君がこの世にいる内は

そらた

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最終話. 『僕がこの世にいるうちは』

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サイド. 椎野


幼なじみと別れてからすぐ2人目の最終チェックへと診察室へ入る。
もう手術自体は終わっていたために血液検査だけで直ぐに
終えることが出来た。患者さんの少し血が滲んだ二の腕から
きつく閉めてあったゴム管をとる。笑顔で会釈をした途端

「せ、先生…!椎野先生!裕貴医師が…!」


━━━━━━━━━━━━━━━


ピーーーーーーーー、と、煩いくらいに鳴り響く警報音。
ここに勤務していて何度も何度も聞いているのに慣れるなんて事はない。
白いカーテンから透けて見える幼なじみの影はとても悲しく遠く感じた。

「残念ながら…脳死…です…。」

すい臓がんで、異例の状態、なんで俺は2週間以内って言ったんだ。
それじゃ間に合わない。ダメだった。裕貴も優香も助けられなかった。
何が幼なじみだ、何が彼女だ、何が医者だ。何が…大切な人だ…!

ぽん、と肩に手を置かれる。
振り向くと

「優香……?」

見知った彼女の顔が。

「レイ、貴方のおかげで私はとてもいい一生を生きれたわ。
とっても楽しかった。大学だってレイのおかげで友達が出来たのよ?
残念ながら、夢の看護師にはなれなかったけれど…。」

と言って困ったようにくすっ、と笑う優香。

「でも貴方のおかげで救われた人は私だけじゃない。
沢山いるでしょう?…も~、ほら、涙をふいて。」

僕の目頭から自然と流れてきていた熱い何かをそっと親指で拭いとる。

「患者さんもそう。貴方が天才医師と呼ばれるのだってその分
命を救ったって事でしょう。
…裕貴もね、私と同じくらい幸せだったと思うわ。
だから、貴方も前を向いて次の患者さんを救ってあげて?
私のように、最後まで笑顔で過ごせるように…。」

そこまで言い終わると消えた彼女。周りを見渡すと周りの医師達が
裕貴に向かって手を合わせ天へと祈りを捧げていた。


━━━━━━━━━━━━━━━


あれから数日、まだ整理なんてされていないけれどあの時の優香の
言葉で僕は変わった。いや、『変わった』と言えば速すぎるか。
サァァァ…と流れていく草木を眺めながら思う。

優香にはくさいかもしれないけどいつか言おうとしてた言葉、
「君がこの世にいるうちは一緒に2人で笑い続けよう」って。

…でも、裕貴も優香もいなくなってしまった。

すっ、と小さく息をすい、

「『僕がこの世にいるうちは』、空の上で元気に僕を見ていてください!」

と大きな声で叫んだ僕にそっと微笑み上へと
登っていく2人が見えた気がした。

ーーーーーー完ーーーーーー
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