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『想い神』について 2
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僕はね、『人工的な信仰によって神という現象が作れるか』を試したかったんだ。聞いての通り結果は成功さ。
まず、供目の集落を選んだのは、”余裕のない人間たち”を探していたからさ。そういう人たちは騙しやすいからねえ。それに、そういう人たちは”力のある者”に縋ろうとしやすい。だから僕が「龍の化身だ」と鱗を見せたときにコロッと態度を変えたのさ。まあ僕はどちらかというと蛇なんだけどね。おっと、怒るなら僕じゃないさ、先に彼らを「不気味で不吉な一族だ」と思い込んでそこまで追い詰めた周囲の村々を責めることだね。
次に、彼らが『供目の一族』、つまり「神に目を捧げて力を得る契約をしている血筋」であるというのは僕のでっち上げさ。ただ遺伝的に片方どちらかの目に、なんらかの障害が起きやすい血筋だったってだけ。あとは周辺の環境なんかもあるけど────まあとにかく、神との契約なんてものはなかったのさ。
でも彼らは、僕に「調査の結果、そういう一族ではないかと判明した」という嘘を言われて、”想い神”という神がいると真剣に信じるようになり、自分たちの一族はその力を持っている、と思い込んだ。
そして、隣町の娘は『不治の病』なんかにはかかっていない。僕が「その兆候があるかもしれない」、「こういう症状は、その病の前触れかもしれない」って言い聞かせ続けて、ついでにほんのわずかな毒を少しずつ、少しずつ盛り続けていたから、「自分は不治の病にかかったんだ」と思い込んで体調を崩したのさ。
僕が毎日薬と偽って摂取させていた毒は軽い腹痛や頭痛を引き起こす程度の大したことのない微弱なもので、寝込むほどの効果はない。あと僕が診断した『不治の病』なんてそもそも存在しないしね。
続けてそのありもしない『不治の病』が治ったのは、青年の祈りのおかげでもない。彼が治療のために屋敷に通うようになってから、僕が「回復の兆しがあるから薬を変えよう」とか適当なことを言って、毒を飲ませる頻度や量を減らしたからさ。ほんと、ただそれだけ。それで青年は「自分には神から授かった力がある」と思い込み、娘は「青年の力のおかげで治らないはずの病気が治った」と思い込んだ。
さらにさらに”想い神”の見た目を金髪に金の瞳と言ったのは……成功率を上げるため。それはまあ、物知りな君ならよく知るところだろう。
────おや、大丈夫? いつもの頭痛か。気にしないで、少し待つよ。
お帰り。収まったかい? それなら最後に簡潔な真実を……。
1、僕は騙しやすい集団を探し、力のある者のフリをして信頼を勝ち取った。
2、集団に対し「神の力を得た血筋だ」と嘘をつき、それを完全に思い込ませた。
3、架空の神”想い神”を祀らせると、信仰の力でその神が現象として発生し、実際に姿を現し、偽の信仰は現実のものとなった。
4、さらに、治療の力があるような演出をして信仰をより強固に。その後”神”との対話を試みたが、失敗に終わり、集落を離れた。
そして幾百年もの年月を経て、その信仰は広がったり薄まったりしたんだろうが、そのうち特に”その力”が強い『夜久』という『君』が現れて、”想い神”は望むことならなんでも叶えた……んでまた僕の話を聞くどころか反抗したってわけ! それが昨日の物語の種明かしだよ。
結論ね、実験は成功したけど”想い神”とはお友だちになれなかった、ということだよ。ご満足いただけたかな? うん、うん、そういうことなら良かったよ。昼寝の時間を潰したかいがあったね。
────ん? ”想い神”の名付けの由来? そんな簡単な事、聞く? エミィ、君って本当に頭が硬いよね。
おもいこみだよ。じゃ、また次の話でね。
まず、供目の集落を選んだのは、”余裕のない人間たち”を探していたからさ。そういう人たちは騙しやすいからねえ。それに、そういう人たちは”力のある者”に縋ろうとしやすい。だから僕が「龍の化身だ」と鱗を見せたときにコロッと態度を変えたのさ。まあ僕はどちらかというと蛇なんだけどね。おっと、怒るなら僕じゃないさ、先に彼らを「不気味で不吉な一族だ」と思い込んでそこまで追い詰めた周囲の村々を責めることだね。
次に、彼らが『供目の一族』、つまり「神に目を捧げて力を得る契約をしている血筋」であるというのは僕のでっち上げさ。ただ遺伝的に片方どちらかの目に、なんらかの障害が起きやすい血筋だったってだけ。あとは周辺の環境なんかもあるけど────まあとにかく、神との契約なんてものはなかったのさ。
でも彼らは、僕に「調査の結果、そういう一族ではないかと判明した」という嘘を言われて、”想い神”という神がいると真剣に信じるようになり、自分たちの一族はその力を持っている、と思い込んだ。
そして、隣町の娘は『不治の病』なんかにはかかっていない。僕が「その兆候があるかもしれない」、「こういう症状は、その病の前触れかもしれない」って言い聞かせ続けて、ついでにほんのわずかな毒を少しずつ、少しずつ盛り続けていたから、「自分は不治の病にかかったんだ」と思い込んで体調を崩したのさ。
僕が毎日薬と偽って摂取させていた毒は軽い腹痛や頭痛を引き起こす程度の大したことのない微弱なもので、寝込むほどの効果はない。あと僕が診断した『不治の病』なんてそもそも存在しないしね。
続けてそのありもしない『不治の病』が治ったのは、青年の祈りのおかげでもない。彼が治療のために屋敷に通うようになってから、僕が「回復の兆しがあるから薬を変えよう」とか適当なことを言って、毒を飲ませる頻度や量を減らしたからさ。ほんと、ただそれだけ。それで青年は「自分には神から授かった力がある」と思い込み、娘は「青年の力のおかげで治らないはずの病気が治った」と思い込んだ。
さらにさらに”想い神”の見た目を金髪に金の瞳と言ったのは……成功率を上げるため。それはまあ、物知りな君ならよく知るところだろう。
────おや、大丈夫? いつもの頭痛か。気にしないで、少し待つよ。
お帰り。収まったかい? それなら最後に簡潔な真実を……。
1、僕は騙しやすい集団を探し、力のある者のフリをして信頼を勝ち取った。
2、集団に対し「神の力を得た血筋だ」と嘘をつき、それを完全に思い込ませた。
3、架空の神”想い神”を祀らせると、信仰の力でその神が現象として発生し、実際に姿を現し、偽の信仰は現実のものとなった。
4、さらに、治療の力があるような演出をして信仰をより強固に。その後”神”との対話を試みたが、失敗に終わり、集落を離れた。
そして幾百年もの年月を経て、その信仰は広がったり薄まったりしたんだろうが、そのうち特に”その力”が強い『夜久』という『君』が現れて、”想い神”は望むことならなんでも叶えた……んでまた僕の話を聞くどころか反抗したってわけ! それが昨日の物語の種明かしだよ。
結論ね、実験は成功したけど”想い神”とはお友だちになれなかった、ということだよ。ご満足いただけたかな? うん、うん、そういうことなら良かったよ。昼寝の時間を潰したかいがあったね。
────ん? ”想い神”の名付けの由来? そんな簡単な事、聞く? エミィ、君って本当に頭が硬いよね。
おもいこみだよ。じゃ、また次の話でね。
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