殉教者の皿の上

もじかきくらげ

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リンゴのジュースとハムのサンドイッチ

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しばらく演奏に出ていなかったが、病の後遺症も大分良くなり、少しずつ街に出るようになった。相変わらず聖歌隊のみんなと発表をするのは楽しい。奴はあまり気分が良さそうでは無いが。

ある日、教会へ手紙が届いた。別の宗教のかなり大きい教会からだ。首都の方にあるところだろう。中身はギャビーについての話だ。
あの最悪な貴族の事件は都市でも有名だ。元々あの貴族はかなり怪しかったらしく、この教会が衛兵に周辺の巡回を強めるよう言っていたおかげでギャビーの事件にも気付けたのだという。

そしてここからが本題なのだが、ギャビーから聞き取りをした教会の者が『ギャビーが神の加護を持っており、かなり危険な状態』と言っていると書かれている。例の占い師が言っていたのはこの事か?更に、回りくどい文句で書かれているが簡単に言うと『ギャビーを教会に引き渡せ』とも。こちらが世間的に少数派の宗教だからといって下に見られているような気がする。
この教会は金もあるし、行けばここよりはいい暮らしができるだろうが……同じ轍は踏みたくない。暮らしも、聖歌隊も、ギャビーの将来も、大事なものはたくさんあるが、何より、ギャビーは私の大事な弟分だ。
ギャビーにも手紙を見せたが、あまり行きたがらなかった。せっかく落ち着いてきた彼の暮らしを、またすぐに苦しくさせるのは私としても本意ではない。
ひとまずギャビーと、面倒だが奴とも相談し、『神の加護とは具体的になんなのか』『危険とはどういうことなのか』など、まずは状況を教えてほしい旨を書き記して、返信をした。
我々と対等に話し合いをしてくれるといいのだが…
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