殉教者の皿の上

もじかきくらげ

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トマトと鶏肉のパスタとチーズのかかったサラダ

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最近の教会は、以前民衆に褒められたこともあって大きく雰囲気が変わっている。皆、歌の練習をする姿はとても楽しそうだ。怠けていた者も、どうやら感動した人間を見て数名はなんとなくやる気になったようだ。
今日は街でその見せ物を見たという男がやってきた。「グランツェロ」という。音楽隊に所属していた過去があり、ピアノは一通り弾けるのだとか。私たちの歌を見て協力したいと言い出した。なにやら資金的な援助と、よければ伴奏も担当するなどと言っている。高いレストランに誘えるくらいなのだから多分、金持ちなのだろう。身なりを見てもわかる。資金援助はとても助かると伝えた。そもそも、教会にいる者達は皆貧しい。というか、教会以外住む場所のない者達なのだ。私含め。だが、こいつはどうだ?聞けば金持ちの親のおかげでのびのび育ってきたみたいじゃないか。私達のことなど、ただ面白がっているだけに違いない。いや、そうとも完全には言いきれないが。なんにせよ、その話は嬉しい。けれど、ピアノはできるだけ私に任せて欲しい。私の居場所を取るな。全てが貴様の思い通りに行くと思うなよ。ピアノは譲れないと言うとグランツェロは少し残念そうな表情をしたが、今度は教会に見に行くと言い出した。それは良いが、お世辞にも綺麗とは言えない場所だ。それでも、大丈夫だから行くと言う。まあいいだろう。明日また街に迎えに行くことになる。今日は早めに寝よう。
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