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12話. 大切な人
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サイド. 奈良
少しばかり開く目を頼りに辺りを見渡す。
見慣れた光景だ。…医者の立場としては。…患者側、かぁ。
電話が途切れてから数分、なぜだか上手く息が吸えていない事に
気がついた。その時レイの声とともに救急車の聞きなれた声が
耳に飛び込んできた、というわけだ。大体は予想ができている。
そもそもあの状況でレイが来てくれなかったら、と考えると汗が出る。
まだ俺がどういう診断結果になったかもわからないからなぁ。
目も開かないし手も足も痺れてしまっている。だが脳だけは
こうして正常に動いてくれているため考えごとだけはできる。
…いや、いらねぇか?
「平気か、裕貴。」
いつの間にか入ってきていた聞きなれた声の主に驚く。
あぁ、平気だ!なんて大袈裟な元気で答えてやりたいが、
…固まってしまった口では動くはずもない。
「僕、優香の引き取りを看護師に言われたあの日、調子が良いのか悪いのか、
目に映る全てのものの余命が見えていたんだ。能力が出っぱなしだった。
不安と焦りしかなかった。見たくなかった。……お前だけは。」
…能力が出っぱなし…。
と、いうことは…俺の…余命。
「グイッて、少し強引にお前僕の顔上げただろ。あの時に。」
あぁ。あの時。
実は俺はレイの能力を知ってから1度も自分の余命を聞いた事はなかった。
レイ自体そもそも俺の余命を見た事があったのか、すら知らない。
…結局、優香の事もだけど、レイの事、全然知らなかったな。俺。
「僕ね、能力の意味を知ってから、裕貴の余命を見た事はなかったんだ。」
俺の質問に答えるかのように淡々と話していくレイ。
「いや、正確にはそれこそ見れなかった。
意識ができない、と言うよりしたくなかっただけだけど。
…だから、あの日初めて見るお前の余命に驚いた。
あまりにも急で。不安だった。また、大事な人を
無くしてしまうんじゃないか。失ってしまうんじゃないか。って。」
レイの『また』という言葉にある、とても大きな気持ちに気づくのが遅れた。
「……起きてんのかなぁ。裕貴。おーい。起きてるぅ?なんちって。」
っと言ってベッドに背中をつけて座るレイ。
いや一応ここ病室なんで椅子に座ってもらっても、
なんて馬鹿げた思考をしていた俺には、レイの言った小言に
気がつくはずもなかった。
━━━━━━━━━━━━━━━
「裕貴、…あと半月しか生きられないんだよ…。」
少しばかり開く目を頼りに辺りを見渡す。
見慣れた光景だ。…医者の立場としては。…患者側、かぁ。
電話が途切れてから数分、なぜだか上手く息が吸えていない事に
気がついた。その時レイの声とともに救急車の聞きなれた声が
耳に飛び込んできた、というわけだ。大体は予想ができている。
そもそもあの状況でレイが来てくれなかったら、と考えると汗が出る。
まだ俺がどういう診断結果になったかもわからないからなぁ。
目も開かないし手も足も痺れてしまっている。だが脳だけは
こうして正常に動いてくれているため考えごとだけはできる。
…いや、いらねぇか?
「平気か、裕貴。」
いつの間にか入ってきていた聞きなれた声の主に驚く。
あぁ、平気だ!なんて大袈裟な元気で答えてやりたいが、
…固まってしまった口では動くはずもない。
「僕、優香の引き取りを看護師に言われたあの日、調子が良いのか悪いのか、
目に映る全てのものの余命が見えていたんだ。能力が出っぱなしだった。
不安と焦りしかなかった。見たくなかった。……お前だけは。」
…能力が出っぱなし…。
と、いうことは…俺の…余命。
「グイッて、少し強引にお前僕の顔上げただろ。あの時に。」
あぁ。あの時。
実は俺はレイの能力を知ってから1度も自分の余命を聞いた事はなかった。
レイ自体そもそも俺の余命を見た事があったのか、すら知らない。
…結局、優香の事もだけど、レイの事、全然知らなかったな。俺。
「僕ね、能力の意味を知ってから、裕貴の余命を見た事はなかったんだ。」
俺の質問に答えるかのように淡々と話していくレイ。
「いや、正確にはそれこそ見れなかった。
意識ができない、と言うよりしたくなかっただけだけど。
…だから、あの日初めて見るお前の余命に驚いた。
あまりにも急で。不安だった。また、大事な人を
無くしてしまうんじゃないか。失ってしまうんじゃないか。って。」
レイの『また』という言葉にある、とても大きな気持ちに気づくのが遅れた。
「……起きてんのかなぁ。裕貴。おーい。起きてるぅ?なんちって。」
っと言ってベッドに背中をつけて座るレイ。
いや一応ここ病室なんで椅子に座ってもらっても、
なんて馬鹿げた思考をしていた俺には、レイの言った小言に
気がつくはずもなかった。
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「裕貴、…あと半月しか生きられないんだよ…。」
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