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第二部 眼病の泉
第8話 東の大神殿②
しおりを挟むハートゥーンの情報網はすごかった。
町にいる商売人たちを使って、あっという間にシェンたちの情報を集めてくる。
ぼくは「金に糸目はつけない。いくらでも払う」と言ってあった。
「全く、そんなことを言うもんじゃないですよ、王子様! 商人相手に、ぼられますよ~♪」
上機嫌のハートゥーンに、セツが釘を刺す。
「じゃあ、私がお相手を仕ります。支払っただけの情報は出してもらいますよ!!」
「⋯⋯全く、美人に出て来られるとやりにくいなあ」
ぼやきながらも、出入りする者たちから集めた情報を、次々に披露していく。
「⋯⋯シェンバー王子は、2週間前にタブラに来られました。その後、しばらく滞在なさっていますね」
「やはり、タブラには来たんだ!?」
「ええ。王子と従者の方々と思われる姿を見た者がいます。最も、御姿は砂漠の民と同じような恰好だったと。私達のような」
白の長衣の袖を持ち上げて言う。
「それで! 今は? 今はまだタブラにいるの!?」
セツがハートゥーンの首元を、思いきり握りしめた。
「セ、セツ殿、く⋯⋯、く⋯るし!!」
「答えて! 商人なんだから、ちゃんと商品提供が大事でしょ!!」
赤くなったり青くなったりするハートゥーンから、サフィードが無理やりセツを引き離す。
商人がゴホゴホむせながら言った。
「いえ。⋯⋯今は、クァランの村のどこかにいるようです」
「砂漠に入ったってこと?」
「はい、複数の商人が証言しています。砂漠に入るには案内人と動物の確保が必要ですから。王子たちを含む隊商が目撃されています。ただ」
長期の旅の様子ではなかった。そう、商人は言った。
「遠くまでは行っていないと思いますよ。泉の湧く村はいくつかありますが、どこにいるのか⋯⋯。誰と一緒かは調査中です」
商人が地図を広げて、セツとサフィードに説明している。
途中から、皆の話し声がよく聞こえなかった。
目の奥が熱い。鼻がツンとする。
ぼくは、頬に熱いものが流れるのがわかった。手で口許を覆う。
「い、イルマ様⋯⋯? どうなさいました?」
「セツ。⋯⋯生きてるんだな」
シェンも、レイたちも。
無事でいる。
セツの顔も、すぐにくしゃくしゃになった。
サフィードがぼくたちに向かって、優しく言った。
「⋯⋯探しに行きましょう、王子たちを」
「お前の出番なんだよ、セリム!」
商人が、傍らの椅子に座っていた従兄弟をびしっと指さして言った。
セリムの顔色は変わらない。
「砂漠の民に声を掛けてほしい。王子たちが、旅の者として泉の村に寄っているのかどうか。お前なら、行方を辿れるだろう?」
セリムは答えない。
「⋯⋯王子たちの行方を探すのは大変だってこと?」
セツが、おずおずと聞く。
ハートゥーンは、眉を顰めた。
「広大な砂漠を当てもなく彷徨うのは、死にに行くようなもの。もし、攫った者たちによって部族の中に隠されているのなら、砂漠の民以外には探し出すことは出来ません。彼らには彼らの決め事がある」
砂漠の民の結束の強さは、聞いたことがあった。
スターディアの中にあっても、彼らは彼らの不文律を持って生きていると。
──セリムなら、探すことができる。
「セリム」
ぼくが声を掛けると、砂漠の民は視線を向けた。
「⋯⋯シェンバー王子たちを探してほしい」
「それは、命令か?」
「命令じゃない、願いだ」
ぼくは、セリムの前に跪いた。
「イルマ様!!」
セツとサフィードが揃って叫ぶ。
「何としても無事な姿を見たいんだ。どうか、力を貸してほしい」
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