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番外編 馬車にて1※
しおりを挟む馬車内の気温は少し窓が空いてカーテンを閉めておらず涼しく快適だ。舗装されていない道を走っているからか時折車輪が石を巻き上げ臀部に衝撃が伝わる。それは上等のソファに座っていても逃れられない。アレックスとキアランは御者に馬を引いてもらい王都へと帰宅する途中だった。
ソファに腰掛けている細く形の良い太ももに自信のそれをくっつける。それだけじゃなく、さりげなく手の甲をすりすりと擦り合わせた。
「……アレックスさん」
「ん、便所に行きたいのか?」
「あのですね……」
キアランの言わんとすることはわかっているがそれにアレックスはとぼけた。狙ってやっているのだから。
「違うならどうした?」
改めて聞いてはいるが、それはキアランの口から恥ずかしいことを言わせたいがためである。朝っぱらのフェラチオが中途半端に終わってから、ずっと二人とも性的接触を我慢してきたのだ。二人きりになった今が好機。
「ほら素直に言ってみてくださいよ」
「……っアレックスさんっ」
今度は咎めるような口調で名を呼ばれるが全然怖くはない。なぜなら触れ合う脚が熱く、こちらを見つめる視線に欲情が含まれていたからだ。アレックスは調子に乗ってしまう。
「言わないなら俺が言いましょうか?……したいです、朝の続き」
結局そう言って我慢できなくて誘ったのはアレックスの方だった。ふしくれだった指の先でキアランの余裕のある前をカリカリと引っ掻く。柔らかかったその部分がアレックスが触れることで一気に硬くなっていく。楽しいだけじゃなく、その屹立でアレックスの体の中を満たして欲しいと思った。触れているところから情欲が少しずつ広がっていくようだ。
「アレックスさん敬語……」
「ふっ、さっきから俺の名前しか言ってないな?」
言葉を崩すのは情交の合図。せめてもの抵抗か、キアランは窓周辺にかかっているカーテンを閉め周囲に見えないようにしている。換気のため窓は少し空いているので声を我慢しなければならないのはあるが。
「もし声が漏れそうになったら、あなたに口付けしてもいいですか?」
「もちろん……それよりこのままじゃシミになるんじゃないか?」
アレックスはそういうと躊躇いもなくキアランノ下履きを全て下ろした。
「あっアレックスさんのも……」
キアランがアレックスの下を裸にする。言葉は要らなかった。無言で隣りに座って横にある互いの陰茎を擦り始めていく。お互い上はきっちり着ているのに下は淫靡な動きを繰り返す。
「っ……っ……!」
「ん……………」
アレックスは竿を単純に上下にしごいていくのに対し、キアランに先端の方をしつこく手のひらで嬲られる。
「ここ、弱いの……可愛らしいですね」
「ん……男なら当たり前だろ?」
「そうですか?では……」
「あっ、はぁっ……」
鈴口を親指で塞がれながら、円を描くように先端を撫でられる。当然亀頭から下の刺激はない。それを繰り返されると徐々に不思議な感覚に襲われていく。
「……っやばい、これなんか漏らすっ……」
「精液でしたら遠慮せず出してくださってもいいんですよ……?」
「違うっ、それじゃないっ……あぐっ……」
大きな喘ぎ声が漏れそうになったら、キアランの唇がそれを塞ぐ。舌と舌を絡み合わせ、呼吸ができなくなるくらいに激しい動き。キアランの手はアレックスを追い込む。排尿感に襲われていた下腹部が出口を求めるように迫り上がってくる。
「汚しちゃまうっ……う」
「でしたらっ……」
抵抗しようとする間もなく、今までにない素早さでキアランが前に回ってきた。そして躊躇いなくアレックスのものを咥える。その生ぬるい感触を自覚した瞬間、弾けるアレックスのペニス。射精とはまた違った気持ちよさで足がガクガクと震える。だがなんとか踏ん張った。遠くの方から液体を嚥下する音が耳に入る。
「……馬車を汚すわけにはいきませんからね」
「くっそ……だからって飲むことはないだろ」
「?アレックスさんのものは全部美味しいですよ?捨てるなんて勿体無い」
「だからってしょんべんを……」
「味はなかったので潮ですね。上手に吹けましたね」
「……褒めるんじゃない……」
「このまま立てますか?」
慣れない潮吹きにぐったりしていると、キアランがアレックスを立たせようとしてくる。もうどうにでもなれとされるがままになっていると、向かい側のソファに手をつくよう指示された。
「こ、この格好恥ずかしいんだが……」
「ごめんなさい、アレックスさん。狭い馬車の中ですとこの大勢じゃないと深くまで入れられないので……」
擬似的な四つん這いは、キアランに対して尻を見せつけている風に見える。馬車の揺れがそのまま尻を揺らすように動いて、キアランを誘っているようで少し恥ずかしい。
「潤滑剤がありませんので失礼しますね」
「わ、」
キアランとセックスし始めてから何回か口でアナルを愛撫されることが増えたが、いまだにその感触は慣れない。不快感とは違うゾワゾワとした感覚がアレックスを襲う。
「くっ、う……は……」
キアランの舌は前立腺だけではなく体内を縦横無尽に這う。尻をさらに高く掲げさせられ、唾液を体内に送り込むように濡れた感触がする。舌だけではない、いつのまにか指も二本差し込まれていた。
「ん、キアラン……く」
「すぐですからね……すぐにこのペニスをアレックスさんの中に……」
二本の指がアレックスの入口を広げる。濡れて柔らかくなったそこは、ぐちゅうと音を立てて外気に触れた。
「限界です……きつかったら言ってくださいね」
「ああっ……早く」
早急に指を引き抜かれると、キアランがのしかかってくる。恋人の自重でペニスが引っ掛かり一つなく埋まっていった。
「ああっ……んーんー」
「ごめんなさいっ……」
咄嗟に口元を覆われる。申し訳なさそうにアレックスに謝るくせに、アレックスが乱れた声を出す原因を作った恋人は抽送をやめない。
キアランの美しく細い指を傷つけるわけにもいかないから、快感がくれば唇越しに甘噛みするしかなかった。
「ん、く……んー……」
アレックスの臀部とキアランの腰骨がぶつかり合う。それ以上に中を剛直で擦られる快感が強い。声を抑えていると余計に快感が体の中で暴れ回るようだ。
それだけではない。キアランの不埒な手はアレックスの両乳首を摘み回しながらつねる。スイッチを押すように遊び嬲られ、先走りがさらにこぼれる。それはポタポタと床に落ちた。
「あっあっあっ……あっ」
「アレックスさん、いつもよりきゅうきゅう締まってますね……」
喘ぐのがやめられないのに頭の片隅には誰かに見られてしまうのじゃないかと言う恐れ。その緊張が後孔の反応へと変わる。キアランは怖くないのか。御者に知られたらその雇用主であるフィンレー家の面々に知られるかもしれないと言う恐れが。むしろ後ろの剛直の動きを感じ取っているといつも以上に興奮している気がする。
興奮と恐怖そして快感。アレックスはそれらに支配されていた。
「ほら、風が強く吹いたらカーテンがめくれてしまいますね?」
「なっ、やめ……」
「大丈夫、カーテン同士は止めてありますからね」
窓側に背を向けるとキアランの言うことは真実だった。
大胆なキアランにペニスを引き抜かれると、馬車のソファに大股で腰掛けている。ペニスが抜け体内の空白に物足りなさを感じていると、提案された。
「ほらアレックスさん、この上に乗ってください。お尻からでいいので」
腰をふりふりと揺らしそれに合わせてキアランの陰茎も揺れる。誘われるままに腰を落とした。
「くっ……う」
重くないだろうかと中腰でキアランものを挿入していると、あろうことかキアランに両太ももを大きく割開かれそのままアレックスの体を落とされた。
「ぐあっ……」
「さあ、まだまだ終わりませんよ?」
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