい醜男にならないのかと思った呟きが本人に聞こえてしまっていたらしい。うっすらと瞳を開いて返事をしている。

「はじめてで、あなたを気持ちよくさせられて良かった」
「……嘘だろ?」

 あんなにアレックスを乱した手管で初心者だとは恐れ入る。イメージトレーニングでもしていたのだろうか。だとしたら器用すぎはしないか。

「どこか具合の悪いところはありませんか?」
「ん、いいや?伊達に鍛えてないしな」

 尻の違和感も起きて体を動かしたらすぐなくなるだろう。それよりも自分の腹が空腹を訴えている。食事を摂りたい。

「よいしょ……」
「!待ってください私が持ってきますから」

 お腹がなるのを聞いていたのかキアランがいつもより素早く動いてキッチンへと向かっていった。皿同士が控えめに鳴る音や、食材を取り出す音などがくぐもって聞こえてくる。
 しばらく待っていたが、ふとキアランの弁当が思い浮かんだ。弁当として持ってきていたバゲット丸々のとんでもない大きさのサンドイッチだ。……まさか起き抜けにそんなボリューム満点の朝食を出す気じゃないだろうか。

「いやいや常識人なあいつに限ってそんなことは……」
「アレックスさん?」

 やけに作るのが早い。嫌な予感がして寝室のドアを見やると、バゲッドではないにせよ食パン1斤分使ったくらいのミックスサンドを皿に山盛りで持ってきた。ベッドサイドにそれを置いた後コーヒーを持ってくる。

「さあ召し上がれ。味には自信がありますよ」
「お、おう……」

 はじめは圧倒されていたが、一口食べて見ると案外いけてアレックスは安心した。その上キアランが半分以上平らげたので皿はあっという間に空になった。

「あー食った食った……」
「後片付けしますので休んでいてくださいね」
「おう……」

 作ってもらったのだから片付けは自分がしようと腰を浮かせたら、風のような速さで対応された。やることがなくて手持ち無沙汰になる。アレックスは寝室を見渡した。
 ここはベッドとサイドチェストしかない。服や生活に必要なものは別の部屋に置いてあるのだろうか。
 昨夜は行為に夢中になって……というかキアランの一挙手一投足に集中していてわからなかったが、ずいぶん簡素な部屋である。気温もちょうど良い。家自体が断熱性能が高いのかもしれない。

「ああ……そのままだ……」

 乳首を口淫され、アレックスが手淫した時に抜け殻のように置いてけぼりにされた衣服たちが床にある。流石にそのままにはしておけず、拾って一枚一枚畳んでいく。最後に残ったのはキアランの腰紐だ。貴族たちがつけるような金属の飾りはなく、元となる丈夫な綿地と艶やかな絹糸で刺繍が施されている。
 ふと、先ほど考えていたことが思い浮かんだ。

「主導……主導権を持つなぁ……」

 いまいちセックスをする上でそのやり方がわからないが、護衛や戦闘訓練をする上ではなんとなくわかる。相手の動きを自分の思うがままにして攻撃させなければいいのだ。つまりはキアランがアレックスに触れるのを極力抑えて、アレックスが積極的にキアランを愛する。セックスに帰るとそんな感じか。
 これを使ってみたらどうか。なんとなくそんな考えが閃き、途端に体がうずきだした。昨晩何回も達したというのに現金な体だ。しかも受け入れるのは初めてだったというのに。それも一重にキアランの手腕だろう。

「アレックスさん……?どこか具合がよろしくないのですが?やはり無理をさせてしまいましたか」
「いっ……いや!そんなことはないっ」

 慌てて掛け布団の下に隠してしまった腰紐に気が付かず、こちらに意識が向かっている。
 キアランの手には体を洗うための道具が。片付けのついでに湯を張った洗面器とタオルを持ってきてくれた。風呂に入るのにも疲れるだろうからというキアランの心遣いだろう。
 咄嗟のことでどうして腰紐を隠してしまったのか。今更出すのもおかしいし、隠したままにしておく。あとで戻せばいいと思っていたが常にピッタリとくっついているキアランによってそのタイミングは訪れることはなかった。
 こうして午後もダラダラとベッドの中で眠りにつくかと思ったが、キアランの肉体の変化によって遮られた。そう、下半身が萌していたのだ。

「アレックスさん……もう一度、いいですか?」

 すりすりと唇に触れるだけのキスをされると、伺いを立てられる。そのまま口付けをしていた二人だったが、キアランがアレックスの枕をどかそうとした時にそれは見つかった。

「腰紐……?どうしてこんなところにあるのですか?」
「まぁ……な……昨日のリベンジをさせてくれないか?」
「リベンジですか。ふふ、アレックスさんのやりたいように」

 キアランはまるでクリスマスのプレゼントを前に笑みを浮かべる子供のような表情を浮かべた。

 アレックスの手によってキアランの腕は背中の方に拘束された。あくまで数日後の文官の仕事に支障が出ないように緩めに、跡がつかないように。キアランは拘束を解くという野暮なことはしないだろう。

「痛くないか?」
「全く。それよりもアレックスさんがこうしたかったなんて驚きです。SMにご興味があるのですか?」
「ばっ……違う!こうしたらあんたは手が出せないだろ?」

 アレックスは誤魔化しながらそういうと、キアランの下着を脱がしにかかる。流石に興奮はしていないのか陰部は落ち着きを取り戻している。触れてみると生き物の一部だから生暖かい。
 己で慰めるようにキアランの陰茎を手で扱き始める。

「ふふ……こうやって触れられるのがお好みなのですね……勉強になります」
「黙っておけって……」
「ああ……そこ、気持ちいいです……」
「ったく……」

 いちいち茶々を入れられるがなんとか愛撫に集中していく。キアランは気持ちいいと思った場所を素直に申告してくるので、それに合わせて扱く速度や力の入れ方、触れる場所を変えていく。特に亀頭あたりがお気に入りらしく、ちょうど良い加減で撫でると先走りがぷくりと浮き出してくる。
 昼間は美しく潔白な雰囲気を醸し出す目の前の恋人は、今は妖艶でこちらを誘い込むような色気をダダ漏れにしている。夜の彼を知っているのは自分だけだという優越感が湧き上がる。媚薬で流されて手淫した時とは違う、セックスのための行為。
 そう自覚した途端、尻の奥が疼いた。

「アレックスさん?」

 様子がおかしいと思ったのだろう、キアランが尋ねてくる。その声も耳に入らず、アレックスは自身の体の狭間に手を伸ばした。

「ん……昨日今日のことだからまだ柔らかいな……」

 武器を振るい、力仕事で太く無骨な指を柔らかい肉の体内に入れていく。最初の筋肉で囲まれている入り口は硬かったが、ゆっくりと深呼吸しながら入れると大丈夫だった。少しの違和感があるが耐えられる程度だ。
 少し前までは絶対に無理だと思っていたのに、恋人の淫靡な姿を見て興奮しない男がいるだろうか。アレックスは完全に彼に無性に抱かれたくなってしまっていた。

「アレックスさん、力んで見てください。奥の方まで入ってくれますよ」
「ああっ……んっ……ん」

 アドバイスに従って尻に力を入れると、蠢動するアナルが指を飲み込んでいく。根本まで入ると、ゆっくりと出していく。爪先ギリギリまで抜いて、また奥まで入れる。それを繰り返していくと徐々にだが指が3本入るまで解れて行った。

「そうそう……ペニスの側の浅いところを擦ってみてください」
「助言はっ……いいっ……んうっ……」

 つんとした返事をしてしまったが、言われた通りの場所を探るとくるみ大のしこりが見つかる。指先でつつくと覚えのある感覚がアレックスを襲う。これは快感だ。指を動かすのをやめられなくなる。解すだけだったそこは、快感を得る器官へと変化していった。

「んっ、んっ……ああっ……そろそろっ挿れるっ……ぞ……」

 キアランのものを数回こすって入れられる硬さまでにする。体に跨って片手を添えながら柔らかい後孔へ納めていく。キアランの亀頭が全ておさまると、内腿がしまっているのが見えた。顔を見ると、達してしまいそうなのを我慢しているように見える。それほど気持ちいいと思ってくれていたのかと思うと嬉しさもひとしおだ。
 アレックスはぎこちないながらも腰を上下に振り始めた。自身が気持ちよくなるよりも先にキアランが反応するのを重要視していた。一度抜くくらい大きく上に上がったかと思うと、体重をかけて下がる。それを繰り返していくうちにアレックス自身の気持ちいいところも擦っていった。

「あっ……んく、あっ……」
「ふふ……アレックスさんの中がうねっていますね」
「言うんじゃっ……ないっ!……」

 からかうように自分の状態を実況されて後孔の入り口がきゅっと締まる。恥ずかしさだ。決して言葉で煽られて感じてしまったからではない。
 それを隠すように体の動きを激しくする。当然快感も増すわけで、アレックス自身が意識せずとも声が上がってしまう。

「あっ……んんっ……はっ……クソッ……」

 罵り声さえ甘い響きとなりキアランに届いてしまう。アドバンテージがあるはずなのにキアランのペニスによって強い川の流れに翻弄される一枚の葉っぱのように頼りなくなってしまう。体内の快感に、長年鍛えられた筋肉は関係がなかった。

「もうそろそろ……限界です」
「ん……あ?」

 傍目には無様に腰を振っているだろう所を熱心に見つめられて、それでもまだこんなむさい男の姿を見て局部をバキバキに立てていられるなと少し感心していた。
 その一瞬をついてキアランの腰が浮いた。そのままアレックスは剛直を打ち付けられる。
 
「あ゛っ……あっ?」

 突然の予期せぬ快感に目の前で星がちかちかと瞬き思考ができなくなる。腰の動きを止めていたら、ずんずんとその分攻められていく。

「お願いです……アレックスさんっ……どうか解いてくださいっ……これじゃあ、あなたを抱けないっ……」

 何かを堪えるような瞳で見つめられ、どうしようもなくなる。主導権とかよりもこのキアランの雄としての本能を全うさせてやりたい。
 アレックスは小刻みに腰を動かしながら、キアランの背中に手を回す。腰さえ満足に動かせない原因を取り除いた。

「これで、自由に……あっ──」

 油断していた。解放した途端アレックスは腰を掴まれ一気にペニスを最奥まで下ろされてしまった。再び頭が真っ白になる。

「可愛い姿を、見せてくれてありがとうございますっ……今度は私が頑張りますねっ……」

 張り切ったキアランに隅々まで貪られたアレックスであった。

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