殉教者の皿の上

もじかきくらげ

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カブのスープによく浸したバゲット

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毎晩ギャビーが傍で子守唄を歌ってくれる。おかげで病は治ったようだが、すぐに熱を出したり体が以前より上手く動かなかったりなど、後遺症のようなものが残ってしまった。ピアノはまだ弾ける。大丈夫だ。

今朝、教会に旅の占い師だという者が現れて、占いをさせてくれと言われた。ここで商売するのは少し迷惑だと伝えるが、何やら私について占いたいらしい。後から高額な代金を請求されるだろうから断ろうとしたが、占い師は話も聞かずに道具を机に広げだした。白い髪に中性的な顔つき、布の隙間から見えた緑色の瞳、この国では珍しい見た目だが、かなり遠くからやってきたのだろうか?占い師が何かの準備をしたあと、自分の服の中から何かを呼ぶ。すると、机の上へゆっくり蛇が滑り出してきた。手品のようなものだろうか…白い蛇は赤い目で私をじっと見てから、占い師の方を振り向く。占い師は蛇と二、三言会話すると占いの結果を教えてくれた。私は途中まで私が商売で苦労しているだとか肉体に闇を宿しているだとか言われて適当に相槌を打っていたが、一部気になる話があった。
ギャビーの歌には、普通ではない、特別な力があるという。人を幸せにも不幸せにもする、感情を動かす力との事だ。心当たりが無いでもない…しかも、その力は上手く使わないと身を滅ぼすだとかそういうことを言ってくる。「あなたなら上手く導いてやれる」との事だ。それと、「あなたを良く思っていない者がいるから利用されないように」とも。そんなことは承知の上で、私は今ここにいる。そう伝えると、「そうかい、じゃあ頑張るんだよ、僕の可愛い子供たち」と言ってなぜかハグされた。刺されでもするのかと思ったが、占い師はいつの間にか道具を片付けて去っていった。背中から、蛇が私を見ていた。一体何だったんだ?とりあえず、ギャビーについては頭の隅に置いておくことにする。
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