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『想い神』について 1
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他の話があるかなんて突然聞かれても困るよ、昨日だって占い師をしてたときのことを話してすっかり疲れたってのに。
まあいいさ、君の知りたがりは毎度のことなんだし。え? まだ話のオチを聞いてないって? バレたか、しかたないな、じゃあちゃんと詳しく話すよ。
昨日話した『偽物の神』のことだね、あれは『僕』が珍しい鉱物や植物集めにハマっていたときのことだ。あるところに、他の村や集落が近寄りたがらない、不気味な一族が住む集落があった。周辺の住民に聞けば、呪われてるとか、悪いものに取り憑かれてるんだとか。そういう縁起の悪いような噂ばかりなんだよね。そして、僕はそこへ行ってみることにした。
はじめは本当にひどいもんだったよ。集落は高い木の、壁というか塀というか、そういうので囲まれててさ、表に門があるんだけど、そこへ「商人です、珍しい植物なんかはいかがですか」って、小窓から番兵さんに聞くんだけど、もう無視だよ、無視! 文字通りの門前払いってやつさ。
いやもう分かるでしょう? いつもの手法だよ、全部。「取引してくれるなら、持ってる中で一番珍しいものをタダ同然の値で分けてやる」って言ったのさ。『龍のウロコ』だよ。人間が喉から手が出るほど欲しがる、万能の素材さ。おかげで警戒はされつつも、集落に入ることはできた。
……それと『偽物の神』とに何の関係があるのかって? まあまあ、今に分かるよ。
それからその“不気味な集落”とその周辺の地域を回って商売をするようになってね。そう、情報収集の時間さ。
結論から言うと、その集落が忌まれていたのは、『片方の目がない』からだったんだ。いや、『無い』ってのは言いすぎか。『片目だけ見えない』っていう人間が多かったんだよ。もしくは、『片目だけ視力が極端に悪い』、そのせいか片目だけ何かの感染症を患いやすかったり……だから、大抵の住民が顔の片側に布を巻いていたり、そちらだけ髪を伸ばして隠していたりしたんだよ。その見た目を見て、“不気味だ”って周囲は言ってたみたいなんだよねえ。本当にそれだけの理由さ。
僕はその“片目”について話を聞きたくてね、何度か話題に出したんだけど、その度にあからさまに避けられた。一筋縄ではいかないことは分かってたさ。だから、大雨の日に出向いて、「ずぶ濡れだから着替えを貸してほしい」と言って、わざと襖を閉め忘れたまま服を脱いでおいたんだよ。
あー、殴りたい気持ちは分かるけど、ひとまずその鋭利なものは置いてくれない? 下品な話じゃないってば。知ってるでしょ? 僕は背にある“ウロコ”を見せたかったわけさ。それで僕の秘密を目撃してしまった下女が悲鳴を上げたから、屋敷はめでたく大騒ぎ! 僕は何にもしてないのにさ。だから、足を踏むのは止めてくれない? ふぅ、ありがとう、これで明日から地を這うことにならずに済んだね。いてっ
で、そこからは早かったよ。「実は永劫の時を生きる龍の化身なんだ」と言ったらすぐに調査に協力してくれるようになった。
そしてしばらくのあと、僕は神妙な面持ちで集落の長へ会いに行き、調査の結果として、ある『お告げ』を下した。
『あなたたちのその瞳の片割れは、かつて祖先が神への供物として捧げることを契約しているのだ。そしてその代わり、強大な力を授かっているのだ』、と。
住民たちはその『事実』に歓喜したよ。そりゃそうよね。そんでその力ってのはどうやったら使えるのか、その“神”とはどんなものなのかを聞いてくるわけ。
その神の名は……“想い神”。その神を強く信じ、貢物を捧げ、祀る──つまるところ、“想い”が強ければ強いほど、より強い力を授けてくれる神ってとこさ。
さっそく想い神へ捧げるための貢物と儀式が用意された。僕の助言を参考に、木を組んで大きな火を焚き、米や肉を用意して祭壇へ供えた。それを月に1回、あとは毎日祠に向かって祈るようになったんだ。
次に、その“想い神”ってのはどんな姿の神様かって聞いてきたよ。どうやら肖像を作りたいらしくって、それを祠や祭壇に飾って毎日拝めたらどんなに良いだろう、って考えたとのこと。僕は村の絵描きや石工と何度も相談するはめになってさ、本当、あのときは大変だったよ。
容姿、って、聞かなくても知ってるでしょう? 夕日に照らされた海より眩しい、金の髪と瞳の青年さ。でもそこらで金の髪ってのは珍しくてなかなかモノが完成しなくてね、元々お披露目する予定だった月1回の祭の日が、ついにやってきてしまったんだ。住民たちはさぞ残念がったよ。この頃は特に信仰が高まってたから、それはそれはもう、大袈裟なくらい。でもさ、無いもんは仕方ないからいつも通り火を焚いて、貢物を用意し、みんなが祈りを捧げ始めたら──────現れたんだよ! “想い神”が! 炎の赤に焼かれてもなお金色に輝く瞳でこちらを見下ろして……1人の青年を指さして、消えたんだ。その奇跡がよりいっそう信仰を強固にした。おかげで肖像もすぐに完成したよ。だって、元があるんだからね。
そして、ついに“力”を使うときもやってくるんだ。隣町の長の娘がね、不治の病にかかってたんだ。僕が何度も経過を診てたんだけどどんな薬も効かないものだから、どこかから“想い神”の話を聞きつけてね。なんとか治せないかって依頼が来て、僕は想い神が指した青年が最も力が強いんじゃないかって、その子を治療へ向かわせた。
治し方? そりゃもう、『祈り』に決まってるじゃないか。青年は毎日娘の家へ行って祈りを捧げる。娘さんはもう立つこともままならなくてね、外へは出られなかったんだ。
はじめは“不気味な一族”が、しかも町の長の屋敷へ出入りするのをよく思ってない人の方が多かったよ。家族のほうは必死だったけどさあ、周囲は「そんな力あるのか?」ってね。でも娘の体調は日ごとに良くなっていったから、だんだんと彼らを受け入れ始めた。彼ら一族は、片目を神へ捧げるという由来から、『供目の一族』と呼ばれるようになったよ。
さて、青年の“力”のおかげで、娘の“不治の病”は……なんと、完治したんだ! あとかたもなく。隣町の住民たちは、特に町長、あ、その娘の父親ね? もう本当に供目の一族に感謝していたよ。それもこれも“想い神”のおかげだと、次の月の祭には隣町やそこと関わりのある人もたくさんやって来たよ。みんなが“想い神”を讃え、信仰した。供目の集落はすっかり周辺地域から受け入れられて平和になったよ。以前の閉鎖的な雰囲気とは大違い! 頻繁に治療の力を使ってほしいという依頼も来るようになって、たくさんの“力”を持つ者たちが派遣されていき、多くの命を助けた。その名は広く轟いていき、めでたしめでたし、ってわけさ!
そんで、僕はその後“想い神”とお話してみようと試みたんだけどねえ……どうも、反りが合わなくて? 一向に取り合ってもらえなかったんだ。
だから結局、供目の一族の集落とはその後数年でお別れしたよ。病が治った娘とそれを治した青年は結婚することになってねえ、お祝いして、まあ神様のおかげで出会えたんだし、信仰を大切にするようにって伝えて、惜しまれながら去ったんだ……。
え? 解らない? 何が? ちがう、僕の口から説明してほしいだけでしょう? 仕方がない子だ、では、ほんとうに種明かしとするか。
まあいいさ、君の知りたがりは毎度のことなんだし。え? まだ話のオチを聞いてないって? バレたか、しかたないな、じゃあちゃんと詳しく話すよ。
昨日話した『偽物の神』のことだね、あれは『僕』が珍しい鉱物や植物集めにハマっていたときのことだ。あるところに、他の村や集落が近寄りたがらない、不気味な一族が住む集落があった。周辺の住民に聞けば、呪われてるとか、悪いものに取り憑かれてるんだとか。そういう縁起の悪いような噂ばかりなんだよね。そして、僕はそこへ行ってみることにした。
はじめは本当にひどいもんだったよ。集落は高い木の、壁というか塀というか、そういうので囲まれててさ、表に門があるんだけど、そこへ「商人です、珍しい植物なんかはいかがですか」って、小窓から番兵さんに聞くんだけど、もう無視だよ、無視! 文字通りの門前払いってやつさ。
いやもう分かるでしょう? いつもの手法だよ、全部。「取引してくれるなら、持ってる中で一番珍しいものをタダ同然の値で分けてやる」って言ったのさ。『龍のウロコ』だよ。人間が喉から手が出るほど欲しがる、万能の素材さ。おかげで警戒はされつつも、集落に入ることはできた。
……それと『偽物の神』とに何の関係があるのかって? まあまあ、今に分かるよ。
それからその“不気味な集落”とその周辺の地域を回って商売をするようになってね。そう、情報収集の時間さ。
結論から言うと、その集落が忌まれていたのは、『片方の目がない』からだったんだ。いや、『無い』ってのは言いすぎか。『片目だけ見えない』っていう人間が多かったんだよ。もしくは、『片目だけ視力が極端に悪い』、そのせいか片目だけ何かの感染症を患いやすかったり……だから、大抵の住民が顔の片側に布を巻いていたり、そちらだけ髪を伸ばして隠していたりしたんだよ。その見た目を見て、“不気味だ”って周囲は言ってたみたいなんだよねえ。本当にそれだけの理由さ。
僕はその“片目”について話を聞きたくてね、何度か話題に出したんだけど、その度にあからさまに避けられた。一筋縄ではいかないことは分かってたさ。だから、大雨の日に出向いて、「ずぶ濡れだから着替えを貸してほしい」と言って、わざと襖を閉め忘れたまま服を脱いでおいたんだよ。
あー、殴りたい気持ちは分かるけど、ひとまずその鋭利なものは置いてくれない? 下品な話じゃないってば。知ってるでしょ? 僕は背にある“ウロコ”を見せたかったわけさ。それで僕の秘密を目撃してしまった下女が悲鳴を上げたから、屋敷はめでたく大騒ぎ! 僕は何にもしてないのにさ。だから、足を踏むのは止めてくれない? ふぅ、ありがとう、これで明日から地を這うことにならずに済んだね。いてっ
で、そこからは早かったよ。「実は永劫の時を生きる龍の化身なんだ」と言ったらすぐに調査に協力してくれるようになった。
そしてしばらくのあと、僕は神妙な面持ちで集落の長へ会いに行き、調査の結果として、ある『お告げ』を下した。
『あなたたちのその瞳の片割れは、かつて祖先が神への供物として捧げることを契約しているのだ。そしてその代わり、強大な力を授かっているのだ』、と。
住民たちはその『事実』に歓喜したよ。そりゃそうよね。そんでその力ってのはどうやったら使えるのか、その“神”とはどんなものなのかを聞いてくるわけ。
その神の名は……“想い神”。その神を強く信じ、貢物を捧げ、祀る──つまるところ、“想い”が強ければ強いほど、より強い力を授けてくれる神ってとこさ。
さっそく想い神へ捧げるための貢物と儀式が用意された。僕の助言を参考に、木を組んで大きな火を焚き、米や肉を用意して祭壇へ供えた。それを月に1回、あとは毎日祠に向かって祈るようになったんだ。
次に、その“想い神”ってのはどんな姿の神様かって聞いてきたよ。どうやら肖像を作りたいらしくって、それを祠や祭壇に飾って毎日拝めたらどんなに良いだろう、って考えたとのこと。僕は村の絵描きや石工と何度も相談するはめになってさ、本当、あのときは大変だったよ。
容姿、って、聞かなくても知ってるでしょう? 夕日に照らされた海より眩しい、金の髪と瞳の青年さ。でもそこらで金の髪ってのは珍しくてなかなかモノが完成しなくてね、元々お披露目する予定だった月1回の祭の日が、ついにやってきてしまったんだ。住民たちはさぞ残念がったよ。この頃は特に信仰が高まってたから、それはそれはもう、大袈裟なくらい。でもさ、無いもんは仕方ないからいつも通り火を焚いて、貢物を用意し、みんなが祈りを捧げ始めたら──────現れたんだよ! “想い神”が! 炎の赤に焼かれてもなお金色に輝く瞳でこちらを見下ろして……1人の青年を指さして、消えたんだ。その奇跡がよりいっそう信仰を強固にした。おかげで肖像もすぐに完成したよ。だって、元があるんだからね。
そして、ついに“力”を使うときもやってくるんだ。隣町の長の娘がね、不治の病にかかってたんだ。僕が何度も経過を診てたんだけどどんな薬も効かないものだから、どこかから“想い神”の話を聞きつけてね。なんとか治せないかって依頼が来て、僕は想い神が指した青年が最も力が強いんじゃないかって、その子を治療へ向かわせた。
治し方? そりゃもう、『祈り』に決まってるじゃないか。青年は毎日娘の家へ行って祈りを捧げる。娘さんはもう立つこともままならなくてね、外へは出られなかったんだ。
はじめは“不気味な一族”が、しかも町の長の屋敷へ出入りするのをよく思ってない人の方が多かったよ。家族のほうは必死だったけどさあ、周囲は「そんな力あるのか?」ってね。でも娘の体調は日ごとに良くなっていったから、だんだんと彼らを受け入れ始めた。彼ら一族は、片目を神へ捧げるという由来から、『供目の一族』と呼ばれるようになったよ。
さて、青年の“力”のおかげで、娘の“不治の病”は……なんと、完治したんだ! あとかたもなく。隣町の住民たちは、特に町長、あ、その娘の父親ね? もう本当に供目の一族に感謝していたよ。それもこれも“想い神”のおかげだと、次の月の祭には隣町やそこと関わりのある人もたくさんやって来たよ。みんなが“想い神”を讃え、信仰した。供目の集落はすっかり周辺地域から受け入れられて平和になったよ。以前の閉鎖的な雰囲気とは大違い! 頻繁に治療の力を使ってほしいという依頼も来るようになって、たくさんの“力”を持つ者たちが派遣されていき、多くの命を助けた。その名は広く轟いていき、めでたしめでたし、ってわけさ!
そんで、僕はその後“想い神”とお話してみようと試みたんだけどねえ……どうも、反りが合わなくて? 一向に取り合ってもらえなかったんだ。
だから結局、供目の一族の集落とはその後数年でお別れしたよ。病が治った娘とそれを治した青年は結婚することになってねえ、お祝いして、まあ神様のおかげで出会えたんだし、信仰を大切にするようにって伝えて、惜しまれながら去ったんだ……。
え? 解らない? 何が? ちがう、僕の口から説明してほしいだけでしょう? 仕方がない子だ、では、ほんとうに種明かしとするか。
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